ショパンやシンディ・ローパーも餌食に…奇才ピアニスト、デヴィッド・ヘルボック新譜

David Helbock - The New Cool

デヴィッド・ヘルボック新譜はトランペットとギターとのトリオ編成

クラシックを原点としながら、大胆なエレクトロニカやヴォイス・パーカッション、ポエトリー・リーディングや変則バンドなど様々な表現方法で毎回驚かせてくれるオーストリア出身の奇才ジャズピアニスト/作曲家、デヴィッド・ヘルボック(David Helbock)の新譜『The New Cool』

今回はギターのアーネ・ヤンセン(Arne Jansen)とトランペットのセバスティアン・スタドニツキー(Sebastian Studnitzky)というドイツ勢とのトリオで、時代性を反映した自作曲はもちろん、ショパンやシンディ・ローパーに至るまでをクールジャズの哲学に則って意欲的に表現。

アルバムの幕開けは25歳で交通事故によりその生涯を閉じたハード・バップ初期の名トランペッター、クリフォード・ブラウンを惜しむベニー・ゴルソン作の名曲(1)「I Remember Clifford(クリフォードの想い出)」で、ここではセバスティアン・スタドニツキーの霧に霞むようなトランペットが鎮魂の祈りを捧げる。

(3)「Op. 28, No. 4: Prelude in E Minor」はクラシックの作曲家ショパン作の「前奏曲第4番 ホ短調」で、ピアノ(シンセ)とギターがつくる幻想的な音響空間にトランペットが自由に即興を乗せる。

(4)「Truth」

この作品がベルリンのスタジオで録音されたのは2020年8月、世界中が未知の感染症に怯えパニックになっていた。
本作にもその空気は反映されており、(2)「Pandemic of Ignorance」や(10)「Korona Solitude #1」といった不安感を直接的に表現したような楽曲も。本作には未収録だが、デヴィッド・ヘルボックは「Dealing with another kind of VIRUS」というシンセやタブラをフィーチュアした曲のセッション動画もYouTubeにアップしており、こうした世界を取り巻く情勢などには敏感なタイプなのだろう。

そしてぜひ、シンディ・ローパーの(7)「Time After Time」がこの個性的な音楽家によってどのように料理されたか、確かめてみてほしい。

創造意欲に溢れるアーティスティックなピアニスト

デヴィッド・ヘルボックは1984年オーストリア生まれ。クラシックを入り口に音楽を始めたが、セロニアス・モンクなどに感銘を受けジャズの道へ。非常に多作な作曲家としても知られており、ブラジルの作曲家エルメート・パスコアールに触発されて1年間毎日新しい曲を書き、600ページにわたる楽譜にまとめ出版したことも。これまでに約20枚のアルバムをリリースしている。

彼の音楽はジャズの範疇にとどまらず、特に2管とのトリオプロジェクト、David Helbock’s Random / Control では斬新かつアーティスティックな試みを続けている、とても刺激的な音楽家だ。

David Helbock – piano, synthesizer
Sebastian Studnitzky – trumpet
Arne Jansen – guitar

David Helbock - The New Cool
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