Mauricio Morales & Adam Hersh『Between Dreams & Twilight』
メキシコ出身で現在はロサンゼルスを拠点に活動するベーシスト/作曲家マウリシオ・モラレス(Mauricio Morales)と、アメリカ合衆国出身のピアニスト/作曲家アダム・ハーシュ(Adam Hersh)による初の共作アルバム『Between Dreams & Twilight』。2025年11月に発表された本作には、ギタリストのマイク・モレノ(Mike Moreno)、ヴィブラフォン奏者のウォーレン・ウルフ(Warren Wolf)、そしてドラマーのゲイリー・ノヴァク(Gary Novak)に加え、ストリングス・アンサンブルのローグ・レモン・コレクティヴ(Rogue Lemon Collective)も参加している。
マウリシオ・モラレスとアダム・ハーシュが出会ったのは2021年。ロサンゼルスでのライヴをきっかけに交流を深め、やがて一緒に演奏や作曲を行うようになった。今作は9曲のうち3曲をモラレス、3曲をハーシュが作曲し、残る3曲は2人の共作。個々の作曲家としての個性と、共同作業による音楽性の両方を聴くことができる。
音楽的な背景として特に興味深いのが巨匠ウェイン・ショーター(Wayne Shorter, 1933 – 2023)の存在だ。アダム・ハーシュはショーターの『High Life』(1995年)を全曲採譜するほど研究しており、本作にはその影響が色濃く表れている。(3)「Low Life」はその象徴ともいえる曲で、タイトルからして『High Life』への遊び心ある返答だ。一方、モラレスはパット・メシーニ(Pat Metheny)やアラン・ホールズワース(Allan Holdsworth)らからも影響を受けており、複雑なリズムやフュージョン的な要素が随所に現れる。
ジャズ・コンボに弦楽四重奏を加えた編成も本作の大きな特徴。ピアノ、ベース、ギター、ヴィブラフォン、ドラムスという楽器の組み合わせにストリングスが加わることで、音楽には室内楽的な響きが生まれている。マイク・モレノのギターやウォーレン・ウルフのヴィブラフォンも、こうしたアンサンブルの中で効果的に使われている。
収録曲のテーマも幅広い。(1)「EURYBIA」はギリシャ神話、(2)「Reminiscence」は記憶、(4)「Cosmic River」は宇宙、(6)「Sand From A Broken Hourglass」は時間を題材としている。(5)「Poem To The Red Leaf」はモラレスがプレイしていたあるゲームに登場するミステリー(謎)から着想を得たという。さまざまなイメージをもとに作られた楽曲が並ぶことで、アルバム全体に幻想的な雰囲気が生まれている。
アルバム・タイトルの『Between Dreams & Twilight』には、音楽家として夢を追う一方で、その過程には不確実さや困難もあるという意味が込められているという。
過去のジャズやフュージョンから影響を受けながら、それをそのまま再現するのではなく、ストリングスを含む独自の編成と作曲によって現在の音楽へと落とし込んだ作品。技巧的でありながら過度に難解ではなく、メロディや音色にも耳を傾けながら楽しめる現代ジャズに仕上がっている。
Mauricio Morales & Adam Hersh プロフィール
マウリシオ・モラレスはメキシコ生まれ、LA在住のベーシスト/作曲家/アレンジャー。メキシコでアグスティン・ベルナル(Agustín Bernal)に師事した後、米国のバークリー音楽大学に奨学金で入学し、ジョン・パティトゥッチ(John Patitucci)、エディ・ゴメス(Eddie Gomez)など師事。2018年にLAへ移り、2021年『Luna』、2022年『Eclipse』、2023年『The Endless Ride』、2024年『Seven Days』など多彩なディスコグラフィーを持つ。
アダム・ハーシュはLA在住の鍵盤奏者/作曲家。2020年にシンセをサウンドの軸に据えた『House Roots』でデビューし、2024年には『Tornado Watch』をリリース。ウェイン・ショーター『High Life』の完全トランスクリプションや、アラン・ホールズワース作品のプロジェクトも手掛ける。
Mauricio Morales – double bass
Adam Hersh – piano
Warren Wolf – vibraphone
Mike Moreno – guitar
Gary Novak – drums
Rogue Lemon Collective :
Eleanor Dunbar – violin
Megan Shung – violin
Rita Andrade – viola
Zack Reaves – cello