ギリシャの伝統と革新併せ持つジャズ。名トランペッターによる『ペトリコール』──雨の匂い

Andreas Polyzogopoulos - Petrichor

アンドレス・ポリツォゴプロス、ペトロス・クランパニスそしてワジディ・リアヒ

ギリシャのトランペット奏者/作曲家アンドレアス・ポリツォゴプロス(Andreas Polyzogopoulos)が、同じくギリシャのベーシストのペトロス・クランパニス(Petros Klampanis)と、チュニジア出身で欧州で活躍するピアニストのワジディ・リアヒ(Wajdi Riahi)を迎えて録音した瞑想的な変則トリオ作『Petrichor』

タイトルの「ペトリコール」とは雨が降ったときに地面から上がってくる匂いを指す言葉で、ギリシャ語で“石のエッセンス”を意味する。多くの人がこの“雨の匂い”には特別な思いをお持ちかと思うが、多彩な表現方法で奏でられるトランペットの音色には、確かにそうした特別な感情を体現する魔法のようなものがある。アルバムの冒頭に収められた(1)「Petrichor」は彼らの真骨頂で、3人の瞬発的・創造的なアイディアが遺憾無く発揮された素晴らしい演奏。冒頭でアンドレス・ポリツォゴプロスはライヴ・エレクトロニクスも用い、表現を拡張している。

(1)「Petrichor」

アルバム全曲がアンドレス・ポリツォゴプロスの作曲。
(2)「The Coldest Summer」や(5)「Barbas」では西アフリカのヨルバ族の楽器であるシェケレのようなリズミカルが音が聴こえるが、これもトランペットで出されている音のようだ。シングルとしてリリースされた(6)「Kaiafas」はミュート・トランペットの音色が心の奥にまで沁み入る。

(6)「Kaiafas」

ベースとピアノのサポートもとにかく素晴らしい。
1981年生まれのペトロス・クランパニスについては数多くのジャズ作品に参加するスター・プレイヤーだけに説明は割愛するが、トリオ最若年の1995年生まれのピアニスト、ワジディ・リアヒの演奏にも大いに注目してもらいたい。彼は2022年の初リーダー作『Mhamdeya』でその飛び抜けた才能を露わにしたが、今作でもブルース、クラシック、さらにはアラブ音楽に影響を受けた多彩な引き出しを惜しみなく披露し今作を何段も上のクオリティに仕上げることに貢献している。

(3)「Kountouri」。2’10″からのワジディ・リアヒのソロも素晴らしい

Andreas Polyzogopoulos プロフィール

アンドレス・ポリツォゴプロスは1981年ギリシャ・ペロポネソス半島西部のサミコ(Samiko)生まれ。10歳でギターを弾き始め、16歳のときにアテネに移り、そこでロックやブルースのバンドで演奏した。彼はすぐにジャズに出会い、フィリッポス・ナカス音楽院でジャズギターを学んだ。
その後2000年にトランペットに転向。2002年の秋にアムステルダム音楽院で学ぶためにオランダに移り、様々なミュージシャンと共演し多くの経験を積む。2006年に自身のバンド「Poly Quartet」を結成。2008年にデビュー作『Perfumed Dreams』をリリースした。

アンドレス・ポリツォゴプロスは、彼自身5枚目の作品となる今作のタイトルに込めた想いについて、次のように語っている:

乾いた土に雨が降ったときに生まれる土の香り。子供の頃から大好きな香り。
夏が乾燥したギリシャで育った私にとって、秋の最初の雨は夏の終わりと新しい季節の始まりを示していました。 休暇が終わったことを受け入れなければならなかったので、ほろ苦い気持ちになりました。 しかし同時に、それはこれからの一年を通して達成すべき夢と目標に満ちた新たな始まりでもあるのです。

bandcamp.com

Andreas Polyzogopoulos – trumpet, electronics
Petros Klampanis – bass
Wajdi Riahi – piano

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