奇才レイニエル・バース新譜、これは音楽的サイコパスたちのエキセントリック・パーティーだ

Reinier Baas - Relief Party

オランダのギタリスト/作曲家レイニエル・バース『Relief Party』

オランダのギタリスト、レイニエル・バース(Reinier Baas)の新作『Relief Party』は、まさに奇妙な人々のためのダンス・ミュージックと呼ぶにふさわしい。音楽的サイコパスたちのエキセントリックなパーティーに、ようこそ…。

類は友を呼び、アルバムには世界中から奇才たちが集う。ドラマーのルイス・コール(Louis Cole)にジョナス・バーグウィンケル(Jonas Burgwinkel)、クラリネット奏者ヨリス・ルーロフス(Joris Roelofs)にマリンバ奏者アゴスティーニョ・シケイラ(Agostinho Sequeira)……涼しい顔をした彼らは、どこからともなく湧き上がる内なる情熱をジャズ・アンサンブルの中で表現するが、そのベクトルの向かう先はまるで異次元だ。

ジョナス・バーグウィンケルがほとんど暴力的なドラムを叩く(1)「Wahid Jive」から、ルイス・コールがドラムを叩く(2)「Ol Cole’s Double Time Horn Dance」へのシームレスな移行の演出も堪らない。
続く(3)「Pivot & Swivel」までそれぞれ小品で、インパクト重視のコンセプト・アルバムのような印象を受ける導入だが、そこから先(4)「I Wish I Knew No Astronomy When Stars Appear」以降はそうしたコンセプトの流れを保ちつつもジャズとしてしっかりと聴かせる内容になっている。

3曲目までがストーリーテラー/プロデューサーとしてのレイニエル・バースの凝縮された一面だとしたら、4曲目以降は独特のギターの演奏スタイルと作曲技法を持ち、そして優れたバンドマスターとしての彼の真骨頂だろう。レイニエル・バースが素晴らしい音楽家だと思う所以は、その圧倒的な技巧やサウンドのセンスだけでなく、音楽全体を俯瞰できるプロデューサー的な嗅覚にあると思う。

6弦バンジョーの音色が強く印象に残る(6)「Wild Bill」

再びルイス・コールをドラマーに迎えた(6)「Wild Bill」は本作でもっとも衝撃的な1曲だろう。
チューニングを一般的な6弦ギターに合わせたバンジョーギターの音色と、この曲のみに参加するラトヴィア出身のフルート奏者ケティア・リングア・カラホナ(Ketija Ringa Karahona)、オランダ出身サックス奏者ベン・ヴァン・ゲルダー(Ben van Gelder)が絶妙な絡みを見せ、異様な熱気で盛り立てる。

Reinier Baas 略歴

レイニエス・バースは1985年オランダ生まれのギタリスト/作曲家。2010年にアムステルダム音楽院を最優秀の成績で卒業。2013年の2ndアルバム『Mostly Improvized Indie Music』と2016年作『Reinier Baas vs. Princess Discombobulatrix』はともに名誉あるエジソン賞を受賞している。

Reinier Baas – guitar, banjitar (6), additional instruments
Jonas Burgwinkel – drums
Clemens van der Feen – bass
Kit Downes – piano
Agostinho Sequeira – marimba
Joris Roelofs – clarinets

Featuring :
Louis Cole – drums (2, 6)
Ketija Ringa Karahona – flute (6)
Ben van Gelder – alto saxophone (6)
Chaerin Im – piano (11)
The Bughouse Boy Choir & R3 – backing vocals (11)

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