フナナーを代表するバンド、フェーロ・ガイタの新作
カーボベルデの伝統的な舞踏音楽フナナー1を代表するバンドであり、結成30周年を迎えるフェーロ・ガイタ(Ferro Gaita)が、約8年ぶりとなる新作アルバム『Tokador DI Gaita』をリリースした。結成当初から今も変わらないフェーロ(リズムを刻む鉄製のスクレイパー)とガイタ(ダイアトニック・アコーディオン)をサウンドの中心に据え、疾走感のある歌を歌う彼らの魅力は健在。2026年FIFA W杯での大躍進で世界から注目を浴びたカーボベルデが誇る、ひとつの文化の象徴としても注目したい作品だ。
アルバムは、フナナーと歴代の名ガイタ奏者であるビトリ・ニャ・ビビーニャ(Bitori Nha Bibinha)やメメ・ランディン(Meme Landim)などを称える曲(1)「Tocador DI Gaita」(ガイタを弾く人)で始まる。アコーディオンとフェーロだけでなく、ギターやエレクトリック・ベース、ドラムスやパーカッションといった西洋音楽のスタンダードな編成も取り入れながらも、人間本来の魂を踊らせるような力強い演奏はフナナーという音楽が持つ途轍もないエネルギーを感じさせるには充分だ。
続く(2)「Txada Munti」や、(5)「Pon DI Fonga」、(11)「Passa Gravata」といった楽曲も、疾走感あるリズムとフェリーニョの鋭い刻みが一体となり、フナナー本来の躍動感を存分に味わわせてくれる。一方で、(3)「Cabo Verde」(カーボベルデ)や(9)「Nos Identidadi」(私たちのアイデンティティ)といった楽曲からは、自らの文化や故郷への誇りを大切にしてきたフェーロ・ガイタらしい視点もうかがえる。さらに(6)「Storia Batuko」は、同じサンティアゴ島に伝わる伝統音楽バトゥーコ2へのまなざしを感じさせ、アルバム全体がカーボベルデの文化遺産を見渡すような構成になっている。
(10)「Grogu」は現代のフナナーを象徴する1曲だ。高速のリズムで、フェリーニョが細かくリズムを刻み、ガイタが音楽全体を力強く牽引し、ギターやトロンボーンといった楽器も楽曲を彩る。伝統的なフナナーの骨格を保ちながら、現代的なバンド・サウンドの探求するフェーロ・ガイタの魅力が凝縮された1曲だ。
フナナーの最前線を走り続ける、Ferro Gaita プロフィール
フェーロ・ガイタは、1996年にカーボベルデの首都プライアで結成された、同国を代表するフナナー(Funaná)のバンド。グループ名はフナナーの中核を担う二つの伝統楽器である「フェーロ(Ferro, あるいはFerrinho, 金属製スクレイパー)」と「ガイタ(Gaita, ダイアトニック・アコーディオン)」に由来する。
結成当初は、アコーディオン兼ヴォーカルのイドゥイーノ(Estevão “Iduino” Tavares)、フェーロ(フェリーニョ)兼ヴォーカルのビーノ・ブランコ(Carlos “Bino” Lopes)、ベースを中心とした編成で活動を開始。伝統的なフナナーにドラムやエレクトリック・ベースを組み合わせることで、力強く現代的なサウンドを生み出し、バーやストリートでの演奏を経て一躍注目を集めた。1997年にはプライアで開催されるガンボア・フェスティヴァルへの出演を果たし、同年発表したデビュー作『Fundu Baxu』は国内で大きな成功を収めた。
その後も『Rei di Tabanka』(1999年)、『Rei di Funaná』(2001年)、『Bandera Liberdade』(2003年)、ライヴ作品『Finkadu na Raiz』(2006年)、『Festa Fora』(2015年)などを発表。フナナーのみならず、バトゥーコ(Batuco)やタバンカ(Tabanka)といったカーボベルデの伝統音楽も積極的に取り入れながら、同国の豊かな音楽文化を世界へ発信し続けている。
Ferro Gaitaは、1980年代に電化・モダン化されたフナナーを、伝統的なアコーディオンとフェーロを中心とするスタイルへと回帰させながら、新たな生命力を吹き込んだグループとして高く評価されている。その功績はカーボベルデ国内外で広く認められ、2007年には文化振興への貢献に対してカーボベルデ政府から文化功労章を授与された。欧州、アフリカ、アメリカなど各地で精力的なツアーを行い、今日ではフナナーを象徴する存在として知られている。
2026年には約8年ぶりとなるスタジオ・アルバム『Tokador DI Gaita』を発表。躍動感あふれるリズムと卓越したアンサンブル、そしてカーボベルデの文化や人々の暮らしを映し出す歌で、結成30年を迎えた現在もなお、フナナーの第一人者としてその存在感を示し続けている。