アゼルバイジャンの巨匠サックス奏者による静謐なジャズ
アゼルバイジャンを代表するジャズミュージシャン、レイン・スルタノフ(Rain Sultanov, ss)、イスファール・サラブスキ(Isfar Sarabski, p)とスウェーデンのベーシスト、ニルス・オルメダル(Nils Olmedal)のトリオによる新譜『Influence』は、北欧的な静けさと美しさを内々に讃えた極めて抒情的なジャズ作品だ。
全7曲中、ドイツのギタリスト、ダゴベルト・ベーム(Dagobert Bohm)がゲスト参加した(6)「Morning Flight」を除き全てがレイン・スルタノフによる作曲で、ジョン・コルトレーン、マイルス・デイヴィス、ジョー・ザヴィヌル、ジャコ・パストリアスといったこれまでに彼が大きな影響を受けてきた先人たちに捧げられている。本作はECMの数々の作品を生んできたノルウェー・オスロにあるレインボースタジオで録音されており、ソプラノサックスの響きも素晴らしく豊か。これまでの作品でも自然を愛し、壮大な風景を音に描いてきた巨匠レイン・スルタノフによる感動的な音世界が広がる。
ピアノのイスファール・サラブスキは近年驚くべき層の厚さをみせるアゼルバイジャンの若手ピアニストの中でも筆頭格。本作では同国のジャズ特有のムガームの響きは封印されているが、繊細なタッチで弾かれるピアノの音も瑞々しい。
アゼルバイジャン〜北欧をつなぐ音
ソプラノサックスのレイン・スルタノフ(Rain Sultanov)は現代のアゼルバイジャン・ジャズを牽引する第一人者。
1965年に首都バクーで生まれ、クラリネットを専門的に学び、20歳で同国のコンテストに入賞している。
ウェイン・ショーターやジョー・ザヴィヌルのバンド、ウェザー・レポート(Wheather Report)やマイルス・デイヴィスなどに大きく影響され、ジャズサックスを習得。4年間は軍隊に所属しながら軍のオーケストラで演奏を行い、その後はアゼルバイジャン歌劇団のソリストとして活躍。
今や世界的な名声を誇るバクー・ジャズフェスティバルを2005年から主宰しており、同国のジャズの発展に多大な貢献をしてきた重鎮だ。
ピアノのイスファール・サラブスキ(Isfar Sarabski)は1989年バクー生まれ。19歳の時にモントルー・ジャズ・フェスティバルでのピアノソロ部門を受賞以来、国際的に注目されている。
ベースのニルス・オルメダル(Nils Ölmedal)は1977年、スウェーデン生まれ。スウェーデンのジャズバンド、The Stoner のメンバーとしても活躍している。
Rain Sultanov Trio :
Rain Sultanov – soprano saxophone
Isfar Sarabski – piano
Nils Ölmedal – bass
Special Guest :
Dagobert Bohm – guitar (6)