現代感覚で“スウィング”を甦らせる Tape Five 新作
ドイツ出身の作曲家/音楽プロデューサー、マーティン・スタートハウゼン(Martin Strathausen)を中心とするプロジェクト、テイプ・ファイヴ(Tape Five) の2025年新譜『Fizzy Far Niente』。まさにエレクトロ・スウィングの王道を行く、100年の時を超えるレトロモダンなサウンドは今もなお、かっこいい。
アルバムタイトルはイタリア語の「Dolce Far Niente」(甘美な無為)を「Fizzy」(泡立つ)でアレンジした造語で、シャンパンの泡のように軽やかで楽しい彼らの音楽性を表している。未発表のオリジナルを中心としつつ、彼らの最大のヒット曲のリミックス(2)「Bad Boy Good Man (Rmx 2023)」や、アーヴィング・バーリン(Irving Berlin, 1888 – 1989)が1926年に書いた名曲(8)「Blue Skies」のカヴァーといったアクセントも効果的で、彼らの真骨頂である古典的なエレクトロ・スウィングだけでなく、アフロ・キューバン風の(6)「Feel More Love Tonight」など、意外とバラエティに富んだ楽曲も魅力的だ。
(6)「Get Set!」には長年のコラボレーターである英国の歌手イアン・マッケンジー(Iain Mackenzie)が再びゲスト参加している。
エレクトロ・スウィング・ブームの火付け役、Tape Five
テイプ・ファイヴ(Tape Five)は2003年に作曲家/音楽プロデューサーのマーティン・スタートハウゼン(Martin Strathausen)によってドイツで結成された。初期はスウィングジャズ、ボサノヴァ、ラテン音楽の要素が濃かったが、次第に“エレクトロスウィング”と呼ばれるジャンルを確立していき、そのジャンルを代表するグループに。バンド名は、言わずと知れた5拍子のジャズの名曲テイク・ファイヴ(Take Five)の捩りだ。
彼らの音楽性はまさにスウィング・ジャズ×現代のエレクトロニカ・ミュージック、つまり“エレクトロ・スウィング”で、その王道サウンドは右に出る者はいない。
基本四つ打ちのバスドラムに、スウィングするリズム、サックスやトランペットのオブリガートと呼ばれる合いの手(=対旋律、カウンターメロディ)を多用しレトロなジャズの痺れるようなかっこよさを現代感覚で発信している。