島田さゆり&ヒタ・マリア 注目の多国籍カルテットが奏でる至高のオーガニックJAZZ

Rita Maria & Sayuri Shimada - Joy

多国籍カルテットによる極上のジャズ・スキャット・アルバム

東京出身の若手ベーシスト、島田さゆり(Sayuri Shimada)と、ポルトガル出身のジャズシンガー、ヒタ・マリア(Rita Maria)との双頭名義のアルバム『Joy』はナチュラル&オーガニックなサウンドが魅力的な素晴らしいジャズ作品だ。中南米音楽の影響も強く、ジャズファンのみならず近年のブラジル・アルゼンチン界隈の新世代ジャズが好きな方は必聴。

楽器のようにスキャットを操るヴォーカルのヒタ・マリア(Rita Maria)に、マイルドで安定感のあるプレイが特長のエレクトリック・ベースの島田さゆり、さらにはスペイン出身の新鋭ピアニストヤゴ・バスケス(Yago Vazquez)、メキシコ出身のドラマー、ユリアナ・ソブリノ(Yuriana Sobrino)という国境を超えたカルテットが奏でる音楽は、中南米音楽とジャズの影響が絶妙にブレンドされており、爽やかで新鮮味のある極上の音楽に仕上がっている。
DDG4(ダニ&デボラ・グルジェル・クアルテート、Dani & Debora Gurgel Quarteto)やタチアナ・パーハ(Tatiana Parra)といったナチュラルなジャズを彷彿とさせるサウンドがとても心地良い。

『Joy』収録の(2)「Corrida de Coelho」の冒頭部分。

収録曲は全てバンドメンバーによるオリジナル。

近年の上質な南米ジャズのテイストを醸す清涼感のある(1)「Alda」、軽快なサンバジャズ風の(2)「Corrida de Coelho」に(7)「Alegria」などはヴォーカルのヒタ・マリア作。
グルーヴィーな6/4拍子の(4)「Waiting」、ヴォーカルとベースだけの(6)「Duo」、ドラムス以外の3人でしっとりとアルバムを締めくくる(8)「Joy」の3曲がベースの島田さゆり作。
ヤゴ・バスケス作曲の(3)「La Danza del Tiempo」はヨーロッパの田舎町を想起させるようなフォークテイストの美しいバラード。
全編がスキャットで歌われているため歌詞は一切ないが、それぞれ作曲者の個性の現れた楽曲群がアルバム全体に豊かな色彩感を与えている。

バークリー音楽大学での出会いが4人を結んだ

バンドはジャズの名門、ボストンのバークリー音楽大学出身の女性メンバー3人が中心。ピアニストのヤゴ・バスケスが唯一の男性メンバーだ。

左からヤゴ・バスケス(p)、ユリアナ・ソブリノ(ds)、ヒタ・マリア(vo)、島田さゆり(b)

ヒタ・マリア(Rita Maria, ヴォーカル)は母国ポルトガルの音楽大学で勉強したのち、 バークリー音楽大学に入学。ジャズ、ファド、 ワールドミュージック、フュージョン、ロックなどジャンルにとらわれず活動。ポルトガルのほか、アメリカとエクアドルで暮らしマリア・ラジーニャ(Mario Laghinha)、サラ・セルパ(Sara Serpa)など様々なミュージシャンと共演を重ね、20枚以上のアルバムに参加している。2018年に Festa do Jazz でthe Artist of the Year Award, RTP Awards を受賞。現在はピアニストのフィリペ・ラポーゾ(Filipe Raposo)とのデュオをメインに活動している。

ヒタ・マリアとフィリペ・ラポーゾのデュオ演奏で、チャップリンの名曲「Smile」

ベースの島田さゆりは高校卒業後にバークリー音楽大学へ入学、ジャズや中南米音楽を中心に学んだ。2010年に同大学を卒業後、アメリカ東海岸を中⼼にジャズ、サルサバンド、ポップス等、様々なバンドのサポートベーシストとして活動。うちいくつかのバンドがデビューし、日本ツアーに同⾏。2012年に日本に帰国、以降は首都圏を中⼼に活動している。

島田さゆり(b)のバークリー在学中のライヴ演奏動画。

メキシコ出身のドラムスのユリアナ・ソブリノ(Yuriana Sobrino)は6歳の頃から地元の音楽グループに所属し、パーカッショニストやシンガーとして音楽を始めた。兄弟とともに活動している中南⽶のフォークロアバンドでメキシコでのフェスティバル出演、アメリカやカナダでもツアーを行っている。

ピアニストのヤゴ・バスケス(Yago Vazquez)も近年注目を浴びる逸材。ラテンのルーツと現代NYジャズを融合したピアノで、本作でも全体のサウンドを支えている。重鎮ドラマー、ジェフ・ハーシュフィールド(Jeff Hirshfield)らが参加した2015年のリーダー作『Stream』は日本でも話題に。現在はNYに在住し、Blue NoteやBirdlandといった名門ジャズクラブへの出演や、メキシコ、チリ、コスタリカ、韓国、ポルトガル、スペイン等世界各地のジャズフェスティバルで活躍している。
本作『Joy』にはヴォーカルのヒタ・マリアの紹介によって参加になったようだ。

若き音楽家たちの今後の活動にも期待したい

本作『Joy』は、グラミー賞の下記のいくつかの部門に推薦されている。
– BEST JAZZ VOCAL ALBUM
– BEST IMPROVISED JAZZ SOLO
– BEST ARRANGEMENT, INSTRUMENTAL & VOCAL

それぞれ居住地が離ればなれのため、この4人での演奏はしばらく観られないかもしれないが、島田さゆりとヒタ・マリアの2人を中心とした活動は今後も続けていくとのこと。

『Joy』でその実力を示した彼女らの今後の活躍にも大いに期待したい。

Rita Maria & Sayuri Shimada - Joy
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