時空を超えた重厚な音楽絵巻。ランベルト・キアンマルギ新作
イタリアン・ジャズの鬼才ピアニスト/作曲家ランベルト・キアンマルギ(Ramberto Ciammarughi)が、欧州ジャズの象徴的存在のトランペット奏者パオロ・フレス(Paolo Fresu)、打楽器アンサンブルのテトラクティス・パーカッシオーニ(Tetraktis Percussioni)、さらに声楽アンサンブルのアドカントゥス合唱団(AdCantus Ensemble Vocale)、ヴォーカリア合唱隊(Vocalia Consort)から成る大編成を率い録音した圧巻の新譜『Intramontes』。ラテン語で山の間を意味するが、その山々を抜けて、さらにその奥に広がる空間も意味するタイトルの通り、刺激的で示唆に富む音響が広がる作品だ。
聖書に強く感化された古楽から、魔法のような複数のエレクトリック・ギターが絡み合う現代音楽/プログレ感、ジャズに代表される現代的な即興音楽などが混淆するサウンドに、時空の中で迷子になった感覚さえ覚えさせられる。そして、その時空の真ん中を鋭く切り裂くパオロ・フレスのトランペット。それは過冷却水を一瞬で凍らせる外部刺激のようであり、ときにヤン・ガルバレク(Jan Garbarek)とヒリヤード・アンサンブル(Hilliard Ensemble)による名盤『Officium』を思い起こさせる。
このプロジェクトの構想に、当初はトランペットのパオロ・フレスは含まれていなかったという。2017年に上演された60人のステージで演奏するための作品に、さらにその創造性を拡げられる可能性を感じたランベルト・キアンマルギがパオロ・フレスに参加を打診。彼は熱意をもってオファーを受け入れ、音楽の中に存在する“間”を埋めるように即興演奏を重ねていった。その結果は、ジャズや現代音楽のアーティスティックな文脈で深く考察する対象作品のリストに加えるべきものとなっていることは間違いない。
今作のリード・トラックは(5)「One word free Us」だ。繰り返される一定のコード進行の中でワントーンで歌う合唱団が力強く自由を讃え、後半部では3本のエレキギターが人力エコーのような魅力的な表現手法で物語を彩っている。
Ramberto Ciammarughi 略歴
ピアニスト/作曲家のランベルト・キアンマルギは1980年代初頭に音楽家としてのキャリアをスタートし、数多くのイタリアのジャズ クラブでソロやトリオで演奏してきた。ランディ・ブレッカー、ビリー・コブハム、スティーブ・グロスマン、ジョン・クラーク、ディー・ディー・ブリッジウォーター、ヴィニー・カリウタ、ジミー・オーウェンズなど、国際的に有名なアーティストたちとステージやレコーディング・スタジオで活動を共にした。
セッション・ミュージシャンとしてだけでなく、彼は演劇や視覚芸術のサウンドトラックの作曲家/編曲家としても才能を発揮。今作における多角的な創造性はこうした経験から培われた。
Ramberto Ciammarughi – piano
Paolo Fresu – trumpet
Tetraktis Percussioni :
Gianni Maestrucci – percussion
Leonardo Ramadori – percussion
Paolo Pasqualin – percussion
Ensemble Novamusica :
Francesco D’Oronzo – guitar
Angelo Lazzeri – guitar
Samuele Martinelli – guitar
Stefano Mora – bass, cello
AdCantus Ensemble Vocale & Vocalia Consort :
Francesco Corrias – conductor