浮遊感のあるダブサウンドが日常を優しく描き出す、マルチアーティスト・Daisuke Kazaokaの1stアルバム『サウンドスケープ』

待ちに待った。
5/29(水)に発表された、ダブをベースとしたマルチアーティスト・Daisuke Kazaokaの初のフルアルバム『サウンドスケープ』
心地よい歌声とともに、タイトルに相応しい音風景が広がる本作は、期待を裏切らない内容であった。

その名の通り、始まりを告げるインストナンバー(1)「はじまり」。鼓動のような音が早くなるとともに突入する(2)「ゆめ」は、肩の力の抜けたDaisuke Kazaokaの真骨頂とも言えるレゲエ/ダブサウンド。リバーブのかかった、まさに夢の中のようなサウンドで歌われるのは、同じく夢のような歌詞世界だ。

「屋台のママが笑ってうちわを振ってこちらへと招いていた」
「遠い国でずっと踊っていたい」
「黄金の仏はこの街の真ん中に寝そべって」

-「ゆめ」の歌詞より (※歌詞の内容は順不同)

恐らく東南アジアの国々と思われる歌詞が示すのは、今は失われた日本の原風景。
(1)の「はじまり」、そして(2)の「ゆめ」の7分弱で、聴き手はすでに遠い国にトリップさせられてしまう。

そして続く(3)「水色の午後」は本作の先行シングル。レゲエやダブというと夏のイメージが強い音楽ジャンルだが、本曲が描き出すのはまさに梅雨前の今。

「この街にも夏至は近い」
「湿った風/窓にふわり/好きだった/この匂い」
「遠い彼方の月曜日/今日はとても気分がいい」

-「水色の午後」の歌詞より (※歌詞の内容は順不同)

憂鬱になりがちな天気や季節を軽やかに肯定する歌詞と、跳ねたギターサウンドは多くの人に聴いてほしい新たなサマーアンセムだ。

タイトル通り、曲によって季節や時間、場所を超越し、それぞれの風景を描き出す本作。

(4)「おもいで」、先行シングルである(5)「島と口笛」が描くのは夏。
ただし、描かれるのは現代的な夏ではなく、記憶の中とも夢想ともとれる、今目の前にはないであろう夏だ。

そして(6)「遅いミラーボール」では一転して、冬のクラブのダンスホールが描かれる。

「寒さの中コートの襟を立てて/缶コーヒーで冷える手温めて/その分厚く重い扉の奥へ」

-「遅いミラーボール」の歌詞より

クラブに行ったことがある方は一度は経験したことがあるであろう、冬の外の寒さとフロアの熱気を素晴らしい歌詞表現と音風景で描き出している。
上記のラインの後、入り込むギターのリズム。これは推測なのだが、このタイミングでギターを加え、音に厚みを出すことで、クラブの中に足を踏み入れたことを表現しているのではないだろうか。
そんな余白まで考えさせてくれるミニマルな音世界もまた、他にはないDaisuke Kazaokaの音楽の素晴らしさなのであろう。

(7)「やさしい空」と、skitの(8)「回想」を挟み、本作の最後を締めるのは、4年前のシングル曲であり、daisuke kazaokaの代表曲でもある(9)「1日の終わり」。
この曲もレゲエやダブの持つ夏やポジティブなイメージとは対極に位置する、雨降る夜を描いた内省的な楽曲だ。

「嫌なことばかりではないけど」
「明日から俺はどこに向かう」

-「1日の終わり」の歌詞より (※歌詞の内容は順不同)

といった、誰にでもあるであろう様々な思考が入り交じる夜、本曲ではこう歌われる。

「星が神妙な俺を笑う」
「月が道は照らしてくれる」

-「1日の終わり」の歌詞より (※歌詞の内容は順不同)

一見すると非常に内省的な曲ではあるのだが、本曲は「そんなに考えなくてもいいんだ」と背中を押してくれる、そんな優しい曲なのだ。

「はじまり」から、「1日の終わり」まで、時間・場所・季節を超越して描き出すDaisuke Kazaokaの音世界。
そこに存在する、日常の中に横たわる幸せを見つめる優しい眼差し。

是非これから先、何かに迷い、疲れた時には、Daisuke Kazaokaの音世界「サウンドスケープ」に浸ってみて欲しい。
きっと何かが見つかるはずだ。

プロフィール

1994年、愛知県生まれ。アーティスト、コンポーザー。 弾き語りとLive Dubのパフォーマンスにて活動中。 作詞、作曲、編曲、トラックメイク、ギター・ベース等の楽器の演奏を自身で行う。 15歳頃から名古屋を中心に音楽活動を始め、高校卒業後ニューヨークの大学で音楽を学ぶ。 2017年にSHAKARAとGrand Ave Recordsを設立。 2018年に「Laid Back」、2020年に「一日の終わり」「ダンスフロア」を発表。 2021年には「星間飛行」、SHAKARAとのコラボ楽曲「Grand Avenue」、初のLive作品「Live 2021.05.08」を発表した他、 音楽プロデューサーのTAAR・ANIMAL HACKのMASAtOと音声SNS・Clubhouse上で日本で初めての共作楽曲、「Clubhouse (feat. CHICO CARLITO、青山みつ紀)」 にギタリストとして参加し、そのRemix作品「Cdubhouse(Daisuke Kazaoka reroom)」を発表。 また、ライムスター・宇多丸氏がパーソナリティを務めるTSBラジオ・アフター6ジャンクション「ダブってなんだ特集」に出演し、 ライムスターの楽曲「予定は未定で。」のダブバージョンを披露するなど、活躍の幅を広げている。
(Truecore Japan アーティストプロフィールより)

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