- 2024-04-14
- 2024-04-28
UKジャズシーンに新星の到来を告げるデビューEP。注目のベース・ヒロイン、アーミ・ガジャガ
パリ生まれロンドン在住。家系はガンビア、セネガル、マリにルーツを持つというベーシスト/シンガーソングライター、アーミ・ガジャガ(Amy Gadiaga)のデビューEP『All Black Everything』が、UKジャズシーンに新星の到来を告げる。
パリ生まれロンドン在住。家系はガンビア、セネガル、マリにルーツを持つというベーシスト/シンガーソングライター、アーミ・ガジャガ(Amy Gadiaga)のデビューEP『All Black Everything』が、UKジャズシーンに新星の到来を告げる。
シャバカ・ハッチングス(Shabaka Hutchings)の新しいアルバムだと思って聴き始めたから、正直に言うとかなり驚いた。テナーサックスの音を待ち構えていたところに聴こえてきたのは、クラリネットの美しく温もりのある、悲しい音だった。人気バンドを率い、わくわくするような新世代のジャズを聴かせてきてくれた彼は、今作から名義をシャバカ(Shabaka)と変え、代名詞だった力強いテナーサックスを静かにケースに仕舞い、代わりの楽器としていくつかの笛を手に取ったようだ。
初めてその歌声を聴いたときから、歌手としての並外れた才能を感じた。八王子市出身のシンガー、後藤杏奈(Goto Anna)。ブルガリアへの留学や船での世界一周など豊富な国際経験をもつ彼女のデビューアルバム『Departure』は、“歌唱力”の一言では括ることのできない魅力が凝縮された作品となった。
フランスのシンガーソングライター/ハープ奏者ソフィー・ソリヴォー(Sophye Soliveau)のソロデビュー作『INITIATION』が圧巻だ。まずは(2)「Initiation II - Wonder Why」を聴いてみてほしい。タイトだが主張のないリズムセクションの上で、幾分慎ましやかに分散コードを爪弾くハープ。鳥肌立つほど多層にも重なる女性コーラス。そして何よりも耳を惹くのは、これがデビュー作とは思えない経験値を感じさせるソフィー・ソリヴォーその人のあまりに素晴らしいヴォーカルだ。
バンド結成から20周年となるスペイン・カタルーニャの女性のみで構成されるフラメンコ・クロスオーヴァー・バンド、ラス・ミガス(Las Migas)の6枚目となるアルバム『Rumberas』がリリースされた。タイトルのとおりルンバ・フラメンカを基調としつつも、その伝統に捉われずに自分たちのスタイルを確立した彼女らの新作は自身と誇りに溢れており、長らく男性優位のジャンルとなっていたフラメンコが完全に新しい時代に入ったことを感じさせる。
前作『Our Folklore』でジャズ、ブラジル音楽、ネオソウルなど多様な音楽的バックグラウンドを凝縮した優れた音楽を提示してみせたスイス出身のギタリスト/作曲家ルイ・マトゥテ(Louis Matute)が、自身4枚目のアルバムとなる『Small Variations of the Previous Day』をリリースした。今作も中南米や大西洋の島々の音楽への深い探求心がサウンドの中核を担う。
ベーシストのヤコブ・ローラン(Jakob Roland)とドラマーのヘンリック・ホルスト・ハンセン(Henrik Holst Hansen)のデュオ、アート・ローホ(Art Roho)がデンマーク・コペンハーゲン出身のピアニスト、マッツ・ソンダーガード(Mads Søndergaard)を迎え入れ制作した3rdアルバム。キース・ジャレットとビル・エヴァンスが同居するような音空間が美しい。
トルコ・イスタンブールを拠点とする7人編成のバンド、デヴェラー(Develer)。ピアノ、シンセ、ドラムス、エレクトリック・ベースという西洋音楽の楽器に加え、弓弾きするタンブールやフレットレスのクラシックギター、ダラブッカといったこの地域特有の楽器を加えた微分音満載のジャズ・アンサンブルがなんとも魅惑的だ。
前作『Andalusian Love Song』(2022年)では地中海を取り囲む諸国の出身者による多国籍ラージアンサンブルを率い刺激的なエンターテインメントを提示したイスラエル出身の作曲家/鍵盤奏者アヴィシャイ・ダラシュ(Avishai Darash)が、今度はピアノトリオにトランペットを加えたカルテットによるアルバム『Between Hope and Despair』をリリースした。
グアドループ出身のドラムス奏者アーノウ・ドルメン(Arnaud Dolmen)と、ブラジル出身でグアドループに移り住んだピアニスト、レオナルド・モンタナ(Leonardo Montana)によるデュオ・アルバム『LéNo』がリリースされた。ピアノとドラムスのデュオ編成だが、カリブ海のクレオール・ジャズのグルーヴが渦巻き、グウォカの洗礼を受けたユニークなドラミングとピアノ、そして2人のコーラスが有機的に絡み合う演奏は圧巻。一般的に想像される“ジャズ”とはまた違った世界の、唯一無二の音楽体験を与えてくれる絶品となっている。
フランスのバンド、ムッシュ・マラー(Monsieur MÂLÂ)は2021年から2022年にかけてリリースした2枚のEPと、奔放で熱いライヴでフランスのインディー・シーンで確実に存在感を高めてきた。この5人組の音楽にはファンク、ジャズ、ソウル、アフロビート、サンバ、ロック、さらにはもっとプリミティヴな民族音楽など様々な要素があるが、それらジャンルのどれにも当てはまらない強烈な個性を持つ。
ウクライナ出身のギタリスト/作曲家、イーゴリ・オシポフ(Igor Osypov)の2024年新譜『Motherland?2k14』が凄い。現在はドイツ・ベルリンに滞在し、母国に帰ることができない状況となっている彼の個性的な音楽には、従来のジャンルの枠に留まらない洗練されたサウンドの中に曖昧だが示唆的な主張が垣間見える。
南アフリカ・ケープタウンを拠点とする7人編成のジャズバンド、クジェンガ(Kujenga)。スワヒリ語で“構築する”を意味するバンド名を持つ彼らの2枚目のアルバム『In the Wake』がリリースされた。トランペット、トロンボーン、テナーサックスの3管や電化ギター、ベースなどよくあるジャズ編成ではあるものの、アフリカ南部のアイデンティティを感じさせる力強いサウンドがとても素晴らしいアルバムだ。
ミナスのほかの多くの若手器楽奏者たちの例に漏れず、非常に複雑かつ瑞々しい音楽を作り出す女性ピアニスト/作曲家イガーラ(IGARA)。2021年にBDMGヤング・インストゥルメンタル(BDMG Jovem Instrumentista 2021)を受賞し、その後2023年にミナスの器楽音楽で最も意味のある賞である第22回BDMGインストゥルメンタル(BDMG Instrumental 2023)を受賞した彼女のデビューEP『O Piano, os Cavalos e o Mar』は、哲学や文学の香りをも感じさせる非常に美しい作品だ。