コンゴ出身、ジョナサン・ンヴィタの驚くほど活力に満ちたアフロ・ジャズ。最高のデビュー作『Mosisa』

Jonathan Nvita - Mosisa

Jonathan Nvita デビュー作『Mosisa』

コンゴ民主共和国の首都キンシャサ出身、現在はカナダ・トロントを拠点とするシンガーソングライター/ギタリスト、ジョナサン・ンヴィタ(Jonathan Nvita)のデビューアルバム『Mosisa』は、コンゴの伝統的なリズムにリンガラ語1の歌詞といった活気に満ちたアフリカのルーツと、彼がトロントで培った洗練されたジャズの影響が融合した稀有な作品だ。アルバムの核となるのはアフリカの精神性、共同体の記憶、家族への敬意などであり、近年のアフリカン・ジャズ/ワールド・ジャズの中でも非常にアイデンティティ意識の強い作品といえる。

アフリカ随一の芸術都市と呼ばれるキンシャサは、過酷な貧困と混沌とした環境のなかで、住民たちが生きることへの渇望をエネルギーに変え、極めて独創的で力強いアートや音楽を生み出し続けている。今作もそうした彼のルーツが垣間見え、とりわけアルバム冒頭の(2)「Good Time」や(3)「Catch the Speed」といった楽曲は、大袈裟ではなく魂の根源から沸き立つ生命力を感じさせる。楽曲のアレンジもとても洗練されており、驚くほどだ。

(13)「Ne Jamais Trahir Le Congo」

アルバムからのいくつかの楽曲の、キンシャサで撮影されたと思しきミュージック・ヴィデオも必見だ。完全にキャパオーヴァーの1000万人を超える人口を抱え、無秩序が蔓延しながらも驚くほどの活力に満ちた都市、とはナショナル・ジオグラフィックの記事にもある通りなのだろうが、彼らの全方位に飛び散るエネルギーが感じられる映像もほかになかなか無いだろう。

(13)「Mokolo Elamu」

Jonathan Nvita プロフィール

ジョナサン・ンヴィタは、コンゴ民主共和国キンシャサ出身、カナダ・トロントを拠点に活動するアフロ・ジャズのシンガー/作曲家/マルチ器楽奏者。幼少期から聖歌隊指揮者でギタリストだった父親の影響で音楽に親しみ、後にピアノや歌唱を本格的に学んだ。トロント移住後は名門ハンバー・カレッジで声楽を専攻し、さらにマギル大学でサウンド・レコーディングを学ぶなど、演奏家としてだけでなく音楽制作の分野でも研鑽を積んでいる。

アフリカの伝統的リズムやリンガラ語の歌唱を基盤に、ジャズ、ゴスペル、ワールドミュージックの要素を融合した独自のスタイルを確立。自身のルーツであるコンゴの文化と、トロントで培った現代的な音楽語法を結び付けた作品で注目を集めている。音楽を「神や祖先、人々をつなぐ精神的な力」と捉えており、その思想は楽曲やライブ・パフォーマンスにも色濃く反映されている。

2025年にはデビュー・アルバム『Mosisa』(「Roots=ルーツ」の意)を発表。豊かなヴォーカル表現とアフリカン・リズム、ジャズの洗練されたハーモニーを融合した同作は、故郷への敬意とディアスポラとしてのアイデンティティを描いた意欲作として高く評価されている。

(5)「Mokili Makambo」
  1. リンガラ語(Lingála)…コンゴ民主共和国やコンゴ共和国などを中心に約1,000万人以上が話すバントゥー語族の言語。中央アフリカのボバンギ語をベースに、フランス語やポルトガル語などの外来語を幅広く取り入れて発展した。 ↩︎
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