ウードとピアノを中心に描く、まだ名前のない中東ジャズ。Caifas『Open Letter』

Caifás - Open Letter

Caifás 8年越しの初アルバム『Open Letter』

イスラエルのピアニスト、ニムロッド・エルダー(Nimrod Eldar)とウード奏者エリラン・スウィッサ(Eliran Swissa)を中心とするグループ、カイファス(Caifas)が初のフルアルバム『Open Letter』をリリースした。ピアノとウードを中心に、ドラムスやベース、フルートなどの編成で彩った中東〜地中海ジャズ。

二人が出会ったのは2018年頃、エルサレムの音楽院でのことだった。アラブ/アンダルシア音楽をバックグラウンドに持つスウィッサは、ダファー・ユーセフやイブラヒム・マアルーフ、エジプト音楽の巨匠モハメド・アブデル・ワハーブらの音楽をエルダーに紹介。一方、エルダーからスウィッサへは西洋クラシックやジャズ、フュージョンなどが持ち込まれた。異なる音楽的背景を持つ二人の交流はやがて作曲へ発展し、現在まで続くCaifasの核となった。

『Open Letter』は、その出会いからおよそ8年を経て完成した全11曲、約69分の初のフルレンス・アルバムだ。

収録曲の一部はCaifasの最初期まで遡る。(6)「Bilbi」、(4)「Inte Arabi」は二人が活動を始めた頃に生まれた楽曲で、(1)「Sheleg」も少なくとも2021年にはライヴで演奏されていた。また、2022年のEP『The Meggido Sessions』に収録されていた(5)「Layali」、(3)「Gidalti Sabim」も、新録と思われる新たなヴァージョンで再び収録されている。さらに2024年から2025年にかけて発表された(2)「Kiosko」、(9)「Open Letter」、(10)「Golden」、(11)「For the Birds」なども加わった。そのため本作は、単に2026年に制作された新曲をまとめたアルバムというより、Caifasがこれまで育ててきた音楽を一枚に集約した作品と捉える方が実態に近いだろう。

(1)「Sheleg」

サウンドの中心にあるのは、エルダーのピアノとスウィッサのウード。そこにアラブ音楽やアンダルシア音楽の旋律・リズム、現代ジャズの即興、ロックやフュージョンの力強いグルーヴが交差する。なかでも10分を超える「Inte Arabi」や9分を超える「Bilbi」では、異なる音楽語法を継ぎ合わせるのではなく、それらを最初から一つの音楽として扱ってきたCaifasならではの感覚がよく表れている。

私がムジカテーハで2023年に『The Meggido Sessions』を最初に紹介した際、「EPのボリュームでは物足りない。フルアルバムの発信が待ち遠しい」と書いた。それから3年が経ち、初期から演奏してきた楽曲と、その後に生まれた作品を含む約69分の今作は、その期待に十分に応えてくれるものだ。

中東の伝統音楽とジャズの融合という試み自体は、いまや決して珍しいものではない。しかしCaifasの場合、その出発点にあるのはジャンルを掛け合わせる発想ではなく、異なる音楽を聴いて育った二人が出会い、互いの知る音楽を教え合ったことだった。その関係が長い時間をかけて一つのアルバムに結実したことこそ、『Open Letter』の大きな魅力だ。

(6)「Bilbi」

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