- 2022-11-20
- 2022-11-20
現代ジャズギター最高峰、ヨタム・シルバースタイン新譜は南米音楽への深い情熱が生んだ傑作
イスラエル出身のギタリスト/作曲家ヨタム・シルバースタイン(Yotam Silberstein)の新作『Universos』は、近年の彼の作品の傾向に漏れず南米音楽への愛が詰め込まれた楽しい作品だ。現代NYのシーンで最も注目されるジャズ・ギタリストとしての技巧はもちろん、伝統音楽への深い理解の表れた音楽性豊かな作曲家としての才能を存分に発揮している。
イスラエル出身のギタリスト/作曲家ヨタム・シルバースタイン(Yotam Silberstein)の新作『Universos』は、近年の彼の作品の傾向に漏れず南米音楽への愛が詰め込まれた楽しい作品だ。現代NYのシーンで最も注目されるジャズ・ギタリストとしての技巧はもちろん、伝統音楽への深い理解の表れた音楽性豊かな作曲家としての才能を存分に発揮している。
NYで活躍する韓国出身シンガーソングライター、ソン・イ・ジョン(Song Yi Jeon)と、ブラジル・サンパウロ出身のギタリスト/作曲家ヴィニシウス・ゴメス(Vinícius Gomes)の双頭名義の新作『Home』。ギター1本と声という最低限の編成ながら、二人の圧倒的な技巧と表現力で聴かせる素敵な作品だ。
ポーランドのピアニスト、レシェック・モジジェル(Leszek Możdżer)と、スウェーデンのベーシスト、ラーシュ・ダニエルソン(Lars Danielsson)、そしてイスラエルの打楽器奏者ゾハール・フレスコ(Zohar Fresco)。 長らく北欧ジャズのシーンを牽引してきたこの3人がオランダの室内楽集団ホラント・バロック(Holland Baroque)を迎え録音した稀有な室内楽×北欧ジャズのハイブリッド作品『Just Ignore It』。
1998年生まれのシンガーソングライター、ヒラ・ラビー(Hila Rabby)のデビュー作 『Visions』は空間的な拡がりをもったサイケデリック感、ジャズやロック、エレクトロニックの絶妙なミックス、そして彼女の自然で飾り気のないヴォーカルが魔法的な魅力を放つ作品だ。
イスラエル・ジャズ新世代を代表するハーモニカ奏者、ヨタム・ベン=オール(Yotam Ben-Or)の最新EP『Endless』は、ジャズでは地味な存在と思われがちなハーモニカという楽器の現代におけるもっとも優れた表現者が彼であることを強く印象付ける作品に仕上がっている。
アルゼンチンを代表するピアニスト、エルナン・ハシント(Hernán Jacinto)の実に7年ぶりとなるリーダー作『Hope』。彼の作品としては3枚目で、スピネッタやスナーキー・パピー、ルベン・ラダ、メルセデス・ソーサにエルメート・パスコアールといった国内外のレジェンドたちと共演を重ねる彼らしく、瑞々しい感性と音楽的発想力に溢れた素晴らしい作品となっている。
ブラジル出身のピアニスト、エンヒキ・アイゼンマン(Henrique Eisenmann)と、ブラジル系米国人の歌手リヴィア・ネストロフスキ(Lívia Nestrovski)のデュオによる2022年新作『Nação』は、ブラジル音楽をこよなく愛する二人が祖国を代表する音楽家たちの名曲を中心に表現力豊かに演奏した名作だ。
米国ニューヨークで活動するギタリスト/ベーシスト/作曲家タル・マシアハ(Tal Mashiach)が故郷イスラエルのハラシムの森の中にある小屋で録音したソロデビュー作『Tiyul』が素晴らしい。ガットギター(クラシックギター)のソロ、多重録音、弦楽や声楽を加えたアンサンブルなどうっとりするような気品のある演奏が続き、非常に高い音楽性を感じさせる絶品となっている。
イタリアのピアニスト、ステファニア・タリーニ(Stefania Tallini)と、ブラジルのハーモニカ奏者ガブリエル・グロッシ(Gabriel Grossi)のデュオ・アルバム『Brasita』。数曲で巨匠チェリスト、ジャキス・モレレンバウム(Jaques Morelenbaum)をゲストに迎え、クラシカル&ジャジーな極上の音を聴かせてくれる。
アルメニア系フランス人ピアニスト/作曲家アンドレ・マヌーキアン(André Manoukian)の新作『Anouch』は、これまででもっとも彼自身のルーツを強く意識した作品に仕上がっている。本作は20世紀初頭の“死の行進”を耐え、生き延びた祖母へと捧げられており、ジャズ、クラシック、フラメンコなどの表現手法も用い、アルメニア人の記憶に刻まれた魂の音楽を奏でる。
レバノンにルーツを持つフランスのトランペッター、イブラヒム・マアルーフ(Ibrahim Maalouf)の新譜『Capacity to Love』は、出自による差別や考え方の違いによる分断が顕在化する社会において、包容力や愛、アイデンティティを持つことの大切さと誇りを説くメッセージ性の強い作品となった。
クラシックの確かな基礎と、バルカン半島からアゼルバイジャンまでの地域特有のジャズを高い次元で融合させるボスニア・ヘルツェゴビナのピアニスト/作曲家、サーミル・フェイジッチ(Samir Fejzic)の7枚目のアルバムとなる 『Strast』(2020年)。彼が敬愛するムガーム・ジャズの巨匠ヴァギフ・ムスタファザデを思わせる(1)「Passion」から、芳醇なオリエンタル・ジャズの香りが漂う絶品だ。
イタリア出身のピアニスト、ジョヴァンニ・ミラバッシ(Giovanni Mirabassi)の新作『The Swan and the Storm』は彼としては珍しいサックスを迎え入れたカルテットでの作品となった。全曲がジョヴァンニ・ミラバッシの作曲で、彼に特徴的なエンリコ・ピエラヌンツィ直系の内面から溢れ出すようなイタリアン・リリシズムも健在。非常にクオリティの高い欧州ジャズのアルバムに仕上がっている。
1960年代になってアゼルバイジャンで正式にジャズが解禁されると、その後の10年間にわたってこの国の即興音楽は大きな発展を遂げた。その中心にいたのはピアニスト/作曲家のヴァギフ・ムスタファザデ(Vagif Mustafazadeh, 1940 - 1979)だが、もうひとり、ラフィク・ババーエフ(Rafiq Babayev, 1937 - 1994)も無視できない存在である。