ヨーロッパ・ジャズに吹く新たな風、フェーン・トリオ最新作『ELEMENTS』

Foehn Trio - ELEMENTS

ヨーロッパ・ジャズに吹く新たな風、Foehn Trio

“フランス発のイスラエル・ジャズ”として注目されたフェーン・トリオ(Foehn Trio)の最新作 『ELEMENTS』がリリースされた。今作はこれまでのようにイスラエルのジャズの要素を汲みつつ、GoGo Penguin や Immortal Onion、Tingval Trio といったヨーロッパの現代ジャズシーンの最先端と評されるサウンドにより近づき、新鮮かつ爽快な音楽体験を与えてくれる傑作だ。

彼らはあらゆる境界を取り払い、界面活性剤のように混ぜ合わせる。アコースティックとエレクトリック。ミニマルとカオス。彼らが理想とする音楽のために、これまでのアルバムで確実な進化を遂げてきた。アヴィシャイ・コーエンらの影響を強く感じさせた1st『Magnésie』(2017年)、シンセやエフェクターの利用が増えエスビョルン・スヴェンソンのサウンドを取り込んだような2nd『Highlines』(2020年)、そして一気に現代ジャズの最前線に躍り出たと言っても過言ではない今作。彼らにとって過去は強固な礎であり、まだまだ高い建物を建築している真っ最中なのだと思わせる。冒頭に述べたようなキャッチフレーズはインパクトはあるかもしれないが、それももはや今の彼らには相応しくない──彼らの音楽は既に真にクリエイティヴで、オリジナルだ。

グランドピアノの豊かな響きに始まり、東欧的・中東的なフレーズが飛び出し、中間部でみせるエレクトリック・ジャズの宴といった構成もなんとも魅力的な(1)「Same Horizon」。
叙情的な和音進行と旋律、5連符を中心とした複雑なリズムがこの上なく美しい(2)「Grand F(r)errand」。夢想的な音響にこだわりが感じられる(4)「Romy (And the World After)」。ダフト・パンク(Daft Punk)がお好きならそのカヴァー(6)「Around the World」。
とにかく、どこの曲も刺激的で最高にかっこいい。

(1)「Same Horizon」のライヴ動画。ヴィジュアル・アーティスト、マロ・ラクロワ(Malo Lacroix)が舞台美術を手掛けている。

フェーン・トリオ(Foehn Trio)は2016年にフランス・リヨンで結成された。
トリオ名はアルプスを吹き越す風、フェーンが由来。メンバーはピアニスト/作曲家でリーダーのクリストフ・ワルドナー(Christophe Waldner)、ベーシストのシリル・ビヨー(Cyril Billot)、ドラマーのケヴィン・ボルケ(Kevin Borqué)の3人で、結成当時から今も変わらない。

Fœhn Trio :
Christophe Waldner – piano, keyboards
Cyril Billot – double bass, synth bass
Kevin Borqué – drums

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