UKジャズ孤高の音楽家アルファ・ミスト、HipHop経由のひとつの到達点を示す新譜『Variables』

Alfa Mist - Variables

ライヴバンドとしての生々しさを増したアルファ・ミスト新作

UK現行ジャズを代表する作曲家/鍵盤奏者/MC/プロデューサーのアルファ・ミスト(Alfa Mist)の5枚目のアルバム『Variables』。トランペット、ローズピアノ、ギター、細かく刻むドラムスなどを軸にグルーヴを作る。その根底には地下水のようにヒップホップのビートメイキングが流れているが、無機質なループはなく、自由な即興演奏を重視しライヴバンドとしての生々しいフィーリングが終始一貫している。

カヤ・トーマス・ダイク(Kaya Thomas-Dyke)をフィーチュアした(3)「Aged Eyes」

彼の音楽はヒップホップやR&Bの強い影響下にあった初期の作品と比べ、明らかにジャズの比重が増している。
アルバムのグルーヴを支えるのはドラムスのジャス・ケイザー(Jas Kayser)とベースのカヤ・トーマス・ダイク(Kaya Thomas-Dyke)という女性奏者二人。その上でトランペットのジョン・ウッドハム(John Woodham)やギターのジェイミー・リーミング(Jamie Leeming)、サックスのサム・ラプリー(Samuel Rapley)そしてアルファ・ミスト自身が自由な即興で表現してゆく。(1)「Foreword」はそんなアルファ・ミストの進化を象徴するような楽曲で、ローファイ感のあるサウンドで疾走するジャズが最高にかっこいい。

アルファ・ミスト自身のMCを聴くことができる(2)「Borderline」では、英国の黒人の若者が直面している不公平な偏見、抑圧的な制限、容赦ない苦難(常に肌の色で判断され、それらから逃れるためには3つの選択肢しかない──音楽、スポーツ、あるいは犯罪)を簡潔なラップで非難している。

(7)「Apho」では南アフリカ出身のボンゲジウエ・マバンドラ(Bongeziwe Mabandla)をフィーチュア。吸着音も特徴的なコサ語による彼のソウルフルなファルセット・ヴォイスは控えめなストリングスとも相まってとても魅力的・感傷的に響く。

(7)「Apho」

Alfa Mist 略歴

アルファ・ミストは1991年イーストロンドン生まれ。サッカー選手になるという幼い頃の野望が破れたあと、Hi-tek、Madlib、J Dillaなどのヒップホップ音楽に憧れ、サンプリングや彼らのルーツ辿ってジャズに行きつき、自分もその世界に身を置くと決めたという。ラップもピアノも独学、音楽はストリートで学んだ。2015年に最初のEP『Nocturne』をリリースし、その後2017年に初のフルレンス・アルバム『Antiphon』をリリース。

ヒップホップ、ソウル、ジャズ、R&Bなど、多様な音楽ジャンルに影響を受けた洗練されたサウンドで知られており、楽曲には社会問題、メンタルヘルス、人間関係など、深いテーマが含まれている。

これまでにジョーダン・ラカイ(Jordan Rakei)やトム・ミッシュ(Tom Misch)らとも共演。

Jamie Leeming – guitar
Kaya Thomas-Dyke – bass
Jasmine Kayser – drums
Alfa Sekitoleko – piano, keyboards
John Woodham – trumpet
Samuel Rapley – tenor saxophone, bass clarinet

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