インドネシア出身、カンボジアで存在感を高めるシンガーの初アルバム
インドネシアの首都ジャカルタの貧しい家庭に生まれ、ジャズ・シンガーとしての道を歩み、現在はカンボジアを拠点に活動するインタン・アンドリアナ(Intan Andriana)が、初のアルバムとなる『My Life in Jazz』をリリースした。音楽性はオーソドックスなジャズのスタイルを基本としつつ、マヌーシュ・スウィングなどの要素も加える。アルバムにはオリジナル曲に加え、インドネシアの名曲(5)「Bengawan Solo」なども取り上げるなど、インドネシアとカンボジアという二つの文化的ルーツを結ぶ象徴的な内容に仕上げている。
制作の中心を担ったのは、フランス人ピアニスト/アレンジャーのフィリップ・ジャヴェル(Philippe Javelle)。ほかにもフランス出身のギタリスト、クリストフ・アストルフィ(Christophe Astolfi)やオーストラリア出身のフリューゲルホルン奏者キャメロン・スミス(Cameron Smith)、香港出身のヴァイオリン奏者シャロン・ルイ(Sharon Lui)など多国籍のミュージシャンが参加し、英語、インドネシア語、フランス語、そしてクメール語と、さまざまな言葉が一枚の作品の中で自然につながっていく。なかでもカンボジアのシンガー、ドゥック・ソクンテア(Duk Sokunthea)とのデュエットによるインドネシア民謡(5)「Bengawan Solo」は、このアルバムを象徴する一曲だろう。
派手さはないが、人のぬくもりが先に伝わってくる作品だ。異なる文化や言語が無理なく寄り添い、一人のシンガーが歩んできた人生が、そのまま音楽になっている。そんな素朴な魅力を、最後まで心地よく味わえる一枚だ。
Intan Andriana プロフィール
インタン・アンドリアナは、インドネシア出身のジャズシンガー。家庭は経済的には恵まれていなかったが、母はギターを弾くなど、音楽好きの一家だった。17歳のころ、カフェで歌ったのがプロ歌手としての最初の仕事で、ギャラは5ドルだったという。20代前半の頃、ジャカルタの五つ星ホテルのラウンジ・オーディションを受ける機会があり、そこではジャズやボサノヴァを歌えるシンガーが求められていた。当時彼女はジャズをほとんど知らず、ダブルベース奏者に教わることで学んでいき、その過程でジャズが大好きになったという。
2010年代後半にカンボジアを拠点を移し、プノンペンやシェムリアップのジャズシーンで長年にわたり歌い続けてきた。教育機関での音楽教育をまったく受けていないことが自身のコンプレックスだったというが、カンボジアのアーティストたちはそんな彼女に演奏や理論、アレンジなどを惜しみなく教えてくれたという。また、駅で演奏するミュージシャンからはジプシー・ジャズも学ぶなどし、現在の幅広いスタイルを取り入れた表現力豊かな歌唱が持ち味となっていった。
これまでにイタリアを代表するジャズ・ピアニスト、ジョヴァンニ・ミラバッシ(Giovanni Mirabassi)のアジア・ツアーで共演するなど、国際的なジャズ・ミュージシャンとの交流も重ねてきた。現在はこうした活動を通じて、東南アジアのジャズ・シーンにおける存在感を着実に高めている。
2026年には初のフル・アルバム『My Life in Jazz』を発表。フランス人ピアニスト/作編曲家フィリップ・ジャヴェル(Philippe Javelle)を中心とする国際色豊かなミュージシャンと制作され、自身の人生、ジャズとの出会い、カンボジアでの暮らし、そして母親となった経験を題材にしたパーソナルな作品となった。
温かく親密な歌声と、聴き手に寄り添う自然体の表現は、派手な技巧よりも物語性や人間味を重視するスタイルとして高く評価されている。東南アジアのジャズ・シーンに根差しながら、多様な文化や言語を包み込むその音楽は、国境を越えて人々を結びつけるジャズの魅力を体現している。
Intan Andriana – vocals
Christophe Astolfi – guitar
Gaby Courroux – guitar, banjo
Toma Willen – drums
Darvel Martinez – upright bass, trombone
Daisuke Yasukoshi – upright bass
Sharon Lui – violin
Steve Cannon – trumpet
Raphaël Biamonti – tenor saxophone
Cameron Smith – flugelhorn
Andrey Meshcheryakov – fretless bass
Philippe Javelle – piano, clarinet, percussion, alto saxophone, accordion