アフロ・キューバンと地中海周辺音楽の豊かな出会い。ジョエル・イエレスエロ新譜『Cimarron』

Joel Hierrezuelo - Cimarron

キューバ出身の多才な音楽家ジョエル・イエレスエロ 3rdアルバム

キューバ・ハバナ出身、フランス在住のギタリスト/打楽器奏者/ヴォーカリスト/作曲家ジョエル・イエレスエロ(Joel Hierrezuelo)による2022年新譜『Cimarron』は、ラテン音楽、特にキューバの伝統的なリズムに加え、アフリカや中東音楽のエッセンスも感じられるとてもエキサイティングなジャズだ。

1972年にハバナで生まれ、これまでにロベルト・フォンセカやオマーラ・ポルトゥオンドらキューバの一流ミュージシャンの活動を支えてきた彼自身の音楽は、キューバ出身のジャズ・ミュージシャンと聞いて想像する音楽とは一線を画す多様性を示している。ギターとパーカッションを演奏し、スピリチュアルな歌声を響かせ、変拍子も多用し、ラテンの陽気さよりも思慮深さや繊細さを感じさせるサウンドには多彩な文化からの影響が窺える。
それもそのはず、調べてみるとこれまで彼は前述のようなキューバ人アーティストとの仕事以外にも、2000年前後にアルジェリアのシンガーであるハミドゥ(Hamidou)とデュオで活動したり、2017年にマリの伝説的夫婦デュオアマドゥ & マリアム(Amadou & Mariam)の世界中を巡るツアーに帯同したり、その後もシリア系のフルート奏者ナイサム・ジャラル(Naïssam Jalal)と共演したり、イスラエル・ジャズの中心人物であるピアニストのヨナタン・アヴィシャイ(Yonathan Avishai)らとアルバムを制作したりと国際色豊かな、かつ現代ジャズの最前線で活躍する幅広い人脈を築いている。そうした経験が今作の広くグローバルに開かれた音楽を作っているのだろう。

アフロ・キューバンなリズムを持ちながら、イスラエル・ジャズ的なエキゾ感をもつ(2)「Cimarron」

バンドにはブラジル生まれのピアニストのレオナルド・モンタナ(Leonardo Montana)、ゴンサロ・ルバルカバとの活動で知られるベーシストのフェリペ・カブレラ(Felipe Cabrera)、イタリア出身人気ピアニストのジョヴァンニ・ミラバッシのトリオで活躍したドラマー、ルクミル・ペレス(Lukmil Pérez)、さまざまなグループで活躍するトランペッターのシルヴァン・ゴンタール(Sylvain Gontard)、そしてフランス生まれながらインドや中東の伝統音楽を深く学んだフルート(横笛)奏者のシルヴァン・バロウ(Sylvain Barou)といった才能が集う。多くは10年以上ともに音楽を演奏する旧知のメンバーだ。

ジョエル・イエレスエロの音楽は、国籍は違えど同じ価値観をもつ多くの仲間たちと紡ぐ情熱や愛情の結晶のようなものだ。その想いは彼の以下の言葉にも集約されている。

どこの国のものであろうと、芸術は私たちの魂と精神を養う。音楽は私たちにとって、不可欠なものなんだ。

joelhierrezuelo.com

Joel Hierrezuelo – guitar, vocal, percussion
Leonardo Montana – piano
Felipe Cabrera – bass
Lukmil Pérez – drums
Sylvain Gontard – trumpet
Sylvain Barou – flute

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