ジャズ・トランペット異端児ダウド、ヘビロテ必至のデビュー作『GOOD BOY』

daoud - GOOD BOY

モロッコ系フランス人トランペッター、daoud デビュー作

音楽界において“異端児”というのは、最高の褒め言葉だ。
このモロッコ系フランス人のトランペッター、ダウド(daoud)は間違いなくこの言葉が当てはまるミュージシャンだ。
なんの間違いか『GOOD BOY』と題されてしまった彼のデビュー作は、ジャズのなかにヒップホップ、R&Bやサイケロック、エレクトロニックが渾然と混ざり合い、この人物が只者ではなさそうだということがすぐに感じ取れる。

これまでの半生も謎が多い。どうやらリュック・クライン・ベン・アブデスラム(Luc Klein Ben Abdeslam)というのが本名のようだが、彼がこれまでどこで何をしてきたかの情報はあまりない。大人になってからは移動に多くの時間を費やし、スコットランドのエディンバラではホームレスとなり、ツアーを行なっていない間はクラブや葬儀場でも仕事(演奏の?)を行ってきたとも紹介されている。MVからも型破りな人物、という強烈な印象を受ける。

ダウド本人が出演する(9)「Non peut-être」のMVは、どういう人生を歩んできたらこんな映像を撮ろうと思うのか不思議に思えるものだ

ダウドのトランペットは鋭さと温かさを兼ね備えている。そして時にはおどけたようなフレーズで楽しませてくれるが、意外と全ての音がジャズ・トランペッターとして誠実だ。(2)「Oui」での感情の昂るようなアドリブ、(4)「Rugby à 7」での疾走感、ピアノとトランペットでデュオ演奏される(5)「Ficky Stingers」での奔放な自由さ。その異端な佇まいに惑わされるが、表現力も相当に繊細だ。

現代のトランペッターとしてはキーヨン・ハロルド(Keyon Harrold)やシオ・クローカー(Theo Croker)からの影響があるようだ。またフランスのトランペッターの系譜というところでエリック・トラファズ(Erik Truffaz)やイブラヒム・マーロフ(Ibrahim Maalouf)からも影響を受けており、事実後者2名のライヴの前座も務めた経験があるらしい。

今作のバンドはダウドのトランペットのほか、鍵盤とヴィブラフォン、ダブルベース、ドラムスの5人編成を基本とし、曲によってはゲストが加わる形となっている。とりわけピアノからシンセ、オルガンまで弾くエティエンヌ・マンション(Etienne Manchon)と、ヴィブラフォン奏者フェリックス・ロビン(Félix Robin)のプレイには随所で耳を奪われる。

(1)「Ford Focus 1999」

概して野心的かつ先鋭的なサウンドとなっているが、肩肘張ったところはなくアーティスト本人のありのままの強い個性が反映されたような作品。はっきり言って、とても素晴らしい。

daoud – trumpet
Etienne Manchon – piano, Rhodes, synths, Hammond B3
Guillaume Prévost – drums
Félix Robin – vibraphone
Louis Navarro – double bass

Featuring :
Alexandre Galinie – saxophone
Jeanne Le Goff – violin
Estelle Besingrand – cello
Timosha – guitar

daoud - GOOD BOY
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