ジャズピアノ巨匠チック・コリア、音楽の系譜に刻む偉大な軌跡

Chick Corea - Plays

巨匠チック・コリア、新譜は二枚組ソロピアノ・ライヴ盤!

ジャズピアノの巨匠チック・コリア(Chick Corea)の2枚組新譜『Plays』がリリースされた。何曲かは順次先行公開されていて、そのあまりの素晴らしさに正式リリースが個人的にも待ち遠しかった作品だ。

本作は2018年に行われた米国フロリダ州クリアウォーター、フランス・パリ、ドイツ・ベルリンの3箇所でのソロツアーの演奏から厳選された33曲が収録されている。

アルバムはMCも収録され、リアルなライヴの様相が伝わってくる構成。
曲目は彼のオリジナルは少なく、モーツァルト、ショパン、ガーシュイン、A.C.ジョビン、セロニアス・モンク、ビル・エヴァンス、そしてスティーヴィー・ワンダーなどなど、特に彼が影響を受けた偉大なミュージシャンたちを辿る内容になっている。

ほぼソロピアノだが、フランス・パリ公演での(2-8)「Duet: Yaron」でイスラエルのジャズピアニスト、ヤロン・ヘルマン(Yaron Herman)、(2-9)「Duet: Charles」では仏ピアニスト、シャルル・エッセール(Charles Heisser)とのデュオ演奏も披露。
特にヤロン・ヘルマンとのデュオでは随所で観客の笑いが起きており、盛り上がりも最高潮に達している。そこで何が起こっていたのか映像で知りたい欲求を掻き立てられるが、YouTubeに該当の動画がアップされていた。

2018年にパリで披露されたチック・コリアとヤロン・ヘルマンの連弾動画。
今作に収録された(2-8)「Duet: Yaron」の前後をカットした動画だが、最後のおいしいところが切れているのが残念…

名曲たちがチック・コリアの感性で蘇る、至高の演奏

チック・コリアの魅力はその独創的な創造力だと思う。
彼が作る曲も、演奏の中で聴かせてくれるアドリブも、とにかくクリエイティヴだ。1941年生まれ、このアルバムのライヴ演奏当時で77歳の彼だが、その創造力は他のどんなピアニストも凌駕しているように思える。ジャズだけでなく、クラシックもブラジル音楽もフラメンコも血肉として吸収し、そこからさらに表現力を拡張しようとする彼の音楽の素晴らしさは、たった一人で演奏されるソロピアノでも充分に伝わってくる。まさに“自由”を体現しているピアノストが、チック・コリアなのだ。

今作でまず聴いて欲しいのは(1-9)「Desafinado」、(1-8)「Waltz for Debby」、(1-3)「Someone To Watch Over Me」、(1-2)「Piano Sonata in F, KV332」といった誰もが聴いたことがある名曲だ。これらの手垢のついた楽曲が、チック・コリアという魔術師の手によってどれほど新鮮に生まれ変わっているか、ぜひ聴いて感じてほしい。

2枚目の後半、(10)「Chick Talks Children’s Songs」以降は名盤『Light As a Feather』(1972年)にもその一部が収録されていたチック・コリアを代表する組曲「Children’s Song」を収録。ミニマムな左手の音型を基本に、天井のない子供の想像力を体現したような素晴らしい演奏が繰り広げられている。

Chick Corea – piano

Yaron Herman – piano (2-8)
Charles Heisser – piano (2-9)

関連記事

Chick Corea - Plays
最新情報をチェックしよう!