様々な楽器やコーラスが舞う、ネオ・トリピカリア
ブラジル出身でカナダ・トロントを拠点に活動するマルチ器楽奏者/作曲家フェリピ・セナ(Felipe Sena)を中心としたブラジリアン・サイケバンド、オービタル・アンサンブル(Orbital Ensemble)が第2作目となるアルバム『Contínua』をリリースした。
今作はオンタリオ州ストーニー湖のPine Island Studioで基本となる演奏をライヴ録音し、フルート、サックス、ヴォーカル、ハープなどの追加録音を重ねて完成させた。ブラジル音楽の伝統を基盤に、トロピカリアのサイケ感やジャズ、ファンク、ラテンなどの要素を取り込んだ、より多層感のあるアンサンブル・サウンドへと進化している。
1970年代を思わせる荒々しいギターサウンドがバンドの核となりながら、器楽音楽に溶け込むようなヴォーカル/コーラスやストリングスなども印象的だ。歌が中心にならず、人間の声も含めてすべての音が対等に音楽を構成する、という哲学も感じさせる。歌詞は英語とポルトガル語(ブラジルの公用語)で書かれており、(3)「Razão」などではそれらが混在する。
赤沼芽衣(Mei Akanuma)のフルート/サックス、ジェイコブ・リーソン(Jakob Leeson)のサックスといった木管楽器の存在もこのアンサンブルの特徴であり、強みだ。フルートは旋律やコーラスを軽やかに飾り、サックスは存在感のあるソロで時折主役を演じる。この絶妙なバランスが、“サイケデリックでありながら音楽として心地よい”状態を生み出す。
このアルバムをわかりやすく一言で表すなら、“ブラジリアン・サイケデリック・ジャズ/フュージョンを軸にしたネオ・トロピカリア”といったところだろうか。後述するようにブラジリアン・サイケだけでなく世界中の様々な音楽から影響を受けたサウンドは、それらの混交によって薄まるのではなく、掛け算で面白さを倍増している。
Orbital Ensemble 略歴
オービタル・アンサンブルは、カナダ・トロントを拠点とする、ブラジル出身のマルチ・インストゥルメンタリスト/作曲家フェリピ・セナ(Felipe Sena)を中心に結成された音楽グループ。トロントのジャズ・フュージョン・シーンを背景に、MPB(ブラジル大衆音楽)、ブラジリアン・サイケデリック、ジャズ、ファンク、サイケデリック・ロックなどを融合した独自のサウンドを展開している。
2025年6月、デビュー・アルバム『Orbital』をトロントのレーベル「We Are Busy Bodies」から発表。同作はフェリピ・セナが作曲・プロデュースを手がけたスタジオ作品であり、これを起点としてトロントを拠点とするミュージシャンによるライヴ・アンサンブルへと発展していった。2025年11月にはライブEP『Live at Gold Standard』を発表し、バンドとしての躍動感あふれる演奏を披露。2026年6月には2ndアルバムとなる『Contínua』をリリースした。
フェリピ・セナはまた、アルトゥール・バストス(Arthur Bastos)、ダニエル・マクレイ(Daniel McLay)とともに、トロントの音楽コレクティブ/レーベル「Cajú Collective」の中核を担い、Trio Cajueiro(Cajú Trio)としても活動している。ブラジル音楽を軸にしたこの活動は、Orbital Ensembleの音楽的背景とも深くつながっており、トロントにおける現代的なネオ・トロピカリアのコミュニティ形成にも寄与している。
クルビ・ダ・エスキーナ(Clube da Esquina)、アジムス(Azymuth)、アルトゥール・ヴェロカイ(Arthur Verocai)、メタ・メタ(Metá Metá)などのブラジル音楽に加え、ドゥンエン(Dungen)、クルアンビン(Khruangbin)、キング・ギザード&ザ・リザード・ウィザード(King Gizzard & The Lizard Wizard)、バッドバッドノットグッド(BADBADNOTGOOD)などからの影響も受けながら、ブラジル音楽と現代のジャズ/サイケデリック・ミュージックを横断する独自の音楽性で注目されている。
Jon Catanus – drums
Daniel McLay – bass, keyboards, percussion, vocals
Ana Figo – percussion
Artu Bastos – nylon string guitar, percussion, vocals
Felipe Sena – electric guitar, bass, keyboards, percussion, vocals
Mei Akanuma – flute, saxophone
Jakob Leeson – saxophone
Daniela Longaray – vocals
Rachel Kitchlew – harp