イスラエルのコメディ・パンクバンド、ラマ・アニ・ハイの笑撃
イスラエルのコメディ・パンク・バンド、ラマ・アニ・ハイ(ヘブライ語:למה אני חי?)が最高に面白い!バンドは日本のアニメやゲームから多大な影響を受けたコメディアンのコンビ、シュガー・ザザ(Sugar Zaza)と、過去に当サイトでも絶賛とともに紹介させていただいたバカテク系マルチ奏者ロン・ミニス(Ron Minis)の3人で構成され、ユニークな笑撃的パンクロックを展開する。2022年にリリースされたデビューアルバム『הלוואי הייתי מת』は突き抜けたお馬鹿さ加減が楽しく、全13曲18分間を台風のように駆け抜ける。
冒頭の(1)「אם יש SEEN אז למה ת׳לא עונה?」(既読つけるならすぐ返事しろ)はヘブライ語詞だが、アルバムのラストにはわざわざ日本語バージョンも収録されている。シュガー・ザザの片割れであるコメディアン/作曲家/ギタリストのオル・パズ(Or Paz)は日本文化への興味から日本語を4年間学んでおり、相当に高い日本語話力を持っているようだ。
とりあえず、これを見てもらおうか──。
(13)「既読つけるならすぐ返事しろ」は、ヘブライ語の原曲を日本語でリメイクしたものだが、日本語詞で歌うだけでなくわざわざオリジナルの動画をLINE+日本語で撮り直す労力のかけ具合は、彼らが本物である証拠なのだ。
アルバムタイトルは“死ねばよかったのに”の意味で、日常で起こる様々な出来事に鋭いツッコミを入れる(バンド名のラマ・アニ・ハイは“なぜ俺は生きている?”の意味)。
(2)「למה אני צריך לשים טיפ אם יש כבר דמי משלוח?」(配送料がすでに発生しているのに、なぜチップを支払う必要があるのですか?)、(3)「סופר מריו תקפוץ יותר גבוה!」(スーパーマリオはもっと高くジャンプ!)など、コメディーを軸にしながら作曲や演奏面でもレベルの高い曲が続く。
(5)「שיר פאנק בלחש」(ささやきパンク)は今作を代表するシングル。MVがめちゃくちゃ分かりやすいので、ぜひ観てほしい。
これまでの曲調から一転して素朴な民族音楽のエッセンスが香る(6)「למה לא עשיתי CTRL-S?」(なぜ俺はCTRL+Sをやらなかった?)は現代に生きる全人類共通の痛みを歌う。CTRL+Sをやらなかった後悔によって、世界の人類は皆、繋がっているのだ。
(9)「אבוקדו האם אתה בשל?」(アボカド、もう熟した?)という曲では、食べ頃のよく分からないアボカドと人類の果てしない戦いを描き出す。
(10)「תשלח לי PSD (שיחת טלפון)」はどうやらJPGではなくでPSDで送れ!という電話のやり取りのようだ。わかる、すごく良くわかる。これも万国共通なのね…。