これは“フュージョン”の最新形態かも。フランスの5人組Monsieur MÂLÂ 凄まじいデビューアルバム

Monsieur MÂLÂ

フランスのバンド、Monsieur MÂLÂ 初のフルレンス・アルバム

フランスのバンド、ムッシュ・マラー(Monsieur MÂLÂ)は2021年から2022年にかけてリリースした2枚のEPと、奔放で熱いライヴでフランスのインディー・シーンで確実に存在感を高めてきた。この5人組の音楽にはファンク、ジャズ、ソウル、アフロビート、サンバ、ロック、さらにはもっとプリミティヴな民族音楽など様々な要素があるが、それらジャンルのどれにも当てはまらない強烈な個性を持つ。

彼らはこのバンドについて「経験的な設計と有機的な生産物を持ち、インストゥルメンタル・ミュージックによって物語を語ることのできる機械」だと考えているという。満を持してリリースされたセルフタイトルのデビューアルバム『Monsieur MÂLÂ』は、(1)「Storyteller」でそうした思想を高らかに宣言。彼らの世界観への強い導入となっている。(2)「al Fayhaa」は中東や東欧を感じさせるサックスやヴァイオリンによる捻れた旋律が北アフリカ的なリズムに乗り、さらには讃美歌を思わせるパートも介在する凄まじい楽曲構成は、混沌と調和の境界を曖昧にし、それらが同じ場所と時間で同時に存在し得ることを印象づけさせる。

(3)「Ai De Mim」にはカーボベルデ出身で現在はポルトガルを拠点に活動するシンガー、EU.CLIDESがゲスト参加。
先行シングルである(4)「Fly Fly」はアフロブラジル音楽からの啓示を受けており、とりわけブラジル音楽のレジェンドであるジルベルト・ジル(Gilberto Gil)への深いリスペクトが示されている。この少し奇妙な色彩感や高揚感は彼らの真骨頂だ。

先行配信シングル曲(4)「Fly Fly」

(5)「Little Ones」はどこか80年代前後のフュージョンバンド、ウェザー・リポート(Weather Report)を彷彿させる。ベース奏者スワエリ・ムバッペ(Swaeli Mbappé)の父親はザヴィヌル・シンジケート(The Zawinul Syndicate)に在籍し活動していたこともあり、やはりその影響は大きいのだろう。

(7)「All My Life」にはヴォーカリストのアンナ・コヴァ(Anna Kova)が参加。ロックやファンクをサウンドの軸としつつ、ヒップホップの表現を加える。

(7)「All My Life」

アルバムは全11曲。各楽曲の作曲者はすべてバンド(Monsieur MÂLÂ)名義となっている。
それぞれ異なる個性的なバックグラウンドを持つバンドメンバーが互いを尊重しつつ意見を出し合い、そうして練りに練って出した答えがこのサウンドという気もする。

ジャズを基盤とし、貪欲に“ワールド・ミュージック”に様々な角度からアプローチしている点では、いつしか音楽のジャンルとしては過去のものとなってしまった「フュージョン」が正統進化を辿った末の最新の形なのではないかとも感じた。

Monsieur MÂLÂ プロフィール

Monsieur MÂLÂは2018年の冬に結成された。メンバーそれぞれが多様なバックグラウンドを持っており、それぞれの個性のミックスがこのバンドを形作っている。

キーボードのニコラス・ヴェラ(Nicholas Vella)は、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)やジョージ・ベンソン(George Benson)などから影響を受けており、ビル・エヴァンス(Bill Evans)やキース・ジャレット(Keith Jarrett)のピアノを研究した。アレンジャーやプロデューサーとしても活躍しており、これまでにマイラ・アンドラーデ(Mayra Andrade)やパコ・セリー(Paco Sery)などと共演している。

カメルーンにルーツを持つベースのスワエリ・ムバッペ(Swaeli Mbappé)はアフリカ音楽をバックグラウンドに持ち、さらに父親エティエンヌ・ムバッペ(Etienne Mbappe)が在籍したザヴィヌル・シンジケート(The Zawinul Syndicate)といったフュージョンや、アース・ウィンド&ファイア(Earth Wind and Fire)などのファンクバンドからの影響も強い。

ドラムスのマシュー・エドワール(Mathieu Edwards)は西インド諸島の文化で育ち、ケンドリック・ラマー、ディアンジェロ、Jディラといったヒップホップの影響を強く受けている。

サックスのバルタザール・ナチュレル(Balthazar Naturel)はより伝統的なジャズのバックグラウンドを持ち、ジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson)、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)、ギヨーム・ナチュレル(Guillaume Naturel)などから影響を受けている。

ヴァイオリン/マンドリンのロビン・アントゥネス(Robin Antunes)はクラシック音楽家の家庭に育ったが、クラシックだけでなくピンク・フロイド(Pink Floyd)やシステム・オブ・ア・ダウン(System of a Down)などのプログレなど多彩なジャンルを好む。

Monsieur MÂLÂ :
Nicholas Vella – keyboards
Robin Antunes – violin, viola, mandolin
Swaeli Mbappé – bass, guitars
Balthazar Naturel – saxophone, flutes, English horn, bass clarinet
Mathieu Edwards – drums, percussion

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