- 2023-02-08
- 2023-02-08
南米の美しすぎる音楽遺産を歴訪。ヘナート・ブラスとギター四重奏による大傑作『Canela』
ブラジル・サンパウロの実力派ヴォーカリスト、ヘナート・ブラス(Renato Braz)と世界屈指のギター四重奏団として知られるクアルテート・マオガニ(Quarteto Maogani)が、南米の数々の名曲に挑んだ2015年作『Canela』は、南米のギターや歌を愛するすべての人におすすめしたい傑作だ。
ブラジル・サンパウロの実力派ヴォーカリスト、ヘナート・ブラス(Renato Braz)と世界屈指のギター四重奏団として知られるクアルテート・マオガニ(Quarteto Maogani)が、南米の数々の名曲に挑んだ2015年作『Canela』は、南米のギターや歌を愛するすべての人におすすめしたい傑作だ。
日常のなかの超現実を描いたジャケットが本作を象徴する。多国籍の音楽家が集い、オランダ・アムステルダムで結成されたクインテット、チャイ・マスターズ(Chai Masters)のデビューアルバム『Magic Realism』は、その名の通り“魔術的リアリズム”をテーマとした興味深い作品だ。
ここ半世紀のブラジル・ポピュラー音楽(MPB)のひとつのアイコンであるジルベルト・ジル(Gilberto Gil)の名曲に、彼の次の世代であり現在のMPBのシーンでは既に重鎮となった二人の音楽家、デリア・フィシェール(Delia Fischer)とヒカルド・バセラール(Ricardo Bacelar)が挑んだ作品が『Andar Com Gil』だ。これは単なる人気の音楽のカヴァーではなく、ブラジルの豊かな音楽文化への再訪とも言えるだろう。
イスラエル出身、現在はデンマークを拠点に活動するピアニスト/作曲家エヤル・ラヴェット(Eyal Lovett)の4thアルバム『Through the Rain』。感傷を運ぶ媒体としての音楽の役割を最高のレベルで体現した、アーティストの感性と表現力がリスナーの想像力を強く刺激する傑作だ。
ベースの名手として知られるトルコの音楽家キャミル・エルデム(Kamil Erdem)の新作『Interactions』は、楽器をベースからクラシックギターに持ち替え、ウードとパーカッションとのトリオで演じる、魅力に満ちたオリエンタル・ジャズ作品だ。
ブラジル・ミナスジェライスの若手音楽家たちの作品に頻繁にクレジットされる二人──ピアニスト/作曲家のルイーザ・ミトリ(Luísa Mitre)と、打楽器/ヴィブラフォン奏者のナタリア・ミトリ(Natália Mitre)姉妹が、デュオ“Duo Mitre”としての初のアルバム『Seiva』をリリースした。ジャズ、クラシック、そしてブラジルの伝統音楽の要素が瑞々しい感性でまとめ上げられており、二人の幼い頃からの精神的な強い絆も感じさせてくれる素晴らしい作品に仕上がっている。
ポーランドの若手ヴィブラフォン奏者、マルチン・パテル(Marcin Pater)が自身のトリオに加えピアニストのレシェック・モジジェルと、さらに数曲でギタリストのヤコブ・ミゼラッツキを再びゲストに迎えた2022年新譜『Between』。ヴィブラフォンの魅力である宝石のように美しい音色、蝶が舞うような速いパッセージ、長いサステインを利用した空間的な表現などジャズ・ヴィブラフォンの魅力も詰まった素晴らしい作品だ。
ピアニスト/作曲家のエフゲニー・アブラモフ(Evgeny Abramov)率いるモスクワのエスノ・ジャズ・カルテット、Sakhraのデビュー作 『Rise in Bedia』が素晴らしい。それぞれが高度な技巧をもつピアノトリオ+木管の4人のアンサンブルを中心に、民族楽器や電子楽器を塗したワールド・コンテンポラリーなジャズだ。
アルゼンチン出身のヴィオラ・ダ・ガンバ奏者/シンガーのルシアーナ・エリゾンド(Lucíana Elizondo)がイタリアの教会で録音した『Cantos De Amor Y De Ausencia』。カンターレ・オール・ヴィオラ=“ヴィオラで歌う”というルネサンス時代の忘れられた伝統を蘇らせた現代最高峰のヴィオラ・ダ・ガンバ奏者と評される彼女の音楽の魅力が凝縮された、美しい作品に仕上がっている。
時は80年代後半。アフリカン・ファーストを掲げるムーブメント「アフロセントリック」はファッションの分野を皮切りに、それらと密接に関わるHipHopにもまた大きな影響を与えていた。ネイティブ・タンの代表的な存在でもあり、ハウスを取り入れた音楽性にとかく注目が集まりがちなジャングル・ブラザーズ(Jungle Brothers)であるが、彼らもまたアフロ主義をメッセージに込めた「アフロセントリック」なアーティストであることを忘れてはならない。
コロンビア出身のピアニスト/作曲家ヘスス・モリーナ(Jesús Molina)が2022年に新たに送り出した作品が、韓国出身のチェリストHAEINSANEとの極上のデュオ作品『Cello Stories』だ。今作はサウンド面の派手さは一切なく、ピアノとチェロのアコースティックなデュオとなっており、シンセサイザーも駆使しながら超絶技巧的表現を次々と繰り出すヘスス・モリーナのイメージからすると意外性に満ちた内容となっている。
スナーキー・パピーの中心人物である二人、ベーシストのマイケル・リーグ(Michael League)と鍵盤奏者のビル・ローレンス(Bill Laurance)のデュオ作がドイツの名門レーベルACTからリリースされた。北アフリカやトルコなどの地中海沿岸地域の音楽への傾倒を強めるマイケル・リーグらしく、今作はウードやフレットレス・ギターを用いるなどスナーキー・パピーとはまた異なるアプローチが全面的に押し出された魅力的な作品となっており、『Where You Wish You Were』というタイトルからも遠い異国の地や文化、まだ聴いたことのない音楽に対する彼らの強い好奇心が窺える内容となっている。
北アフリカのチュニジアに生まれ、アラブ世界の伝統音楽と西洋音楽、特にジャズとの融合に挑戦し続けるウード奏者/ヴォーカリストのダファー・ヨーゼフ(Dhafer Youssef)の新譜『Street of Minarets』がリリースされた。まさしく唯一無二のスタイルを武器に、まだ誰も歩んでいない音楽の道を進み続けてきた彼が辿り着いた最高峰だと断言できる素晴らしい作品で、ぜひ多くの人にこの驚異的な音楽を体験してほしいと思う。
キューバのピアニストのオマール・ソーサ(Omar Sosa)と、ブラジルのシンガーソングライター/ギタリストのチガナ・サンタナ(Tiganá Santana)のデュオ・アルバム『Iroko』は、世界的にも稀に見る才能を持つ二人の音楽家による深淵な語らいが垣間見える傑出した作品だ。