2020年、ムソルグスキー『展覧会の絵』への不思議で幸せな再訪

Mussorgsky Pictures Revisited

鬼才コンビによるムソルグスキーの新解釈

エストニア生まれのピアニスト、クリスチャン・ランダル(Kristjan Randalu)と米国のサックス奏者、デイヴ・リーブマン(David Liebman)による2020年作『Mussorgsky Pictures Revisited』は、ロシアの作曲家ムソルグスキーの代表作「展覧会の絵」のアヴァンギャルドな新解釈だ。
「展覧会の絵」はプロムナードも含めると全16のパートに分かれた組曲だが、これら全てをピアノとサックスのデュオで自由に描いてみせる。

(6)「Les Tuileries(テュイルリーの庭)」の演奏動画。

ムソルグスキー「展覧会の絵」

「展覧会の絵」を作曲したモデスト・ムソルグスキー(Моде́ст Петро́вич Му́соргский, Modest Petrovich Mussorgsky, 1839年3月21日 – 1881年3月28日)はロシア生まれの作曲家。

クラシック愛好家でなくとも誰もがそのメロディーを聴いたことがある「展覧会の絵」は、友人であった建築家/画家のヴィクトル・ハルトマン(Виктор Александрович Гартман, Viktor Alexandrovich Hartmann, 1834年5月5日 – 1873年8月4日)の遺作展を訪れた際に触発された10枚の絵をモチーフにした楽曲と、その展覧会を歩くムソルグスキーを表現したといわれている小品「プロムナード」で構成された組曲だ。

ヴィクトル・ハルトマンはムソルグスキーの大親友だったが、大動脈瘤が原因で突然の死に見舞われ、その悲報を受けたムソルグスキーはひどく落胆したという。ハルトマンの死の翌年に彼の遺作400点を集め大々的に開催された展覧会をムソルグスキーも訪れており、その後約半年で組曲「展覧会の絵」を完成させた。そしてこの組曲には、「ヴィクトル・ハルトマンの思い出」という副題もついている。

(13)「Catacombae」はハルトマンの「パリのカタコンベ」をモチーフとしている。
髑髏が並ぶカタコンベを、ランタンを手にじっと見つめるハルトマン自身が描かれている。

ジャズ界でも異彩を放つ二人の鬼才音楽家

クリスチャン・ランダルは2018年の鮮烈なECMデビュー作『Absence』も大きな話題となった1978年エストニア生まれのピアニスト。彼のジャズはクラシックや伝統的な民俗音楽に影響された透明度の高い演奏が特徴的だ。
キャリアは長く、これまでにマーク・ジュリアナ(Mark Guiliana)、アリ・ホーニグ(Ari Hoenig)、 ダファー・ヨーゼフ(Dhafer Youssef)、ニルス・ペッター・モルヴェル(Nils Petter Molvær)、グェン・レ(Nguyên Lê)らと共演している。

一方のサックス/フルート奏者、デイヴ・リーブマンは1946年、ニューヨークのユダヤ系の家庭に生まれた大ベテラン。これまでの共演者はマイルス・デイヴィス(Miles Davis)、エルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)、チック・コリア(Chick Corea)、ジョン・スコフィールド(John Scofield)、ケニー・カークランド(Kenneth David Kirkland)、日野皓正、ヨアヒム・キューン(Joachim Kuhn)、ダニエル・ユメール(Daniel Humair)などなど洋の東西を越え枚挙に暇がない。
オーソドックスなジャズから、電化マイルス時代の先鋭的な演奏、そして1982年の完全ソロによるオーバーダビングの快作『Solo – Memories, Dreams And Reflections』など、個性的なミュージシャンとしてその名を轟かせてきた孤高の天才だ。

Mussorgsky Pictures Revisited
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