NYで活躍するベース奏者ノーム・ウィーゼンバーグ、繊細な感性が生み出す極めて密度の濃い最高の現代ジャズ作品

Noam Wiesenberg - NeoNomadic

ノーム・ウィーゼンバーグ、待望の2ndアルバム『NeoNomadic』

現代のニューヨークのジャズシーンを支えるベーシスト、ノーム・ウィーゼンバーグ(Noam Wiesenbergの新作『NeoNomadic』が素晴らしい。リーダーとして初の作品となった前作『Roads Diverge』はシャイ・マエストロ(Shai Maestro)やイマニュエル・ウィルキンス(Immanuel Wilkins)といった世界最高峰のプレイヤーの参加もあり話題となったが、今作ではそうしたビッグネームの名前がなくとも作編曲家/ベーシストとして唯一無二の極致に達することを証明する非常に密度の濃い完成度に度肝を抜かれる。

前作から引き続き参加するのはトランペッターのフィリップ・ディザック(Philip Dizack)とドラマーのクシュ・アバデイ(Kush Abadey)。ここにギタリストチャールズ・アルトゥラ(Charles Altura)とピアニストのマイク・キング(Mike King)が新たに加わり、驚くべき化学反応を引き起こす。

トランペットとギターのユニゾンで始まる(2)「NeoNomadic」は今作の象徴的な楽曲だ。複雑だがよく練られており魅力的なメロディーとハーモニー、各自の巧みなアドリブと極めて洗練されたアンサンブル、音響の細部にも拘ったサウンドプロダクション。これぞ、現代ジャズの最先端をゆくニューヨークの音。

(2)「NeoNomadic」

(3)「Dark Matter」の冒頭には不気味な呻き声のような音が収録されているが、これはNASA(アメリカ航空宇宙局)が2022年に公開した“ペルセウス銀河団の中心にあるブラックホールが発する音”をサンプリングしたもの(元ネタはこれ。実際の音はあまりに低周波すぎて人間の耳には聞こえないため、57オクターブ高く調整されている)。ここではアルバム唯一の特別ゲストとしてチリ出身のサックス奏者メリッサ・アルダナ(Melissa Aldana)が迎えられ、フィリップ・ディザックとの2管でフリー・インプロビゼーションと緻密なコンポージングの絶妙なバランスの間を行き来する。タイトルの「ダークマター」つまり暗黒物質とは、現在の科学を以てしても未だに正体のわからない宇宙に存在すると考えられる観測不可能な物質のこと。バンドの演奏は物理のことわりのなかにある謎をもっとも魅力的に表現するために徹しており、空間を作るチャールズ・アルトゥラのギターのエフェクトも地味ながら効果的だ。

Noam Wiesenberg プロフィール

ノーム・ウィーゼンバーグは1987年にイスラエル・テルアビブに生まれた。父親のメナヘム・ウィーゼンバーグ(Menachem Wiesenberg)はピアニストであり音楽教師という家庭で、彼自身も早くから音楽に親しみ6歳から西洋クラシック音楽のチェロを習い始めたが、父親はクラシックだけではなくビートルズ、スティーヴィー・ワンダー、デューク・エリントン、パコ・デ・ルシア、トルコ音楽、ブルガリア音楽、インド音楽、クレズマー音楽といったあらゆる種類の音楽を学んだという。

20歳でコントラバスに転向。イスラエルを代表するプログレッシヴ・メタルバンド、オーファンド・ランド(Orphaned Land)の2004年のアルバム『Mabool』にはチェリストとして参加している。

2008年にアメリカに渡りバークリー音楽大学に入学。2010に同大学を優秀な成績で卒業した後、ニューヨークに移住した。以来、アリ・ホーニグ(Ari Hoenig)、ビリー・ハート(Billy Hart)、フランシスコ・メラ(Francisco Mela)、ギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman)、マイク・モレノ(Mike Moreno)、ウィル・ヴィンソン(Will Vinson)といったシーンを代表する音楽家たちと共演を重ね、2018年に初のリーダー作『Roads Diverge』をリリースした。

Noam Wiesenberg – double bass
Philip Dizack – trumpet
Charles Altura – guitar
Mike King – piano
Kush Abadey – drums

Guest :
Melissa Aldana – tenor saxophone (3)

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