アンソニー・ファングによる“共通言語”の探求
カナダ出身のドラマー/作曲家アンソニー・ファング(Anthony Fung)の7枚目のリーダー作『Common Language』。彼の従来の作品で見られたホーン主体のコンテンポラリー・ジャズから一歩進み、ギタートリオという極めてシンプルな編成を軸に据え、ジャズの本質である“共通言語”、つまり言葉ではなく即興演奏による相互理解を追求している。
コアトリオには米国フロリダ州出身のギター奏者アンドリュー・レンフロウ(Andrew Renfroe)、イタリア出身のベース奏者ルカ・アレマンノ(Luca Alemanno)が参加しており、この3人での創造的かつ、丁々発止のエキサイティングなせめぎ合いが実に魅力的だ。
6分に及ぶオープニングの(1)「Contemplation」(熟考)は、タイトルどおり瞑想的な雰囲気で始まり、ギター・トリオならではの繊細さと大胆さが同居した密な演奏で聴きごたえも抜群。
アンソニー・ファングのドラムスの躍動感際立つ(3)「Duid Deed」、サックス奏者デイナ・スティーヴンス(Dayna Stephens)とシンセサイザー奏者ハビエル・サンティアゴ(Javier Santiago)がゲスト参加する(4)「Miyako」、さらにはスウェーデン出身のピアニスト、ヨエル・リュサリデス(Joel Lyssarides)がハモンドオルガンを演奏する(5)「Creepin’」などなど、どの曲もスリリングで気持ちいい演奏がつづく。
個人的には、アンソニー・ファングのドラムスの推進力はもちろん、そこに乗るアンドリュー・レンフロウのギターの音色の選択とフレージング、そしてルカ・アレマンノの普段は低音奏者としての役割を果たしながらソロでは卓越した技力を誇示する演奏が、本当に大好きだ。
Anthony Fung プロフィール
アンソニー・ファングはカナダ・オンタリオ州リッチモンドヒル出身のドラマー/作曲家/プロデューサー/バンドリーダー。中国系移民をルーツとする家庭に育ち、10歳でドラムスを始め、現在はアメリカ・ロサンゼルスを拠点に活動している。現代ジャズ・シーンを代表する若手ドラマーの一人として高く評価され、緻密なアンサンブル感覚と豊かな作曲能力を兼ね備えたミュージシャンとして国際的な注目を集めている。
バークリー音楽大学で学士号と修士号を取得し、在学中はダニーロ・ペレスが率いるBerklee Global Jazz Instituteに所属。その後、Herbie Hancock Institute of Jazz Performance(旧Thelonious Monk Institute of Jazz Performance)に進み、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、ビリー・チャイルズ、クリス・ポッターら世界屈指のジャズ・ミュージシャンのもとで研鑽を積んだ。
これまでにモントリオール・ジャズ・フェスティバル、モントレー・ジャズ・フェスティバル、トロント・ジャズ・フェスティバル、パナマ・ジャズ・フェスティバル、International Jazz Dayなど世界各地の主要フェスティバルへ出演。ダニーロ・ペレス、ウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、ジョン・パティトゥッチ、ジョー・ロヴァーノ、ミゲル・ゼノン、テラス・マーティン、エスペランサ・スポルディングら、現代ジャズを代表する音楽家との共演歴を誇る。
リーダー作品としては、デビュー作『Chronicles』(2014)を皮切りに、『Flashpoint』(2018)、『What Does It Mean to Be Free?』(2022)、『FO(U)RTH』(2023)、『NEW WORLD EP』(2024)、そしてギター・トリオ作品『Common Language』(2026)を発表。『Flashpoint』はDownBeat誌で4つ星を獲得し、「Best Albums of 2019 & 2020」に選出されるなど高い評価を受けた。作品ごとにホーン・アンサンブル、ストリングス、エレクトロニクス、ヴォーカルなど多彩な編成へ挑戦しながら、近年は即興的な対話を重視した親密なアンサンブルへと表現の幅を広げている。
Anthony Fung – drums
Andrew Renfroe – guitar
Luca Alemanno – bass
Guests :
Dayna Stephens – tenor saxophone (4)
Javier Santiago – synthesizers (4)
Joel Lyssarides – Hammond organ (5)