エジプト・カイロ発のアヴァンギャルド・ジャズ
エジプトの作曲家/ピアニスト/ギタリストのモーリス・ルカ(Maurice Louca)の2019年作『Elephantine』。
エレクトロ・アコースティック・シャアビと高く評された前作『Benhayyi Al – Baghbaghan (Salute the Parrot)』(2014年)とは変わり、今作では大編成バンドでの生演奏のみの路線へ。だが音のクレイジーさは相変わらずで、アコースティック楽器が主体となった分、むしろより一層の本質的な狂気を感じる内容になっている。
(1)「The Leper」がいきなりの圧巻だ。そよ風が吹くアンビエントなイントロから徐々に楽器が折り重なっていき、クライマックスではフリージャズの熱風が吹き荒れる。灼けつくような熱風はそのエネルギーの中に全てを飲み込み、最後にはまた静寂が訪れる。
陶酔的なフリージャズの(3)「One More for the Gutter」、ぐっとアラビックに寄った魅惑の旋律の(4)「The Palm of a Ghost」など、一筋縄ではいかない魅力が詰まっている。
アルバムにはイタリア、イラク、デンマークなどから集まった12人のミュージシャンが参加。エジプトの大衆音楽であるシャアビ(Shaabi, شعبي)とジャズの野心的な大冒険。
Maurice Louca – guitar, piano
Tommaso Cappellato – drums, percussions
Ozun Usta – drums, percussions
Elsa Bergman – bass
Pasquale Mirra – vibraphone
Piero Bittolo – baritone sax, alto sax, bass flute
Anna Högberg – alto sax
Rasmus Kjærgård Lund – tuba
Isak Hedtjärn – clarinet, bass clarinet
Nadah El Shazly – vocals
Natik Awayez – oud
Ayman Asfour – violin