Renaldo & Clara 『L’encant』
スペイン・カタルーニャ州リェイダを拠点とするシンガーソングライター、クララ・ビニャルス(Clara Viñals)によるプロジェクト、レナルド&クララ(Renaldo & Clara)が通算5作目となるアルバム『L’encant』をリリース。前作のエレクトロ・ポップを継承しつつ、キャリア初期の素朴なフォーク・ポップの感覚を取り戻したような、あたたかくレトロ・フューチャーなサウンドが心地いい良作だ。
彼女のこれまでの作品と同様に、全曲がカタルーニャ語で歌われる。彼女が描き出すのは恋愛や親密な関係のなかで生まれる、ごく個人的で微妙な感情だ。(1)「Amb tu podria estar」はシンプルに、「あなたとなら一緒にいられる」ことの幸福感を歌い、(2)「Gener」では「好きな人の過去が気になるけど、その過去を知れば知るほど自分が知らなくてもよかったことまで知ってしまうかもしれない」という“知りたい/だけど知りたくない”という心の機微を、驚くほどストレートに歌っている。
そして、やはりクララ・ビニャルスの囁くような歌声も魅力的だ。
サウンドはクララ・ビニャルス自身による打ち込みを中心に、長年の音楽的パートナーであるマルチ奏者ウーゴ・アラルコン(Hugo Alarcón)がギター、ベース、ピアノ、チェロなど生楽器を加える。そのほか楽曲によって何名かのミュージシャンが参加しているが、基本的にはこの2人がすべての中心。プログラミングされた音も、生楽器による音も、クララ・ビニャルスの歌と自然と溶け合う。
全9曲だが、ほとんどの曲は2〜3分程度と、陽だまりのような音楽に浸っているとあっという間に終わってしまう。たくさんの比喩で膨らんだ文学的な歌も良いけれど、日常はもっと自然体に、感じるままでいい。彼女の歌からはそんなメッセージも伝わってくる。
そんな居心地の良いアルバムだから、21分をずっとループしながら、ずっと聴いていても疲れない。
Renaldo & Clara プロフィール
レナルド&クララは、スペイン・カタルーニャ州リェイダを拠点に活動するシンガーソングライター/ギタリストのクララ・ビニャルス(Clara Viñals)による音楽プロジェクト。2008〜09年頃に始動し、カタルーニャのインディー・ポップ・シーンを代表する存在の一つへと成長した。Renaldo & Claraという名前はボブ・ディラン(Bob Dylan)が1975年に発表した映画『Renaldo and Clara』に由来する。プロジェクト名から二人組を想像させるが、Renaldoという人物が実在するわけではなく、クララ・ビニャルスを中心に作品ごとにミュージシャンを迎える形で活動している。
2014年に1stアルバム『Fruits del teu bosc』を発表し、2017年の『Els afores』では、アコースティックな質感を持つポップ・ソングを軸に独自の世界観を確立。その後、2020年の『L’amor fa calor』、2023年の『La boca aigua』では、エレクトロニクスやダンサブルなリズムを積極的に取り入れ、より開放的で現代的なポップへと音楽性を拡張した。『La boca aigua』はカタルーニャの音楽シーンでも高く評価され、Enderrockの批評家賞などを受賞している。
2026年5月には5作目のアルバム『L’encant』をPrimavera Labelsから発表。アコースティック・ポップ、ギターを中心としたインディー・ポップ、電子音楽、レトロフューチャー的なバラードなど、それまでのキャリアで培ってきたさまざまな要素を一枚に凝縮した作品となった。初期の素朴なポップと、近年のエレクトロニックなサウンドのどちらかを選ぶのではなく、その両者を現在のRenaldo & Claraとして融合させた作品であり、クララ・ビニャルス自身も「これまでのキャリアを理解するための良いアルバム」と位置づけている。
クララ・ビニャルスは恋愛や嫉妬、日常の感情といった身近なテーマを、過度に文学的な表現に頼らず、平易で直接的なカタルーニャ語の歌詞に落とし込むソングライティングを特徴とする。その一方で、作品ごとにサウンドを変化させながらも、繊細なメロディと独特の歌声によって一貫してRenaldo & Claraらしさを保っている。
Clara Viñals – vocals, programming, sampler
Hugo Alarcón – guitar, piano, synthesizers, bass, cello, vocals
Cristian Pallejà – guitar (1)
Ferran Resines – keyboards (1, 2)
Rodrigo Hernández – drums (2)
Guillermo Farré – piano (4)
Alberto Pérez – double bass (4)
Joana Jové – vocals (7)
Lídia Alberich – vocals (7)
Xavier León – vocals (7)