Música Terra が選ぶ 2024年ベストアルバムTOP10【lessthanpanda編】

2024 best album

私がこの1年間でもっとも感銘を受けた音楽作品を10枚、選びました。
このリストは広く安心や共感を呼ぶものではないかも知れませんが、間違いなく刺激的で、好奇心をくすぐる世界の音楽への扉を開くものとなっているはずです。

① What will be the end with us / Pinhas & Sons(イスラエル)

今年もっとも聴いたアルバムは、その遊び心溢れるユニークな個性、作編曲における音楽性の高さ、バンドの演奏力の高さなどの点において、現代最高峰のバンドといえるピンハス&サンズ(Pinhas & Sons)の2018年以来となる待望のアルバムです。音楽や表現への純粋な探求心と、彼らの生活環境を取り巻く異常な事態へのやるせない想いが複雑に交叉した、驚くべき作品です。

「 30 מקומות להיות בהם לפני שאתה מת」(死ぬまでに行きたい30の場所)

「צניחה חופשית」(自由落下)のライヴ演奏。編曲は細部まで素晴らしい

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② A Dos / Lau Noah(スペイン)

スペイン・カタルーニャ出身の女性SSW/ギタリストのラウ・ノア(Lau Noah)が、ジェイコブ・コリアー、ホルヘ・ドレクスレル、シルビア・ペレス・クルス、クリス・シーレ、セシル・マクロリン・サルヴァント、サルヴァドール・ソブラルといった世界中の一流音楽家たちと作り上げたシンプルなようでいて複雑な色合いを持った大傑作。

アメリカーナを代表するマンドリン奏者、クリス・シーレとラウ・ノアの共演「Lesser Men Would Call It Love」

ウルグアイの巨匠ホルヘ・ドレクスレルとの共演「Libertad」。なんと美しいメロディー…

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③ Vari / Varijashree Venugopal(インド)

インド出身の歌手ヴァリジャシュリー・ヴェヌゴパル(Varijashree Venugopal)の新作。プロデュースはスナーキー・パピーのマイケル・リーグ!インド音楽の伝統的な歌唱法が、過去のものとも未来のものとも判別のつかない素晴らしいサウンドに溶け込み、神秘的な世界観を醸し出す。聴いていて精神が研ぎ澄まされるような、途轍もない作品です。

「Ranjani」には米国のバンジョー奏者ベラ・フレック(Béla Fleck)も参加

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④ Terre Rouge / Lubiana(ベルギー/カメルーン)

カメルーン人とベルギー人の両親のもとに生まれた女性SSW/コラ奏者のルビアナ(Lubiana)。彼女が幼少期から毎年家族とともに訪れた父の故郷アフリカ・カメルーンの真っ赤な大地の記憶を、コラの繊細な音に乗せて歌っていく。豊かな感受性で歌われる、望郷や憧憬の想いが詰まった素晴らしいアルバムです。

アフリカの女性たちへの美しい讃歌「Farafina Mousso」

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⑤ De camino al camino / Rita Payes(スペイン)

バルセロナの少年少女楽団、サン・アンドレウ・ジャズバンド出身のSSW/トロンボーン奏者リタ・パイエス(Rita Payes)は近年ますますその個性を強め、急速に音楽性を充実させています。この最新作では、前作『Como la Piel』でも少し顔を覗かせていたダーク・ファンタジーな世界観へとより舵を切っており、ジャズ、カタルーニャ音楽、フラメンコ、クラシックなどが彼女のフィルターを通して織りなす複雑な色彩のタペストリーを存分に味わうことができます。

フラメンコの伝統と現代的な感性が見事に混ざり合った「Por qué Será」

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⑥ Ladaniva / Ladaniva(アルメニア、フランス)

ヨーロビジョン・ソング・コンテスト2024に出場し一躍有名となったアルメニアのユニット、ラダニヴァ(Ladaniva)のアルバムが面白かった。残念ながら優勝とはいきませんでしたが、いつもどおり、毒にも薬にもならないダンス音楽や大仰なバラードだらけの同コンテストの中で彼らの音楽は唯一“国境なきワールド・ミュージック”といった感じで際立っていました。

ユーロビジョン・ソング・コンテスト出場曲「Jako」

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⑦ THE VANDALIST / Noga Erez(イスラエル)

現在のイスラエルでは、アーティストたちは公の場で戦争反対の声を上げることもできません。デビュー当初より祖国の酷い状況への抵抗を創造のエネルギー源としてきたディストピア・ポップのカリスマ、ノガ・エレズ(Noga Erez)の新作は、愛し尊ぶべきもの、美しいものを破壊する者たちへの絶望的な最後通牒のような激しさです。

「PC People」

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⑧ Shams / Amin Al Aiedy(フランス、イラク)

フランス人の母親とイラク人の父親を持つウード奏者/作曲家、アミン・アル・アイディ(Amin Al Aiedy)のデビュー作です。西洋とアラブ、ふたつの文化が同じように存在する環境で育った彼の音楽は所謂“オリエンタル・ジャズ”のグレードを大幅にアップデート。未だかつて経験したことのないような音楽的快感が脳を駆け巡ります。

妙にクセになるアラビックなテーマが印象的な「Bambi」

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⑨ Algodão / Maria João & André Mehmari(ポルトガル、ブラジル)

ポルトガルの歌手マリア・ジョアン(Maria João)と、ブラジルのピアニスト/作曲家アンドレ・メマーリ(André Mehmari)による志向のデュオ・アルバム。表現力が凄まじく、音楽はただのエンターテインメントではなく、芸術なのだと実感させてくれる素晴らしい作品です。

「Duplo Falso Par」。マリア・ジョアンとアンドレ・メマーリの音楽が持つ芸術性は圧巻

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⑩ Small Variations of the Previous Day / Louis Matute(スイス)

スイス出身のギタリスト/作曲家ルイ・マトゥテ(Louis Matute)の第4作目。大西洋〜中南米を旅するようなバラエティ豊かな楽曲群が楽しめる1枚で、レユニオンのマロヤ、カーボベルデのモルナ、ブラジルのサンバやボサノヴァといった音楽的エッセンスをジャズの中に吸収した魅力的なサウンドが繰り広げられています。

複雑なリズムを持つ「Narcissus」のライヴ動画

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