Sheen Trio 『Transitory』
イラン出身のクラリネット奏者シャブナム・パルヴァレシュ(Shabnam Parvaresh)率いる実験的ジャズトリオ、シーン・トリオ(Sheen Trio)の新譜『Transitory』が面白い。イギリス出身のギタリスト、ウラ・マーティン=エリス(Ula Martyn-Ellis)と、ドイツ出身ドラマーのフィリップ・ブック(Philipp Buck)という国籍や文化を超えたトリオで、構造的な側面と即興的な側面を自在に行き来し、不安定な現代社会の混乱と、それでも未来へと向かう希望のエネルギーを象徴するような音楽を奏でる。
冒頭(1)「Transitory」が、もうめちゃくちゃかっこいい。複雑なリズムに融け込む荒々しいギター、叫ぶようなバスクラリネット。リズムだけでなく“場”を支配するドラムス。3人は対等に、複雑にもつれ合いながら時間という連続した糸を手繰ってゆく。そこにあるのは、類稀な“創造性”以外の何物でもない。
1983年イラン・テヘラン生まれのシャブナム・パルヴァレシュは、テヘラン音楽大学でクラシックを学び、テヘラン交響楽団やイラン国立伝統音楽オーケストラで活動した後、2014年にドイツへ移住。オスナブリュック音楽大学でジャズを学び、ペルシャ音楽の旋法と前衛ジャズ、自由即興を融合した独自のスタイルを確立した。そんな彼女が今作に込めた想いは、故郷イランでは自由を求めて闘う人々がいる一方で、大国をはじめとした世界中の民主主義や社会秩序が揺らぐ現実だ。彼女の故郷が今もっともそうであるように、世界は不安定で常に変容している。そうしたイメージを、この混沌とした音楽の中に重ね、そんな中から生まれる一瞬の美しさに“儚い希望”を見出す。
Shabnam Parvaresh – clarinet, bass clarinet, FX
Ula Martyn-Ellis – electric guitar
Philipp Buck – drums