サックス奏者/作曲家、ジャスミン・マイラの新作
イギリス・リーズを拠点に活動する気鋭サックス奏者/作曲家、ジャスミン・マイラ(Jasmine Myra)による3作目のアルバム『Where Light Settles』。現代の英国ジャズを代表するレーベルであるゴンドワナ・レコード(Gondwana Records)から届けられた本作は、彼女のこれまでの路線を受け継ぎながら、より豊かなアンサンブルへと発展した意欲作だ。
アルバムはジャスミン・マイラのアルトサックスを中心に据えつつも、弦楽四重奏やハープ、フルート、ヴィブラフォンなどを織り交ぜたサウンドによって、ジャズや室内楽、フォークといった要素が自然に溶け合う。技巧的なソロで聴かせるというよりも、楽器同士の響きを大切にしたアンサンブルが印象的で、穏やかな空気感がアルバム全体を包み込む。
作品のテーマとなっているのは、光と影、喪失と希望といった“人生の二面性”だ。重いテーマを掲げながらも、音楽は終始穏やかで、感情を過度に煽ることはない。静かな旋律と丁寧に積み重ねられたアレンジが、聴き手それぞれの時間や風景に寄り添ってくれる。
今作のインスピレーションについて、ジャスミン・マイラはこう語る:
それは、胸が張り裂けそうになるほど辛いけれど、とても大切な、ほろ苦い瞬間なんです。未来を見据え、人生の意味を理解しようとすること。痛みは避けられないし、どんな状況でも困難はつきものですが、それなしには成長も、自分自身や周りの世界について学ぶこともできません。二面性というのは、成長と、困難を乗り越えることなんです。
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音楽家(あるいは芸術家)という“特別な生き方”を、“選んだ”、誇りと苦悩。
今作からは、彼女の奥底にあるそんなひとつの根源が浮かんでくる。ジャスミン・マイラは稀有な音楽家であることは間違いないが、まだ“光が落ち着く場所”を探す途中なのだ。
Jasmine Myra プロフィール
ジャスミン・マイラは、1997年イギリス・リーズ生まれのアルト・サックス奏者/作曲家/バンドリーダー。現代イギリス・ジャズを代表するレーベルであるゴンドワナ・レコード(Gondwana Records)に所属し、ジャズを軸に室内楽、アンビエント、フォーク、映画音楽などの要素を織り交ぜた、叙情的で空間性豊かなサウンドで高い評価を集めている。
幼少期にヴァイオリンを学び、14歳でサックスへ転向。リーズ音楽院(Leeds Conservatoire)でジャズを学び、在学中からリーズのクリエイティヴな音楽シーンで活動を始めた。ヒップホップやモーダル・ジャズ、現代クラシックまで幅広い音楽に影響を受け、若手ジャズ・コレクティヴ「Abstract Orchestra」のメンバーとしても経験を積んでいる。
2019年には自主制作EP『Bring to Light』を発表。その才能に注目したトランペット奏者マシュー・ハルソール(Matthew Halsall)に招かれ、Gondwana Recordsと契約した。2022年のデビュー・アルバム『Horizons』では、ストリングスやハープを取り入れた有機的なアンサンブルと繊細なコンポジションが話題となり、一躍注目を集める。続く『Rising』(2024年)では演奏・作曲ともに一段と成熟した姿を示し、英国ジャズ・シーンを代表する新世代アーティストの一人としての地位を確立した。
2026年に発表した第3作目『Where Light Settles』では、自身初となるセルフ・プロデュースにも挑戦。約13〜14人編成によるラージ・アンサンブルを軸に、「光と影」「喪失と再生」といった人生の二面性をテーマに据えた、映画音楽のようなスケール感を備えた作品へと発展し、ソロイストとしての技巧を誇示するのではなく、楽曲全体の響きや物語性を重視する作風がより明確なものとなった。
彼女の音楽は、ケニー・ホイーラー(Kenny Wheeler)やグローヴァー・ワシントンJr.(Grover Washington Jr.)、ナラ・シネフロ(Nala Sinephro)、シャバカ・ハッチングス(Shabaka Hutchings)らから影響を受けつつも、英国フォークやアンビエント、現代クラシックをも自然に融合させた独自の世界観を築いている。
温かく伸びやかなアルト・サックスの音色と、静かな高揚感に満ちたアンサンブルは、近年の英国ジャズを象徴するサウンドの一つとして国内外で高く評価されている。
Jasmine Myra – alto saxophone
Rianna Henriques – flute (1, 2, 5, 6, 7)
Arran Kent – alto flute (1, 2), clarinet (3, 5), flute (4, 6, 8, 9)
Joel Stedman – flute (3, 4, 5, 7, 8), alto flute (7, 9)
Ben Haskins – guitar
Jasper Green – piano
Alice Roberts – harp
Sam Quintana – double bass
George Hall – drums, percussion
Jess Mollie – vibraphone (2, 6)
Henry Rankin – violin (2, 3, 4, 6, 7, 8, 9)
Ellie Consta – violin (2, 3, 4, 6, 7, 8, 9)
Laurie Dempsey – viola (1, 2, 3, 4, 6, 7, 8, 9)
Katt Newlon – cello (1, 2, 3, 4, 6, 7, 8, 9)
Matt Carmichael – tenor saxophone (8)
Ozzy Moysey – conductor (1, 2, 3, 4, 6, 7, 8)