モニカ・サウマーゾ、テコ・カルドーソ、ダヴィ・フォンセカが受け継ぐ創作楽器集団ウアクチの遺産

Utupê Oficina Sonora Recebe Mônica Salmaso, Teco Cardoso e Davi Fonseca - BH /MG 2026 - EP

ミナスジェライスの遺産、Uaktiの創作楽器を現代音楽で再解釈

ブラジル音楽には、しばしば「ジャンル」という言葉だけでは捉えきれない作品が現れる。
2026年5月にリリースされた『Utupê Oficina Sonora Recebe Mônica Salmaso, Teco Cardoso e Davi Fonseca』も、まさにそのような一作だ。同国を代表する歌手モニカ・サウマーゾ(Mônica Salmaso)がヴォーカルと芸術監督を務め、彼女の長年のコラボレーターとしても知られるベテランのフルート奏者テコ・カルドーソ(Teco Cardoso)が参加し、そして2019年にあまりに完成度の高いデビュー作『Piramba』で世界を驚かせたダヴィ・フォンセカ(Davi Fonseca)がプロデュースするこの作品は、ミナス・ジェライスの近年の音楽文化の中でもとりわけ重要なひとつの源流を辿り、枯れゆこうとするその“遺産”に再び優しく光を浴びせる。

ミナス・ジェライスにはかつて、ウアクチ(Uakti)という音楽集団がいた。マルコ・アントニオ・ギマランイス(Marco Antônio Guimarães, 1948 – )という男に率いられたこのグループに、現在では必ずと言っていいほど“伝説的な”という形容動詞が与えられている理由は、彼らが用いた創作楽器にある。彼らは誰も見たことのないような楽器(すべてマルコ・アントニオ・ギマランイスが作ったもの)で、オリジナル曲のほかフィリップ・グラスやビートルズなどを演奏し、ミルトン・ナシメントやマンハッタン・トランスファーのアルバムにも参加した。シンセベースのような音を鳴らす何本ものパイプ。“塔”と呼ばれる幻想的かつヒステリックなハンドルで回転する擦弦楽器。美しいガラスのマリンバ。彼らの音楽は、先住民族トゥカノ族に伝わる伝説に由来するミステリアスで魅力的なグループ名とともに南米の風に乗って世界に吹いた。


ダヴィ・フォンセカやモニカ・サウマーゾらが今作のテーマとするのは、2015年にグループを解散したウアクチの音楽を彩った創作楽器の保存と発展だ。このプロジェクトの母体であるウトゥペ・オフィシナ・ソノラ(Utupê Oficina Sonora)は、マルコ・アントニオ・ギマランイスの創作楽器群を保存・活用するために設立された非営利の組織で、今作はそのアーティスト・イン・レジデンス1の成果である。作品にはフェリペ・ジョゼ(Felipe José)、パウリム・サルトーリ(Paulim Sartori)、ナタリア・ミトリ(Natália Mitre)、ユリ・ヴェラスコ(Yuri Vellasco)といったミナスのミュージシャンも参加し、ウアクチに投影したマルコ・アントニオ・ギマランイスの実験精神の轍を踏んでいる。

ダヴィ・フォンセカの前作『Viseira』から選曲した2曲や、カエターノ・ヴェローゾのカヴァー(2)「Circuladô de Fulô」など6つの楽曲をアレンジし、ガラスのマリンバや“塔”などのユニークな創作楽器で演奏。テコ・カルドーソはUaktiグループでも重要な要素だったフルートを用いて瑞々しい色彩を加える。
収録された6曲はいずれも映像がYouTubeで公開されているが、外部サイトでの埋め込みが許可されていないため、下記にリンクのみ紹介しておく。やはりウアクチの創作楽器の楽しさは、視覚に訴えてこそだと思うので、ぜひ映像も併せて見てほしい。

(1)「Lasca」
(2)「Circuladô de Fulô」
(3)「Desamanhecido」
(4)「Barra Grande」
(5)「Senhora das Sete Dores」
(6)「Cazadero’s March」

このアルバムは決して派手な作品ではない。しかし、耳を近づければ近づけるほどに、その内面的な豊かさが表れる。この作品は、ブラジル音楽の未来が、過去の遺産とどのように対話できるのかを示した、静かながら興味深い記録だ。

Mônica Salmaso – vocal
Teco Cardoso – bass flute, flutes, bansuri, tenor saxophone
Davi Fonseca – voice, roda, marimba de vidro, planetário, torre, piano, tri-mi, panelário, planetário, cincerros
Natália Mitre – marimba de vidro, marimba d’angelim, tambor condensador, copinhos cromáticos, berimbau naná
Felipe José – iarragunga, chori smetano, roda, borel, chori smetano, marimba de vidro, planetário, copinhos cromáticos, torre
Paulim Sartori – pan inclinado, torre, caixa de madeira, tri-mi, gig, marimba de vidro, trilobitas, grande pan, planetário
Yuri Vellasco – grande pan, tambor condensador, prato, vassourinha, pius-pi, marimba de vidro, marimba d’angelim, trilobita, planetário, moringa, caxixis, caixa
Alê Fonseca – torre

  1. アーティスト・イン・レジデンス(Artist-in-residence program)…各種の芸術家を一定期間特定の土地に招聘し、その土地に滞在させながらの作品制作を行わせる事業のこと。 ↩︎

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