トリオ・グランデ、リスナーを惹きつける圧巻のジャズ
今、これほど面白い一流のジャズトリオは、ほかにないと思う。
トリオ・グランデ(Trio Grande)。ギタリストのギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman)、サックス奏者のウィル・ヴィンソン(Will Vinson)、そしてドラマー/ベーシストのネイト・ウッド(Nate Wood)から成るトリオだ。特に、器用にベースを弾きながらドラムスを叩く(ドラムスを叩きながらベースを弾く、の方が正しいかもしれない)ネイト・ウッドの姿を初めて見れば「大道芸か」と見紛うかもしれないが、聴けば聴くほどに彼らが音楽的にも“人並外れた”存在だと気付くはずだ。
前作『Trio Grande: Urban Myth』(2023年)でこの編成になったTrio Grande だが、今作『Trio Grande: What’s Left』でその音楽は成熟を極める。ギラッド・へクセルマンは美しいクリーン・トーンから激しく歪んだロック的なサウンドまで自在に行き来し、ウィル・ヴィンソンの鋭く歌うサックスを引き出す。そのウィル・ヴィンソンはサックスを吹かないときはシンセやキーボードで和音を奏で、空間的な厚みを演出。ネイト・ウッドは右手でスティックを持ち、左手はベースを押弦。単にルートを弾くだけではなく、低音を支えつつ“歌うような”ベースラインも見せる。これらの超絶技巧の集合によって、3人で演奏しているとは到底思えないほどのバンド・サウンドを聴かせてくれるが、彼らの場合はそれに留まらない。
アルバムのほとんどの楽曲は彼らのオリジナル(9曲中、5曲がギラッド・へクセルマン作曲。2曲がウィル・ヴィンソン、残り2曲がカヴァー)。
口ずさみやすいメロディーや反復の心地よさといった人間のバイオリズムに基づきつつ、即興部分では高度な遊び心とテクニック、そして圧倒的な閃きによって緻密なインタープレイが繰り広げられる。親しみやすく、知的。これが、多くのリスナーが彼らの音楽に惹かれる理由だと思う。そして、知的であるだけでなく、覆い被されるほどの熱いエネルギーが共存し、現代ジャズの枠を軽々と越えていく。
ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)のカヴァー(6)「Blues a la Carte」では、4:05のところでベースがネイト・ウッドの左手からウィル・ヴィンソンの左手へと自然に移行し、ネイト・ウッドは両手でドラムソロに専念する。こうしたイリュージョン的な構成も、このトリオならではの醍醐味だ。
Will Vinson – alto saxophone, keyboards, Wurlitzer
Gilad Hekselman – electric guitar, acoustic guitar
Nate Wood – drums, electric bass