アンドレ・メマーリの鳥のように自由なピアノに乗せ、マファルダ・ミノッシがナポリを歌う

Mafalda Minnozzi & André Mehmari - A NAPOLI

アンドレ・メマーリ&マファルダ・ミノッシ、ピアノと歌のデュオ

かねてよりアンドレ・メマーリ(André Mehmari)の歌伴は世界最高だと信じているのだが、この新譜でその確信もより深まった。アンドレはこれまでに様々な歌手と共演を重ねてきたが、今回のお相手はイタリア出身ながらブラジル音楽への造詣が深い歌手のマファルダ・ミノッシ(Mafalda Minnozzi)『A NAPOLI: porto dell’anima』と題された今作はそんなアンドレ・メマーリとマファルダ・ミノッシによる親密で深遠なデュオ作品である。

このアルバムはイタリア・ナポリ出身の音楽家、ティート・マンリオ(Tito Manlio, 本名:Domenico Titomaglio, 1901 – 1972)の歌曲集となっている。
彼の代表作でありイタリアン・オペラのクラシックとなっている(1)「Anema e Core」から始まる全8曲はマファルダ・ミノッシの深く美しい声と、アンドレ・メマーリの鳥のように自由なピアノで地中海の香りが立つよう。いつものことながらアンドレのピアノはどこからそんな独創的で美しいフレーズが湧いてくるのかと思うほどだし、それでいて自身が特別目立つわけでもなく、あくまでも歌を最大限に引き立てるセンスは驚異的だ。彼のピアノを聴いていると、優れたピアニストはヴォーカリストの魅力を普段の何十倍にも引き上げるのだということがはっきりと分かる。

時に過剰とも思えるほどにロマンティックで優雅ながら、それを取るに足らないことのようにさらっと聴かせる歌とピアノ。メマーリの流麗なピアノは厳粛になったかと思うと不意にユーモアも見せ、どの音も聴き逃すことができない。この二人の音楽にはどの瞬間にも驚きがあり、心を揺さぶられる。

ギタリストのポール・リッチ(Paul Ricci)も加えた(1)「Anema e Core」のリモートセッション動画。

マファルダ・ミノッシは今作への想いを次のような言葉で語っている。

ナポリを歌うということは、真の情熱に突き動かされ、何世紀にもわたって足跡を残してきたヒロインやヒーローたちの多くの人生の謎を明らかにすることを意味します。
ナポリを歌うということは、海まで続く路地を歩いてきた人々や民族の歴史に入り込むことを意味します。プルチネッラにウィンクするのも、美しいソフィアと踊るのも、マルゲリータ女王に敬意を表するのも、無名の作曲家ドニゼッティです。
ナポリを歌うということは、愛を謳歌し、その尊い美しさに頭を下げることなのです。

mafaldaminnozzi.com

プロフィール

アンドレ・メマーリ(André Mehmari)は1977年、リオデジャネイロ州の都市ニテロイにレバノン系の家系に生まれた。ピアニストや作編曲家としてジャズ、クラシック、ポップスなどジャンルの垣根を越え高い評価を得ているが、自身の作品ではピアノ以外の楽器を演奏することも多く、ギター、ヴァイオリン、コントラバス、フルート、トランペット、ホルン、パーカッションなど多彩な楽器を自在に演奏する。
その音楽の才能は早くから示され、10歳でジャズを学び作曲も開始。同国を代表するピアニストとして知られるようになるまでそう長くはかからなかった。ブラジル国内の多くのミュージシャンと共演をしてきたが、今作のように国外のアーティストとの共演も度々あり、イタリアではジャズクラリネット奏者のガブリエーレ・ミラバッシ(Gabriele Mirabassi)とのデュオ『Miramari』が知られている。

歌手のマファルダ・ミノッシ(Mafalda Minnozzi)は1967年イタリアのパヴィーア生まれ。キャリア初期ではエディット・ピアフ、エラ・フィッツジェラルド、ビリー・ホリデイ、カテリーナ・ヴァレンテといった歌姫たちを研究。その後イタリアの有名なタレントフェスティバルで優勝し歌手として大成した。
母国イタリアのみならず、フランス、ブラジル、アメリカなど世界中の歌を多言語で歌ってきている。特にブラジルとの関係は深く、これまでにミルトン・ナシメント、ギンガ、ナ・オゼッティ、トッキーニョといったブラジルのアーティストと共演。ブラジル国内でも長いキャリアを築いている。

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