新たな“同志”を得て原点回帰した Soviet Suprem、ダンスフロアから起こす革命

Soviet Suprem - Rouge

風刺ユニット Soviet Suprem、世界を痛烈に皮肉る4thアルバム

「冷戦でソ連が勝った世界線」を夢想するフランスのデュオ・ユニット、ソヴィエ・シュプレム(Soviet Suprem)の4thアルバム『Rouge』がリリースされた。前作『Made in China』は現代の社会主義大国・中国を中心にアジアをテーマとしたが、今作では原点であるソヴィエト的世界観に立ち返り、鮮烈なルージュ=赤(もちろんそれは共産主義の象徴的な色だ)をジャケットに掲げ、ブラックユーモアで社会を皮肉る。

“革命”を主導する二人──ジョン・レニーニ(John Lénine)シルヴェスター・スターリン(Sylvester Staline)は、“ファッション・ファッショ”たちが蠢く社会を統制するため、再びダンスフロアに降臨した。彼らの“政治局”はこのたび新たに扉を開き、何人かの“同志”を招き入れている。

アルバムからの最初のシングルカット (10)「Bis Trop」では、ジャック・ガンダール(Jacques Gandard)のヴァイオリンをフィーチュア。憂いのある曲調でゆったりと始まるが、ロシアの伝統的なポピュラー音楽によく見られるアッチェレランドで後半は憂さを晴らすかのように異常に速いテンポへと変化してゆく。タイトルはロシア語で「速く」を表す「быстро(ビストロ)」を、フランス語で「繰り返し」を意味する「bis repetita」に掛けた言葉遊びで、ダンスフロアでの終わりのない繰り返しを揶揄する。

(10)「Bis Trop」

(3)「Fashion Facho」にはブラジル出身の歌手フラヴィア・コエーリョ(Flavia Coelho)が参戦しポルトガル語でのラップを披露。MVにはAIで生成された(以前は「そっくりさん」や「お面」を使うしか術がなかったが…)トランプ、ネタニヤフ、プーチン、金正恩、イーロン・マスクといった著名人たちも登場し、やり過ぎなほどのパロディが痛快だ。タイトルの「ファッショ」はファシズムのこと。かつては恐怖の対象だったイデオロギーでさえ、ファッション感覚で消費されてしまうという現代の資本主義社会への皮肉にも受け取れる。

(3)「Fashion Facho」

(5)「Tetris」は文字通り、ソ連生まれのゲームのテーマ曲として有名な曲「コロベイニキ」(Коробе́йники)を引用している。8ビット風のサウンドを交え、彼ららしい政治風刺とパーティーを融合。落ちてくるブロックを現代社会の圧力や体制の象徴として風刺しながら、歌や踊りで抵抗する人々の強さをメッセージに込める。

(5)「Tetris」

フランスの個性的なアーティスト/俳優であるオーレリー・サーダ(Aurélie Saada)とムラド・ミュッセ(Mourad Musset)も新たな“同志”だ。二人は(6)「Pacifique」に参加し、レゲエ風のノスタルジックなサウンドで“平和”を訴える。

(9)「C’est la chute finale」にはSoviet Supremに似た方向性で知られるボスニアの社会派アヴァン・ダブ・ロックバンド、ドゥビオザ・コレクティヴ(Dubioza Kolektiv)が参加。祝祭的なバルカン・スカのサウンドが最高だ。

(1)「Komunistoirdamour」

Soviet Suprem プロフィール

ソヴィエ・シュプレムは、ジョン・レーニン(John Lénine)を名乗るトマ・フェテルマン(Toma Feterman)と、シルヴェスター・スターリン(Sylvester Staline)を名乗るR.Wanにより2013年に結成されたコメディバンド。ユニット名はソビエト連邦における立法府である最高会議(Supreme Soviet)に由来する。

実際には1991年に崩壊したソビエト連邦が冷戦に勝利したという架空の世界観を背景に、ヒップホップ、バルカン音楽、エレクトロ、ワールドミュージックを融合させ、ユーモアと風刺で社会や政治を批評する独自のスタイルを確立している。メンバーのトマ・フェテルマンはジプシー・バンド、ラ・キャラバン・パス(La Caravane Passe)のフロントマンでもあり、R.WanはフレンチヒップホップグループJavaのリードヴォーカルとして活動していた。

二人はそれぞれの音楽的バックグラウンドを活かし、Soviet Supremとして新たな音楽的冒険に乗り出した。2014年にデビューアルバム『L’Internationale』をリリース。バルカン音楽のブラスサウンドとヒップホップビートを組み合わせた「Balkan’s Not Dead」や、レゲエ風の「Rong Rak」が注目を集め、ヨーロッパのフェスティバルシーンで人気を博した。ソビエト風のレトロなビジュアルとコミカルなパフォーマンスが特徴で、「革命のダンスフロア」をスローガンに、聴衆を踊らせつつ政治的メッセージを伝えるスタイルが高く評価された。

『L’Internationale』収録の「Soviet Suprem Party」

2018年には2枚目のアルバム『Marx Attack』をリリース。マルクス主義や現代の資本主義をテーマに、前作よりも洗練されたサウンドを展開。「Vladimir」では現代の権力者を皮肉り、「T’as le Look Coco」は消費社会をユーモラスに批判した。

『Marx Attack』収録の「Vladimir」

2024年に3枚目のアルバム『Made in China』をリリース。アジア、特に中国の文化や地政学に焦点を当て、アジアの楽器を取り入れた新たなサウンドを提示。タイトル曲「Made in China」や「Woke Wok」では、グローバル化やウォーキズム(過剰な政治的正しさ)を風刺した。

『Made in China』収録の「Woke Wok」

Soviet Supremは、音楽を通じて政治や文化を軽妙に批評し、多様なジャンルを融合させることで独自の地位を築く。フェスティヴァルやクラブでのライブは、革命のパロディとダンスの融合として知られ、幅広い層から支持を受けている。

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