オルケストラ・ムンダーナ・ヘフジ（OMRefugi）
中国、コンゴ、キューバ、フランス、ギニア、イラン、パレスチナ、シリア、チュニジアといった国々からの移民がブラジル・サンパウロで結成したバンド、オルケストラ・ムンダーナ・ヘフジ（Orquestra Mundana Refugi）。2019年作『Caravana Refugi』では、洗練されたブラジル音楽をベースに各国の音楽文化が雑多に混じり合ったユニークな音楽を聴くことができる。異なるルーツを持つ人たちが音楽のもとに集い、アンサンブルを作り上げていく様は感動的ですらある。
収録曲も実に多様で、ブラジルを代表するSSWシコ・ブアルキ（Chico Buarque）作曲の(1)「As Caravanas」に、イランの伝統曲(2)「Rashid Khaan」、パレスチナ出身のメンバーでブズーキ奏者のユーゼフ・サイフ（Yousef Saif）によるアラビアン・ヒップホップ(4)「Rap Palestino」、中国系の揚琴奏者ネルソン・リン（Nelson Lin）による朴訥な五音音階の旋律が印象的な(7)「Calma/Canção do Presente de Noivado」などなど、次から次に多国籍バンドらしい面白いアイディアが溢れ出てくる。
(9)「Pot-Pourri Milton Nascimento」は偉大な“ブラジルの声”ミルトン・ナシメント（Milton Nascimento）の名曲をメドレーで繋ぐ名演。
音楽の坩堝ブラジルを象徴するグループ、OMRefugi
弦楽器全般を演奏し、これまでにソロで何枚もアルバムを出しているカルリーニョス・アントゥニスのもとに集ったミュージシャンは総勢21名。
バンドはブラジル・サンパウロの文化団体SESC（セスキ=ブラジル商業連盟社会サービス連盟）の主宰による移民や難民を支援する2ヶ月間の無料の音楽ワークショップのプロジェクトをきっかけに結成されたという。様々な事情によりサンパウロを故郷として選択した（選択せざるをえなかった）人々によるこのグループ=オルケストラ・ムンダーナ・ヘフジ（OMRefugi、世界の移民楽団、の意味）は、2017年にライヴアルバム『#1: Orquestra Mundana Refugi』を発表。今作『Caravana Refugi』は2ndとなる。
ナショナリズムが台頭し視野狭窄に陥る傾向を見せる世界情勢の中で、ブラジルとて例外ではない。ボウソナロ大統領は軍事政権を称賛し、人種差別や女性差別発言を繰り返す。政治だけでなく、急速に世界に拡散した新型コロナウイルスもまた、人々の往来を難しくし、閉塞感を漂わせている。
そんな時代にあっても、苦境にある人々を国境を超えて結びつかせ、コミュニケーションを容易にするものはやはり音楽なのだと感じずにいられない。
（『#1: Orquestra Mundana Refugi』収録曲）
Orquestra Mundana Refugi :
Carlinhos Antunes – cordas e direção musical – Brasil
Abou Cissé – percussão – Guiné-Conacri
Arash Azadeh – kemanche – Irã
Beto Angerosa – percussão – Brasil
Claudio Kairouz – kanun árabe – Brasil
Daniel Muller – acordeão – Brasil
Danilo Penteado – piano – Brasil
Hidras Tuala – voz – Congo
Leonardo Matumona – voz – Congo
Luis Cabrera – saxofone – Cuba
Mah Mooni – voz – Irã
Maiara Moraes – flauta – Brasil
Mariama Camara – voz e percussão – Guiné-Conacri
Mathilde Fillat – violino – França
Nelson Lin – cítara de martelo – Brasil/China
Oula Al-Saghir – voz – Palestina/Síria
Paula Mirhan – voz – Brasil
Pedro Ito – bateria – Brasil
Raouf Jemni – kanun turco – Tunísia
Rui Barossi – contrabaixo – Brasil
Tiago Daiello – contrabaixo – Brasil
Yousef Saif – bouzouki – Palestina