ヴァイオリン奏者 Terese Lien Evenstad、クインテットでの新作
ノルウェー出身、現在はスウェーデン・ヨーテボリを拠点とする女性ヴァイオリン奏者テレーセ・リーン・エヴェンスタ(Terese Lien Evenstad)率いるクインテットの2026年作『Phoenix』は、ヴァイオリンとクラリネットをフロントに据えた珍しいクインテット編成で、北欧ジャズ特有の静謐さだけではない、生命のエネルギーを感じさせる作品だ。
フェニックス(不死鳥)のタイトルが表すとおり、この作品では「再生」が通底するテーマとなっている。テレーセ・リーン・エヴェンスタ自身のインド・ツアーの経験、音楽的な“ホーム”を見つけるプロセス、そして母の死という“喪失”、自身の妊娠と出産による“新生”といった出来事を通じ、「一つの扉が閉じると別の扉が開く」——つまり喪失と再生、終わりと始まりの循環を表現。主に彼女のヴァイオリンと、アレクサンダー・イヴァルソン(Alexander Ivarsson)のクラリネットは終始付かず離れず絡み合いながら熱量を高めてゆく。バンドメンバーそれぞれが持ち寄った楽曲群はどれもメロディアスで親しみやすく、北欧の伝統音楽を垣間見せながら遊び心も同居し、何よりも全ての音符が躍動的だ。
充実したバンドの快活さが際立つ(1)「Labyrinten」(作曲者のクレジットはクインテット)、ハードバップと北欧フォークが混淆したような楽しさのアレクサンダー・イヴァルソン作の(3)「Som kyssar mot vårluften」、ベーシストのアルヴィド・ユッランデル(Arvid Jullander)作のコミカルで楽しい(9)「Komodo Jive」なども非常に秀逸。個性的かつバランスの良い、要注目のグループだ。
Terese Lien Evenstad 略歴
テレーセ・リーン・エヴェンスタは、1991年ノルウェー生まれ、スウェーデン・ヨーテボリを拠点に活動するジャズ・ヴァイオリニスト/作曲家。7歳からクラシック・ヴァイオリンを学び、のちにジャズと即興音楽へ傾倒。2016年には、ストックホルム王立音楽大学(Kungliga Musikhögskolan)ジャズ科を卒業した“同校史上初のジャズ・ヴァイオリン専攻卒業生”として注目を集めた。
北欧フォークや映画音楽から影響を受けた抒情的かつダイナミックな作風を特徴とし、ヴァイオリンとクラリネットをフロントに据えた Terese Lien Evenstad Quintet(TLEQ)を率いて活動。繊細な室内楽的アンサンブルと、自由度の高い即興演奏を融合させた独自の現代北欧ジャズで高い評価を獲得している。
2018年にはスウェーデン放送P2主催の権威あるジャズ賞「Jazzkatten」の新人賞にノミネートされ、同年には Louis Armstrong Scholarship を受賞。「彼女はジャズにおけるヴァイオリンに新たな顔を与えた」と評された。さらに2019年には、ギタリスト Janne Schaffer による J Scholarship を受賞。2024年にはアルバム『Movement』がスウェーデンの Manifestgalan「Jazz of the Year」にノミネートされた。
これまでにドイツ、インド、イタリア、スイスなどでツアーを行い、Bohuslän Big Band をはじめとする複数のプロジェクトにも参加。現代北欧ジャズにおける最重要ヴァイオリニストのひとりとして、国際的な注目を集めている。
Terese Lien Evenstad – violin
Alexander Ivarsson – clarinet
Arvid Jullander – double bass
Johan Birgenius – drums
Fabian Kallerdahl – piano