スティーヴィー・ワンダー、『Songs In The Key Of Life – The EP』をリリース
みなさん、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)が唐突にリリースした『Songs In The Key Of Life – The EP』はもう聴かれましたか!?
1976年の名盤『Songs In The Key Of Life』のセッションで録音され、そのままお蔵入りとなっていた4曲の未発表曲をミックスし直し、EPとしてまとめリリースされた作品のようですが、これが驚くほど良い曲ばかりでまじで驚きました。
どの曲も楽曲自体のクオリティが高すぎます。(1)「It’s Easier」のドラマティックなコード進行、水を得た魚のように気持ちよくシンコペーションしまくるヴォーカル、ドラムスやベースの圧倒的な推進力。とにかく、すべてが素晴らしい。確かにドラムマシンと思われる音色など時代を感じさせるところもあるものの、ローズピアノなんて50年経った今もおしゃれな音楽の象徴的に使われ続けているし、現代的な音楽の良さの本質はすでに確立されているどころか、この頃が絶頂期だったのでは…と思わせられるクオリティです。
(2)「My Life Story Of Love」なんて、彼の初期の代表曲「You Are the Sunshine of My Life」を彷彿させるメロディーやハーモニーの展開が最高。とにかく、作曲のセンスが凄い。天才だと思います。なんでこれがボツになったのか、まったくもって不思議です。
ちなみに、オリジナル『Songs in the Key of Life』は1976年9月28日発売。そのちょうど50年後となる2026年9月28日に本作EPが公開されました。本作EPは米国西部時間AM4時54分という奇妙な時間でのリリースになっていますが、これにもエピソードがあります。50年前の『Songs in the Key of Life』最後のスタジオ・セッションが終わった時刻が4時54分で、その際、当時のベーシストのネイサン・ワッツ(Nathan Watts)が「Fo’FiftyFo’!」と叫んだことから、以後この言葉が彼らの間でセッション終了を意味する合言葉のようになったとのこと。50周年では、その時刻を逆に「新しい始まり」にしたわけです。こういう“細かすぎる”こだわりも含めて、めちゃめちゃ最高ですね!
50年前の時代に思いを馳せる
このEPを聴き、僕は今オリジナルの『Songs in the Key of Life』を聴き返しています。実はスティーヴィー・ワンダーはベスト盤から入ったためにこのオリジナル盤はそれほど聴きこんではおらず、ちゃんと知っていたのは1枚目の「Love’s In Need Of Love Today」や「Sir Duke」、2枚目の「Isn’t She Lovely」や「If It’s Magic」と言った超有名曲くらいだったのですが、あらためて音楽的な充実ぶりに感激しています。
『Songs In The Key Of Life – The EP』がリリースされたのはちょうど50年前の1976年。自分がまだ生まれる前の時代ですが、本当にこの頃の音楽は豊かだったのだな、と思います。
もしもこの時代に自分が感性豊かな若者として生きていたら、スティーヴィー・ワンダー以外にもマイルス・デイヴィスのエレクトリック期やチック・コリアの『Return to Forever』(1970年)、ハービー・ハンコックの『Head Hunters』(1973年)、フレットレス・ベース先駆者の『Jaco Pastorius』(1976年)、さらには60年代後半のブラジルのトロピカリア諸作など、夢中になっていたんじゃないかな。
生成AIの台頭によって誰もが簡単に“音楽を作れる”(注:ダブルクォーテーションつき)ようになり、音楽家(のみならずあらゆる分野のクリエイター)の存在意義が問われはじめているような昨今ですが、半世紀前のセッションが時を経て蘇り、多くの人がその豊かさに触れることはとても意義深いことなのではないかと思います。スティーヴィー・ワンダーがこれらの未発表音源のリリースを決断してくれたことに感謝です。
ちなみに
僕が一番好きなスティーヴィー・ワンダーの曲は、「Overjoyed」、そして「Ribbon in the Sky」です!