UKジャズ新世代。ラフィ・ブッシュマンが初のフルアルバムで魅せた、ジャズの“超時性”

Raffy Bushman - New Life

ラフィ・ブッシュマン『New Life』

英国ロンドンを拠点とするピアニスト/作曲家ラフィ・ブッシュマン(Raffy Bushman)が、自身初となるフルレンス・アルバム『New Life』をリリースした。これまでピアニストとして、そして時にはチェリストとしても様々な編成で革新的な表現を試み、充実したUKジャズシーンの中でも独自の立ち位置を築いてきた彼が、今作ではシンプルなピアノトリオ編成に立ち返りつつも、スウィング・ジャズからヒップホップまであらゆる時代からの影響を感じさせる独創的な音楽を創り上げている。

アルバム制作中に現在のパートナーと出会い、その後第一子の妊娠が判明。アルバム完成直後には第一子が誕生するという背景のもと生まれた今作は、ラフィ・ブッシュマンにとってもこれまでで最もプライベートな作品であるという。(1)「Two People」はそのパートナーのために書いた曲で、今作でも数少ないソロピアノ。そのほかのほとんどの曲ではアイディアをもっともスピーディーに表現するための手段として、ピアノトリオというフォーマットが選択されている。

作曲家として、そしてジャズ・ピアニストとしての本領は(2)「Pathos」で遺憾なく発揮されている。噴出を待つマグマの脈動のようなテーマ、束の間の休息を味わう見事なハーモニー、解放的なフォービート。わずか4分強の中でそれらが絶え間なく連続するこの曲で、リスナーは必ず心を掴まれることになる。

(4)「Renaissance」は今作でもっとも優れた曲のひとつだ。太い骨格を持つ短調の7/4拍子は、アヴィシャイ・コーエンに代表される所謂“イスラエルジャズ”を彷彿させる。ある種の憂いを含んだ複雑なブロックコード、中盤の正確な左手のシークエンスと自由で創造的な右手によるピアノ独演。終盤に差し掛かるとそのハーモニーはますます深い陰を帯び、瞬間的には研ぎ澄まされた刃の如き鋭敏さを見せる。

(4)「Renaissance」

今作の魅力はラフィ・ブッシュマンの素晴らしい創造性にあることは確かだが、三位一体となって彼を支える影の立役者も忘れてはならない。ブッシュマンの過去2作にも参加するベーシストのアレック・ヒューズ(Alec Hewes)の演奏は堅実で力強く、時にはリズムとメロディーの両面で天性の閃きを見せる。マット・デイヴィス(Matt Davies)もまたブッシュマンと10年以上の付き合いのドラマーで、彼もまた叩き出すあらゆる音が明瞭だ。非常にタイトなリズムを持つ(6)「The Leopard」は、そんなトリオの最高の演奏のひとつであろう。

(6)「The Leopard」

Raffy Bushman プロフィール

ラフィ・ブッシュマンは、ロンドンを拠点に活動するジャズピアニスト/チェリスト/作曲家。ヒップホップ、ジャズ、クラシック、ゴスペルを横断する独自の音楽性で知られ、近年のUKジャズ・シーンにおいて独自の存在感を放つアーティストである。

幼い頃からピアノとチェロを学んだ。キャリア初期にはロンドンのクリエイティブ・コミュニティで重要な役割を果たした音楽・芸術集団「Unit 31」の音楽監督を務め、その後、自身が率いるNuShape Orchestraを結成。国立劇場(National Theatre)の委嘱作品を手がけ、その作品は後にSundance Film FestivalやTate Modernでも演奏された。

ソロ名義では2020年のデビューEP『Look Up』を皮切りに、『Beginner’s Mind』(2021年)、『E Minor String Quintet + Rhythm』(2022年)、『Silver Lines』(2023年)、『Here Today, Gone Tomorrow』(2024年)などを発表。ピアノ・トリオ、ストリング・アンサンブル、大編成ジャズまで幅広い編成を用いながら、一貫してリズム重視の作曲と繊細なハーモニーを追求してきた。

2026年には初のフルレンス・アルバム『New Life』を発表。パートナーとの出会いと第一子の誕生を背景に制作されたこの作品では、長年探求してきたジャズとヒップホップの融合を、よりパーソナルで親密なピアノ・トリオ表現へと昇華させている。

音楽家としてだけでなく教育者としても活動しており、演奏、作曲、音楽理論の指導も行っている。評論家からは「UKジャズ・アンダーグラウンドの重要な声」「ジャンル横断的な作曲家」と評され、その作品は技巧だけでなく物語性と人間性を重視する姿勢によって高く評価されている。

Raffy Bushman – piano
Alec Hewes – double bass
Matt Davies – drums

Raffy Bushman - New Life
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