深い抒情を湛えた最高峰のヨーロッパ・ジャズ! ギター、ダブルベース、バンドネオンで紡がれる詩的な音楽

Yuri Goloubev, Maciek Pysz & Daniele di Bonaventura - Pont De Vie

Yuri Goloubev, Maciek Pysz & Daniele di Bonaventura 『Pont De Vie』

『Pont De Vie』はアコースティックギター、ダブルベース、バンドネオンのトリオ編成という珍しい作品ながら、地中海から北欧まで旅するようなシネマティックな音像が素晴らしく、静かな夜にじっくりと耳を傾けたい作品だ。
演者はポーランド出身のギタリストのマチェク・ピシュ(Maciek Pysz)、ロシア出身のベース奏者ユーリ・ゴルベフ(Yuri Goloubev)、そしてイタリアのバンドネオン奏者ダニエレ・ディ・ボナヴェンチュラ(Daniele di Bonaventura)

リーダーはギターのマチェク・ピシュで、収録曲も多くが彼の作曲だが、演奏はまさに三位一体。3人の“対話”を重視した隅々まで素晴らしいアンサンブル。多くのヨーロッパの一流ジャズ奏者がそうであるように、彼らもまたクラシックを基盤とした精巧な演奏技術と、心の奥底から湧き上がるような情熱的な即興が魅力的だ。

(3)「Flow」

カヴァー曲も2曲収録されている。
ひとつめはフィリップ・サルド(Philippe Sarde, 1948 – )作曲の(4)「La Chanson d’Hélène」で、映画『すぎ去りし日の…』(1970年, 原題:Les choses de la vie)からの選曲。今でも、特にヨーロッパのアーティストによってカヴァーされることの多い名曲だ。聴きどころはなんといっても、冒頭部分のユーリ・ゴルベフの卓越したアルコだ。彼はピッツィカートもおそろしく上手いし、ソロも驚くほど素晴らしいが、このアルコを聴けば彼が2002年にロシアおよびソ連史上最少年で「ロシア功労芸術家」の称号を与えられたことが納得できるだろう。

ふたつめのカヴァーは、なんと南米ブラジルから(5)「Beija Flor」。原曲はサンバの巨匠ネルソン・カヴァキーニョ(Nelson Cavaquinho, 1911 – 1986)作。Beija Florとはハチドリを指すが、サウダーヂに溢れるこの曲をECM風のヨーロッパ・ジャズとして再解釈しており、これがまた本当に美しい。

(5)「Beija Flor」

マチェク・ピシュは2024年に父親を亡くしており、その経験がアルバム全体の精神的な出発点になっている。アルバムタイトル「Pont de Vie」はフランス語で「人生の橋(Bridge of Life)」を意味し、生と死、出会いと別れ、過去と未来をつなぐ「橋」を象徴しています。特に悲しげな短調の(8)「Le Pont de Passage」(通過の橋)は、亡き父への思いから生まれた作品であり、“この世界から次の世界へ渡る橋”というイメージが込められている。

3人のプロフィール

マチェク・ピシュ(Maciek Pysz)は、1982年ポーランド・ルィブニク生まれのギタリスト/作曲家。独学でギターを習得し、ジャズ、クラシック、フラメンコ、タンゴ、ブラジル音楽などを吸収した独自のスタイルを確立した。2003年からロンドンを拠点に活動し、ヨーロッパ各地で演奏。繊細なメロディセンスとアコースティックな響きを重視した作風で知られ、2013年の『Insight』、2015年の『A Journey』、2019年のソロ作『A View』などを発表。近年はフランス、ポーランド、イギリスを行き来しながら国際的な活動を続けている。

ユーリ・ゴルベフ(Yuri Goloubev)は、1972年ロシア・モスクワ生まれのコントラバス奏者/作曲家。モスクワ音楽院で学び、若くしてボリショイ劇場管弦楽団などで活動し、2002年には「ロシア功労芸術家」の称号を授与され、ロシアおよびソ連史上最年少の受賞者となった。2000年代に本格的にジャズへ転向。卓越したアルコ(弓奏)技術と豊かな音色で高く評価され、グゥイラム・シムコック(Gwilym Simcock)、ティム・ガーランド(Tim Garland)、ジョン・ロウ(John Law)ら欧州ジャズ界の第一線で活躍。現在は教育者としても活動し、ヨーロッパの音楽教育機関で後進の指導に携わっている。

ダニエレ・ディ・ボナヴェンチュラ(Daniele di Bonaventura)は、1966年生まれのイタリアを代表するバンドネオン奏者/ピアニスト/作曲家。ジャズ、クラシック、地中海音楽、現代音楽を横断する独自の音楽世界で知られる。トランペッターのパオロ・フレス(Paolo Fresu)との長年の共演で国際的な評価を獲得し、さらにエンリコ・ラヴァ(Enrico Rava)、デイヴ・リーブマン(Dave Liebman)、オリヴァー・レイク(Oliver Lake)、ミロスラフ・ヴィトウス(Miroslav Vitouš)など数多くの名手と共演。深い抒情性と空間を活かした演奏は現代ヨーロッパ・ジャズを代表する存在として高く評価されている。

Yuri Goloubev – double bass (1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12), piano (13)
Maciek Pysz – classical guitar (1, 3, 4, 5, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13), acoustic guitar (2, 6)
Daniele di Bonaventura – bandoneon (1, 3, 5, 6, 8, 9, 12), piano (2, 4, 11)

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