マーカス・ミラー×ダフト・パンク!? フランシスコ・ファトルーソ新作
ウルグアイの作曲家/ベーシスト/プロデューサー、フランシスコ・ファトルーソ(Francisco Fattoruso)の新譜『Galaxy 4133』は、目の覚めるようなシンセ・ファンクが強烈な傑作だ。ウルグアイの伝統的なカンドンベの影響を受けたリズムに、マーカス・ミラー(Marcus Miller)を想起させる力強いスラップが縦横無尽に飛び交う。サウンドの軸にあるのはモーグ・シンセサイザー。アルバム・タイトルや収録曲名からも分かるように、近未来SF的な風情が漂う──確かにコンセプト自体は若干安直な印象も拭えないが、そうと分かっていても、この音楽はかっこいい。
今作の出発点は、楽曲ではなく、“音”だったという。彼はヴィンテージ・シンセサイザーで生成された電子ドラムの音をプログラミングし、そこからリズム、コード、音色のレイヤーを重ねていった。そうしてアルバムの根幹が出来上がり、さまざまなゲストを迎えての生演奏も加えられながらアルバムは構築されていった。なるほど、「マーカス・ミラーとダフト・パンク(Daft Punk)を混ぜ合わせたようなサウンド」を目指したというのも納得できる。
前述したように、本作には現代ジャズやフュージョン・シーンで活躍する実力派ミュージシャンが多数参加している。
トライバル・テック(Tribal Tech)などで知られるキーボーディストのスコット・キンゼイ(Scott Kinsey)は(3)「Atlas」と(9)「Digital V8」で鋭いエレクトリック・サウンドを加え、アルゼンチンを代表するドラマー、セルヒオ・ベルディネッリ(Sergio Verdinelli)は(2)「Marvelous Glide」と(4)「En Tu Mirar」でダイナミックなグルーヴを支える。
さらにウルグアイのギター奏者マティアス・ラダ(Matías Rada)、サックス奏者ジェイコブ・セスニー(Jacob Scesney)、トランペット奏者アルバロ・トーレス(Álvaro Torres)、フルート奏者フアン・パブロ・ディ・レオーネ(Juan Pablo Di Leone)が楽曲ごとに個性豊かな演奏を披露し、アルバムのサウンドに多彩な色彩を与えている。また、レイ・マーシャル(Ray Marshall)は全10曲中6曲に参加する重要なゲストとして名を連ねる。
こうした国やジャンルを越えたミュージシャンたちとのコラボレーションによって、未来的なフュージョン・サウンドと豊かな即興性を兼ね備えた作品に仕上がっている。
Francisco Fattoruso プロフィール
フランシスコ・ファトルーソはウルグアイを代表する音楽一家「ファットルーソ・ファミリー」の系譜を受け継ぐベーシスト/マルチ・インストゥルメンタリスト/作曲家/プロデューサー。1979年8月10日、アメリカ・ネバダ州ラスベガス生まれ。父はウルグアイ音楽界の巨匠ウーゴ・ファトルーソ(Hugo Fattoruso)、母はブラジル人ミュージシャンのマリア・デ・ファティマ・キニョネス(María de Fátima Quinhões)。幼少期を主にウルグアイとブラジルで過ごし、6歳でピアノ、8歳でギター、11歳でベースを始めた。
2000年には父ウーゴと叔父オスバルド・ファトルーソ(Osvaldo Fattoruso)とともに再結成されたトリオ・ファトルーソ(Trío Fattoruso)にベーシストとして参加。ウルグアイ伝統のカンドンベを軸に、ジャズ、ロック、ブラジル音楽を融合させた演奏で注目を集めた。
ソロ・アーティストとしても精力的に活動し、ジャズ・ロック、フュージョン、ファンク、ヒップホップ、エレクトロニック・ミュージック、ゴスペルなど幅広いジャンルを横断。卓越したベース・プレイに加え、キーボードやプログラミング、プロダクションまで自ら手がけるマルチな才能を発揮している。2013年のアルバム『Music Adventure』は、ウルグアイの音楽賞「Premios Graffiti」を受賞した。
セッション・ミュージシャンとしても高い評価を受けており、ルベン・ラダ(Rubén Rada)、ミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)、ホルヘ・ドレクスレル(Jorge Drexler)、デレク・トラックス(Derek Trucks)、モロトフ(MOLOTOV)、イリヤ・クリヤキ・アンド・ザ・バルデラマス(Illya Kuryaki and the Valderramas)など、ラテンアメリカから北米まで数多くのアーティストと共演。国境やジャンルを越えて活動を続けている。
2026年発表の『Galaxy 4133』では、ウルグアイ音楽に根差したリズム感覚を土台に、モダン・フュージョンやエレクトロニクス、プログレッシブ・ジャズを融合。スコット・キンゼイ(Scott Kinsey)ら国際的なミュージシャンを迎え、未来的なサウンドスケープを描き出した。伝統と革新を自然に結びつける、その柔軟な音楽性は、現代ウルグアイ・ジャズ/フュージョン・シーンを代表する存在の一人として高く評価されている。