フレンチ・ジャズを牽引してきたベーシスト、アンリ・テキシエ75歳の絶品新譜

Henri Texier - Chance

アンリ・テキシエ新譜『Chance』

フレンチ・ジャズを牽引してきたベーシスト、アンリ・テキシエ(Henri Texier)。彼は1945年生まれだから、御年75歳。2020年の最新作『Chance』はそんな年齢を感じさせない、エネルギーに満ちたヨーロッパ・ジャズの今年を代表する一枚になりそうな作品だった。

バンドは息子セバスチャン・テキシエ(Sebastien Texier, as, cl)を含む5人編成で、全8曲中4曲がアンリ・テキシエ作曲、残り4曲は他のバンドメンバーがそれぞれが作曲した1曲ずつを持ち寄っていて、それぞれ個性的で面白い。

セバスチャン・テキシエ作曲の(1)「Cinecitta」はフランスのジャズらしい3拍子の叙情的な曲。

叙情的な美メロに痺れる(1)「Cinecitta」

(2)「Jungle Jig」はおそらくは本作のサウンド面に“若さ”を加えているであろうギタリストのマヌ・コジア(Manu Codjia)の作曲。彼のギタープレイは往年のジャズギタリストのようなクリーントーンではなく、近年の主流であるロックやアヴァンギャルドの流れを受けた攻めた演奏で、全曲を通してこのアルバムの中でも特に際立っている。

ベースのソロで披露されるブルージーな小品(7)「Standing Horse」は、“フレンチ・ミンガス”と形容されたアンリ・テキシエの真骨頂だ。この演奏からはその高齢を全く感じさせない、ある種挑戦的な気迫が漂ってくる。

このアルバムは全編を通して、尖り過ぎてもいない、かといってつまらないものでもない、本当に絶妙なバランスで成り立っている。
リーダーであるアンリ・テキシエのベースは主張が激しいわけでもなく、バランサーとしての役割を完璧に果たしている。これは1960年代からジャズの表舞台に登場し、メインストリームのジャズのみならずフリージャズもアヴァンギャルドもプログレも飲み込んできた彼の経験の為せるわざの結晶なのかもしれない。

Henri Texier – contrabass
Sebastien Texier – alto saxophone, clarinet, alto clarinet
Vincent Le Quang – tenor saxophone, soprano saxophone
Manu Codjia – guitar
Gautier Garrigue – drums

Henri Texier - Chance
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