現代MPBを代表するSSW、マトゥ・ミランダの2ndアルバム
マトゥ・ミランダ(Matu Miranda)の第2作目となるアルバム『Apuama』は、2026年のブラジル音楽(MPB)の最重要トピックとなるだろう。2024年のデビュー作『Matutando』で、ミシェル・ピポキーニャ(Michael Pipoquinha)からレニーニ(Lenine)まで、新旧のスターたちの協力を得て“MPBの正当な後継者”として確信を強く印象に刻んだその実力はやはり伊達ではなかった。
今作では、自身がこれまでにブラジル国内外を移住しながら活動を続けてきた経験から、移動に伴う「行くこと」「待つこと」「帰ること」といった変化や帰属意識、サウダーヂ(郷愁)といったテーマを、現代MPBの感覚とアコースティックなサウンドを通して描いている。今作では故郷や家が特定の場所ではなく、出会いや別れ、移動のなかで人が自分の居場所を作っていく過程として捉えられている。
アルバムの随所で登場する“サウダーヂ”は、歴史を通じて多くのブラジル音楽がテーマとしてきた感覚だが、今作でもまた重要なキーワードとなっている。それは決して過去を懐かしんだり停滞を意味するのではなく、自身を前進させ、新たな発見を助け、未来に繋がるための原動力としてアルバムの中心的な概念として常に存在する。
ブラジルを代表する女優/詩人エリザ・ルシンダ(Elisa Lucinda)がフィーチュアされた短いオープニング(1)「Oração ao Sol de amanhã」(明日の太陽への祈り)の直後から、素晴らしい楽曲が次々と現れる。個人的に特に秀逸だと感じたのは(3)「É bom voltar」、(4)「Cantarei até o fim」、(10)「Gosto do gesto」あたりだろうか。
今作では(5)「Céu azulzin」にジョシアラ(Josyara)、(12)「Estética da fome」にシコ・シコ(Chico Chico)といった新世代を代表するミュージシャンが参加。さらに演奏陣にはブラジルを代表するベーシストのフレデリコ・エリオドロ(Frederico Heliodoro)や鍵盤奏者シコ・リラ(Chico Lira)が参加。
さらにバーラ・デゼージョ(Bala Desejo)の名盤『SIM SIM SIM』(2022年)に携わったレオナルド・マルケス(Leonardo Marques)がサウンド・プロダクションを担っていることも特筆すべきだろう。
Matu Miranda プロフィール
マトゥ・ミランダは、ブラジルのシンガーソングライター、ギタリスト。幼少期からブラジル各地を移り住みながら育ち、各地で見る異なる風景が彼の感性を育んだ。その音楽性はジャヴァンやカエターノ・ヴェローゾからの強い影響をうかがわせるMPBを基盤に、ジャズやブラジル北東部音楽、フォークなどを横断する。
2010年代半ばから自身の楽曲を中心としたプロジェクト「Matutando」を展開し、Jazz & Blues Guaramiranga、Choro Jazz Jericoacoaraなどに出演。これまでにカルロス・マルタ(Carlos Malta)、アルマール・ド・エスピリト・サント(Arismar do Espírito Santo)、レア・フレイリ(Léa Freire)、ミシェル・ピポキーニャ(Michael Pipoquinha)らブラジルを代表する音楽家と共演してきた。
2020年にEP『MATU』、2024年にファースト・アルバム『Matutando』を発表。2026年にはジュリアーノ・エリストン(Giuliano Eriston)との共同プロデュースによるセカンド・アルバム『Apuama』をリリースした。