- 2023-02-05
- 2023-02-05
故郷を失くしたユダヤのピアニストが描き出す、行き場のない怒りと悲しみに満ちたジャズ
イスラエル出身、現在はデンマークを拠点に活動するピアニスト/作曲家エヤル・ラヴェット(Eyal Lovett)の4thアルバム『Through the Rain』。感傷を運ぶ媒体としての音楽の役割を最高のレベルで体現した、アーティストの感性と表現力がリスナーの想像力を強く刺激する傑作だ。
イスラエル出身、現在はデンマークを拠点に活動するピアニスト/作曲家エヤル・ラヴェット(Eyal Lovett)の4thアルバム『Through the Rain』。感傷を運ぶ媒体としての音楽の役割を最高のレベルで体現した、アーティストの感性と表現力がリスナーの想像力を強く刺激する傑作だ。
ベースの名手として知られるトルコの音楽家キャミル・エルデム(Kamil Erdem)の新作『Interactions』は、楽器をベースからクラシックギターに持ち替え、ウードとパーカッションとのトリオで演じる、魅力に満ちたオリエンタル・ジャズ作品だ。
ブラジル・ミナスジェライスの若手音楽家たちの作品に頻繁にクレジットされる二人──ピアニスト/作曲家のルイーザ・ミトリ(Luísa Mitre)と、打楽器/ヴィブラフォン奏者のナタリア・ミトリ(Natália Mitre)姉妹が、デュオ“Duo Mitre”としての初のアルバム『Seiva』をリリースした。ジャズ、クラシック、そしてブラジルの伝統音楽の要素が瑞々しい感性でまとめ上げられており、二人の幼い頃からの精神的な強い絆も感じさせてくれる素晴らしい作品に仕上がっている。
ポーランドの若手ヴィブラフォン奏者、マルチン・パテル(Marcin Pater)が自身のトリオに加えピアニストのレシェック・モジジェルと、さらに数曲でギタリストのヤコブ・ミゼラッツキを再びゲストに迎えた2022年新譜『Between』。ヴィブラフォンの魅力である宝石のように美しい音色、蝶が舞うような速いパッセージ、長いサステインを利用した空間的な表現などジャズ・ヴィブラフォンの魅力も詰まった素晴らしい作品だ。
ピアニスト/作曲家のエフゲニー・アブラモフ(Evgeny Abramov)率いるモスクワのエスノ・ジャズ・カルテット、Sakhraのデビュー作 『Rise in Bedia』が素晴らしい。それぞれが高度な技巧をもつピアノトリオ+木管の4人のアンサンブルを中心に、民族楽器や電子楽器を塗したワールド・コンテンポラリーなジャズだ。
アルゼンチン出身のヴィオラ・ダ・ガンバ奏者/シンガーのルシアーナ・エリゾンド(Lucíana Elizondo)がイタリアの教会で録音した『Cantos De Amor Y De Ausencia』。カンターレ・オール・ヴィオラ=“ヴィオラで歌う”というルネサンス時代の忘れられた伝統を蘇らせた現代最高峰のヴィオラ・ダ・ガンバ奏者と評される彼女の音楽の魅力が凝縮された、美しい作品に仕上がっている。
コロンビア出身のピアニスト/作曲家ヘスス・モリーナ(Jesús Molina)が2022年に新たに送り出した作品が、韓国出身のチェリストHAEINSANEとの極上のデュオ作品『Cello Stories』だ。今作はサウンド面の派手さは一切なく、ピアノとチェロのアコースティックなデュオとなっており、シンセサイザーも駆使しながら超絶技巧的表現を次々と繰り出すヘスス・モリーナのイメージからすると意外性に満ちた内容となっている。
スナーキー・パピーの中心人物である二人、ベーシストのマイケル・リーグ(Michael League)と鍵盤奏者のビル・ローレンス(Bill Laurance)のデュオ作がドイツの名門レーベルACTからリリースされた。北アフリカやトルコなどの地中海沿岸地域の音楽への傾倒を強めるマイケル・リーグらしく、今作はウードやフレットレス・ギターを用いるなどスナーキー・パピーとはまた異なるアプローチが全面的に押し出された魅力的な作品となっており、『Where You Wish You Were』というタイトルからも遠い異国の地や文化、まだ聴いたことのない音楽に対する彼らの強い好奇心が窺える内容となっている。
北アフリカのチュニジアに生まれ、アラブ世界の伝統音楽と西洋音楽、特にジャズとの融合に挑戦し続けるウード奏者/ヴォーカリストのダファー・ヨーゼフ(Dhafer Youssef)の新譜『Street of Minarets』がリリースされた。まさしく唯一無二のスタイルを武器に、まだ誰も歩んでいない音楽の道を進み続けてきた彼が辿り着いた最高峰だと断言できる素晴らしい作品で、ぜひ多くの人にこの驚異的な音楽を体験してほしいと思う。
キューバのピアニストのオマール・ソーサ(Omar Sosa)と、ブラジルのシンガーソングライター/ギタリストのチガナ・サンタナ(Tiganá Santana)のデュオ・アルバム『Iroko』は、世界的にも稀に見る才能を持つ二人の音楽家による深淵な語らいが垣間見える傑出した作品だ。
ポルトガル出身のシンガー/鍵盤奏者アンテラ(Antera)とブラジル出身のギター奏者フェリペ・マットス(Filipe Mattos)がベルリンで出会い誕生したユニット、オルフェリア(Orfélia)初のフルレンス・アルバム『Tudo o Que Move』。両国の伝統的なリズムとサイケデリアが混ざり合い、絶妙な浮遊感のある夢心地のサウンドが展開される。
ユダヤ系のディアスポラである4人のメンバーで構成されたカナダのバンド、ブラック・オックス・オーケスター(Black Ox Orkestar)が実に15年ぶりとなる新作『Everything Returns』をリリースした。バンドは2000年にモントリオールで結成され、2006年までに2枚のアルバムをリリースしていたが同年に解散。今作は2021年に再結成されてから最初の作品となる。
インドネシアを代表するギタリスト、トーパティ(Tohpati)の最新アコースティック・アルバム『True Love』。柔らかなガットギターを中心とした聴き心地の良いジャズで、リラックスしたいときや、作業に集中するためのBGMとしても重宝する作品だ。
三重・鳥羽に伝わる海女の物語が、彼らに音楽的なインスピレーションを与えた。イタリアのトロンボーン奏者、ジャンルカ・ペトレッラ(Gianluca Petrella) が率いるコズミック・ルネッサンス(Cosmic Renaissance)による新作『Universal Language』は、今も続く日本の伝統漁に感化されている。