「ジャズとダブには共通のDNAがある」イタリア発、ダブ・コレクティヴとサックス奏者の衝撃コラボ

Wicked Dub Division & Francesco Bearzatti - Jazz My Dub

Wicked Dub Division & Francesco Bearzatti 『Jazz My Dub』

イタリアのダブ・コレクティヴ、ウィキッド・ダブ・ディヴィジョン(Wicked Dub Division)とジャズサックス奏者フランチェスコ・ベアルザッティ(Francesco Bearzatti)による、驚くようなコラボレーション・アルバム『Jazz My Dub』。即興性を基調としながら、Wicked Dub Divisionの既存曲にベアルザッティのサックスが新たに加わるような形で「探求心・即興・自由」というジャズとダブの“共通のDNA”を探る、実験的なサウンドが面白い。

(1)「A Drop in the Ocean」

このアイディアは2024年冬に行われた実験的なライヴ・パフォーマンスから生まれた。ジャズとダブの予想外の親和性に気づいた彼らは、2025年にスタジオ・レコーディングを敢行。収録曲は8曲すべてがWicked Dub Divisionの過去作に収録された既存曲で、残念ながら新曲は1曲もないが、それらにジャズに根差したフランチェスコ・ベアルザッティのサックスが加わることで、まさに“新たに命が吹き込まれたかのように”活き活きと蘇っている。特に、意識的にアヴァンギャルドなフレーズを奏でる(4)「Bird in Hand」や、極度に歪ませた音色で咆哮をあげる(7)「War」でのプレイは必聴。

Wicked Dub Divisionのシンガー、ミケラ・グレーナ(Michela Grena)の詩と力強いヴォーカルも素晴らしい。彼女の表現はレゲエの伝統に則り、社会正義・人権・反戦・自由・忍耐といった意識的なメッセージが中心となっている。

搾取されるアフリカの大地と人々を描き、身体は奪われても魂と尊厳は守るという強い意志を歌う(2)「Freedom」、1948年の世界人権宣言1を引用しつつ、カタール、コンゴ、ハイチなどの具体的な地名を挙げ、「for few dollars(わずかなドルで)」人々が奴隷化される“現代の奴隷制”の現実を糾弾する(5)「New Slavery」、そして爆撃や戦争の恐怖を描き、平和と愛による革命を呼びかける反戦曲(8)「Roof Knocking」などは強烈な印象を残す。

Wicked Dub Division プロフィール

ウィキッド・ダブ・ディヴィジョンは2005年にイタリアで結成されたダブ・ユニット。結成当初はドラマーのGP EnnasとベーシストのKing Claudioを中心に、サウンドシステム・シーン向けのレコード制作を主軸として活動を開始した。2011年に初のアルバム『Wadada』をリリースした後、2014年にボーカリストのMichela Grenaと、ライブ・ダブ・ミックスを担当するMassimiliano Peakが加入したことで劇的に音楽性を進化させた。
彼らのサウンドは伝統的なルーツ・レゲエやダブの重厚な低音を基盤としつつ、催眠的かつ攻撃的なビートを融合させた実験的なアプローチを特徴とする。イタリア国内のみならず、ヨーロッパ各地のレゲエ・フェスティバルで高い評価を得ており、現代ダブ・シーンを牽引する存在だ。

Francesco Bearzatti プロフィール

フランチェスコ・ベアルザッティは、1966年イタリア・ポルデノーネ生まれのジャズ・サックス奏者。テナーサックス、ソプラノサックス、クラリネットを操り、エレクトロニクスも駆使する独創性で知られる。これまでにフランスの「Django d’Or」最優秀欧州ミュージシャン賞や、イタリアの「Top Jazz」最優秀アーティスト賞など、数多くの栄誉に輝いている。

Francesco Bearzatti – saxophone
Michela Grena – vocal
King Claudio – bass
GP Ennas – drums
Peak (Massimiliano Peak) – keyboards, dub effects

  1. 世界人権宣言(Universal Declaration of Human Rights, 略称:UDHR)…1948年に国連で採択された「すべての人間は生まれながらに自由で平等な尊厳と権利を持つ」ことを定めた国際的な基本原則。30の条文で構成され、基本的人権、自由、差別禁止、社会・経済・政治的権利を掲げ、世界平和の基礎として全ての国が達成すべき共通基準を示している。
    日本は1979年に「国際人権規約(社会権・自由権)」を批准し、この宣言を国内法に準ずる法規範として位置づけた。  ↩︎

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