Hiba Tawaji & Ibrahim Maalouf 初の共同名義作品『À LA FRANÇAISE』
ともにレバノンにルーツを持ち、フランスを拠点にそれぞれのキャリアを築いてきた歌手ヒバ・タワジ(Hiba Tawaji)と、トランペット奏者イブラヒム・マアルーフ(Ibrahim Maalouf)が、初の共同名義によるアルバム『À LA FRANÇAISE』をリリースした。「フランス流に」のタイトルが示すとおり、主に20世紀後半のフランスの名曲たちをジャズ・コンボとオーケストラをバックに歌う作品で、イブラヒムの代名詞でもある微分音トランペットのソロによってフランスで生きる二人のルーツも織り込もうとするアルバムとなっている。
二人は2020年に結婚しており、これまでもステージや作品を通じてたびたび共演してきている。
本作では1960年代から2000年代まで、フランス語圏のポピュラー音楽を彩ってきた名曲から全11曲を選曲。シャルル・アズナヴール(Charles Aznavour)の(1)「La bohème」、セルジュ・ゲンズブール(Serge Gainsbourg)の(3)「La javanaise」、クリストフ(Christophe)の(4)「Les mots bleus」、アンリ・サルヴァドール(Henri Salvador)で知られる(5)「Jardin d’hiver」、ジョニー・アリディ(Johnny Hallyday)の(7)「Que je t’aime」、フランシス・カブレル(Francis Cabrel)の(10)「Je t’aimais, je t’aime, je t’aimerai」、クロード・ヌガロ(Claude Nougaro)の(11)「Toulouse」など、世界的にも広く知られた楽曲が多い。
アルバムの編曲を担うのはイブラヒム・マアルーフ。ヒバ・タワジのヴォーカルと自身のトランペットを中心に、ピアノのフランク・ヴォステ(Frank Woeste)、ギターのフランソワ・デルポルト(François Delporte)、ベースのジル・コカール(Gilles Coquard)、ドラムスのジュリアン・テケヤン(Julien Tekeyan)によるジャズ・コンボ、さらにフランス共和国親衛隊管弦楽団(Orchestre de la Garde républicaine)を加えた大きな編成で録音されている。アレンジは原曲の旋律や歌としての性格が大切に扱われているため、ジャズというよりはオーケストレーションが際立ち、即興演奏と呼べる部分はほぼマアルーフのトランペット・ソロやオブリガートくらいに留まる。ヒバ・タワジの歌唱もクセがなく聴きやすいが、ジャズを期待すると面白みには欠けるかもしれない。
この手のテーマのアルバムには、個人的に大好きなゲンズブールの「La javanaise」があるといいなーと思い聴いていたら案の定あったので反射的にレビューを書き始めてしまったが、管弦楽のアレンジも無難な印象で、尖っている部分はない。マアルーフの4つ目のバルブも申し訳程度にときどき使われるくらいで、もっと大胆に攻めてほしかった。
プロフィール
Hiba Tawaji
ヒバ・タワジは、1987年レバノン・ベイルート生まれの歌手/俳優/演出家。アラビア語、フランス語、英語を操り、アラブ音楽からポップス、ジャズ、オペラまで幅広いスタイルを歌う。作曲家・プロデューサーのウサマ・ラハバニ(Oussama Rahbani)との活動を通じてアラブ圏でキャリアを築き、2015年にはフランス版『The Voice』に出演。2016年からミュージカル『Notre-Dame de Paris』でエスメラルダ役を務め、フランス語圏でも広く知られるようになった。
Ibrahim Maalouf
イブラヒム・マアルーフは、1980年レバノン・ベイルート生まれ、フランス育ちのトランペット奏者/作曲家/プロデューサー。トランペット奏者である父ナシム・マアルーフ(Nassim Maalouf)が開発した4本ピストンの微分音トランペットを用い、アラブ音楽のマカームに含まれる微分音をトランペットで表現する独自の演奏で知られる。クラシックの教育を受け、国際的なトランペット・コンクールで実績を重ねたのち、ジャズ、アラブ音楽、ロック、ポップス、クラシックなどを横断する作品を発表。スティング、アンジェリーク・キジョー、マーカス・ミラー、クロノス・クァルテットら多数の国際的な音楽家とも共演している。
Hiba Tawaji – vocals
Ibrahim Maalouf – trumpet, arrangements
Frank Woeste – piano
François Delporte – guitar
Gilles Coquard – bass guitar
Julien Tekeyan – drums
Orchestre de la Garde républicaine – orchestra
Bastien Stil – conductor