豪を代表する歌手ジョー・ローリー 新譜はリンダ・オー、アリソン・ミラーとの創造性溢れるトリオ作

Jo Lawry - Acrobats

ジョー・ローリー、ドラムスとベースとの意欲作『Acrobats』

オーストラリア出身でNYで活動するシンガー、ジョー・ローリー(Jo Lawry)が、ベースにリンダ・メイ・ハン・オー(Linda May Han Oh)、ドラムスにアリソン・ミラー(Allison Miller)を迎えて制作した新作『Acrobats』。声とベースとドラムスという珍しい編成が3人の創造性を極限まで引き出した、素晴らしいジャズ・ヴォーカル・アルバムとなっている。

ピアノやギターといった和音楽器を伴わない編成で、ジョー・ローリーは“自分にできる最も難しいこと”にチャレンジしようとしたのだという。彼女は自分の声を管楽器のように機能させようとし、コード楽器のサポートを受けずに声とベースとリズム楽器によるトリオ編成での最高の音楽表現を追求した。

その結果は、聴いてのとおり素晴らしい仕上がりだ。
即興のスキャットも交え中高音域を舞う可憐なジョー・ローリーのヴォーカルはいつになく自由だし、低音を支えつつわずか4本の弦で最大限の注意を払いつつ大胆に中音域で和音表現を試みるリンダ・オーのベースもおそるべき創造力を発揮。アリソン・ミラーのドラミングは抑制的で、二人のソリストをしっかりと支えている。

収録曲の多くはスタンダードだが、この珍しいトリオ編成と3人の驚くべきアンサンブル力によって、どの曲の演奏もとても新鮮に映る。
さらにコール・ポーター作曲の(5)「You’re the Top」はヴォーカルとドラムスのデュオ、アル・ホフマンとディック・マニングによる(7)「Takes Two to Tango」はヴォーカルとベースのデュオになっている。後者の曲名“タンゴを踊るには二人が必要だ”はのちに慣用句として“二人に責任がある”“どっちもどっち”といった意味で用いられるようになり、ここでの持ちつ持たれつの声とベースの掛け合いもなんとも楽しい。

(1)「Traveling Light」

Jo Lawry 略歴

南オーストラリア州のアーモンド農場で育ったジョー・ローリーは、同州のアデレード大学と米国ボストンのニューイングランド音楽院でジャズを学んだ。2004年にセロニアス・モンク・インターナショナル・ジャズ・コンペティションで準決勝に進み、翌年にはオーストラリアのナショナル・ジャズ・アワードで2位を受賞。2008年のデビュー作『I Want to Be Happy』は絶賛され、ダウンビート・マガジンから「2000年代のベストCD」と評された。

2009年にスティング(Sting)のツアーのバックアップ・シンガーとしてオーディションに合格、2015年まで一緒にツアーを行った。

夫はロンドン出身のジャズ・サックス奏者、ウィル・ヴィンソン(Will Vinson)。

(3)「Taking a Chance on Love」

Jo Lawry – vocal
Linda May Han Oh – double bass
Allison Miller – drums

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