それぞれの伝統を繋ぎ、高め合う──プルバヤン・チャタジー&マーク・レッティエリ『Feathered Creatures』

Purbayan Chatterjee & Mark Lettieri - Feathered Creatures

シタールとギターの驚くべき共演作

インドのシタール奏者プルバヤン・チャタジー(Purbayan Chatterjee)と、アメリカ合衆国のギタリスト、マーク・レッティエリ(Mark Lettieri)の興味深い共演作『Feathered Creatures』がリリースされた。自身の音楽的基礎を超越したい、という根源的な欲求から生み出されたこのアルバムは、インドのシタールと西洋のエレクトリック・ギターというそれぞれの文化を代表する弦楽器が対等に対話し、新しい音楽の風景を見せてくれる作品だ。

インド古典音楽とジャズファンク、プログレッシヴロック、エレクトロニック/IDM、サイケデリックトランス、アメリカーナ/ルーツミュージックなどを大胆に融合させ、もはやジャンルレスな音楽。打ち込みも多用されているが、変拍子の曲も多く、何よりも二人の演奏がとてもダイナミックで開放的だ。
瞑想的なアンビエントから17/8拍子の重厚でパルスするグルーヴへ展開する(1)「Rise Enshrined」、歪んだギターとエキゾチック・メタル風の重低音とインド古典の魔融合(2)「Shallow Water Blackout」、より素朴でフォーキーな(3)「Bridges」など、どの楽曲もインストながら神秘的かつ映像的。

(7)「Soar」

このコラボのきっかけは、レッティエリが在籍するスナーキー・パピー(Snarky Puppy)の創設者マイケル・リーグ(Michael League)がもたらした。2023年後半にプルバヤン・チャタジーがスナーキー・パピーのインド公演にゲスト参加した際、レッティエリがロック的なトーンで弾く彼のシタール演奏に衝撃を受けたことで交流が始まったという。その後、インド・ムンバイとテキサス州フォートワースの間でリモートでアイディアの交換が始まり、共作の構想を練り上げていった((4)「9000 Miles」は、二人を隔てた距離──ムンバイとフォートワースの直線距離──をタイトルにしたもの)。

(4)「9000 Miles」

(5)「Sarode Sevens」ではサロード奏者プラティク・シュリヴァースタヴァ(Pratik Shrivastava)を迎えて、より深くインド古典音楽の世界へ踏み込む。変拍子や複雑なリズム構造を用いながらも、決して難解さに陥らず、身体的なグルーヴを失わない点はレッティエリらしい美点でもある。

(6)「Hibiscus」はタブラの巨匠ザキール・フセイン(Zakir Hussain, 1951 – 2024)へのトリビュート。ゲストのタブラ奏者サタジット・タルヴァルカル (Satyajit Talwalkar)が主導する11/8拍子のリズムで、“デザイン”と呼ぶべき洗練された演奏が繰り広げられる。

ジョン・マクラフリン(John McLaughlin)とシャクティ(Shakti)の系譜を愛する人はもちろん、Snarky Puppy周辺の現代フュージョンに惹かれるリスナーにも強く薦めたい一枚だ。『Feathered Creatures』は、異なる伝統が出会うことで生まれる可能性を示した作品であり、2026年のクロスカルチュラル・ジャズを語る上で欠かせない重要作となるだろう。

Purbayan Chatterjee & Mark Lettieri プロフィール

プルバヤン・チャタージー(Purbayan Chatterjee)は1976年インド・コルカタ生まれのシタール奏者/作曲家。北インド古典音楽の名門セーニヤー・マイハール派(Seniya Maihar Gharana)に連なる現代屈指の演奏家として知られる。幼少期より父パルタ・プラティム・チャタージー(Partha Pratim Chatterjee)に師事し、15歳でインド大統領賞(Rashtrapati Award)を受賞。伝統的なラーガ演奏を基盤としながらも、ジャズ、ワールドミュージック、エレクトロニカなど幅広い分野との協働を展開してきた。独自開発の電気シタール「Dwo」を用いた実験的な活動でも知られ、現代インド音楽界を代表する越境型アーティストの一人である。

マーク・レッティエリ(Mark Lettieri)は米国テキサス州フォートワースを拠点とするギタリスト/作曲家/プロデューサー。世界的人気を誇るジャズ・フュージョン集団スナーキー・パピー(Snarky Puppy)の主要メンバーとして活躍するほか、人気バンド、フィアレス・フライヤーズ(The Fearless Flyers)でも知られる。ジャズ、ファンク、R&B、ロック、ゴスペルなど多彩な音楽性を融合したプレイスタイルで高い評価を獲得し、ソロ名義でも数多くの作品を発表。卓越したグルーヴ感と洗練されたサウンドメイキングにより、現代ジャズ/フュージョン界を代表するギタリストの一人として国際的な支持を集めている。

Purbayan Chatterjee & Mark Lettieri - Feathered Creatures
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