Canalón de Timbiquí × Reco Reco 共同プロジェクト作品
コロンビア太平洋岸の伝統音楽と、フランスのエレクトロニック・ミュージックが、ティンビキ1の川辺で出会った──コロンビアの歌手ニディア・ゴンゴラ(Nidia Góngora)率いるカナロン・デ・ティンビキ(Canalón de Timbiquí)と、フランス・トゥールーズを拠点とするトリオ、レコ・レコ(Reco Reco)による共同プロジェクト、ヌエボス・リオス(Nuevos Ríos)。そのセルフタイトルのデビュー・アルバム『Nuevos Rios』が、アルゼンチンのZZK Recordsからリリースされた。
プロジェクトが始まったのは2022年4月。Reco Recoのメンバーがコロンビア南西部、カウカ県のティンビキを訪れ、Canalón de Timbiquíの音楽家たちと合流。一行はHotel Bella Sofíaで約1週間をともに過ごし、生活を共有しながら即興、作曲、録音を進めた。その2か月後にはゴンゴラがフランス南西部のピュイロランを訪れ、さらにセッションを重ねている。
ティンビキはコロンビア太平洋岸のアフロ・コロンビア文化が色濃く残る土地だ。この地域では川が重要な交通路であり、人々の暮らしや集落を結ぶ役割を担ってきた。アルバムでも川や月、鳥、漁、マングローブといった身近な自然が繰り返し歌われる。プロジェクト名のNuevos Ríosはスペイン語で「新しい川々」を意味し、異なる土地からやってきた音楽家たちの合流にも重ねられている。
音楽の中心にあるのは、ゴンゴラの力強い歌声とコーラス、マリンバ・デ・チョンタ、ボンボ、クヌーノ、グアサなど、コロンビア太平洋岸の音楽を形づくってきた音とリズムだ。そこへReco Recoのギター、キーボード、ドラムス、そしてエレクトロニクスが加わる。
Reco Recoはバスティアン・アンドリュー(Bastien Andrieu)、フアン・コヴァルチェフスキ(Juan Kowalczewski)、ティム・アルコーン(Tim Alcorn)からなるトリオで、以前からクンビア、メレンゲ、フォホー、バイアォン、ダブなどラテンアメリカの音楽を自身の作品に取り込んできた。今作でも電子音を前面に押し出すのではなく、太平洋岸の打楽器やマリンバが持つ反復を生かしながら、低音やドラムス、ギター、キーボードによってその脈動を広げている。
冒頭の(1)「Sumba Ale」は両グループの音楽家が作曲に名を連ねる共同制作曲で、ティンビキの川、漁師、マングローブ、鳥や夕暮れなど、ニディア・ゴンゴラの故郷の日常が歌われる。そこは人々が昼も夜も歌い、笑って暮らす場所。川面に波が立つことで銀色に見える水平線、風に揺れるチョンタ2の葉が登場し、楽園のダンス・ミュージックのようなサウンドで沿岸地方の美しさが描かれている。
(6)「La Memoria de Justino」は、ティンビキ出身の同地を代表する歌手/作曲家のひとり、イネス・グランハ・エレーラ(Inés Granja Herrera)の曲のカヴァー。タイトルのJustinoとは、ティンビキで活躍した故マリンバ・デ・チョンタ奏者フスティノ・ガルシア(Justino García)のことを指す。そのマリンバの音色で“太平洋を震わせた”と賞賛される偉大な音楽家について歌い継がれてきたこの曲のカヴァーによって、このアルバムもまたティンビキの長い伝統に深く根ざしていることがうかがえる。
(7)「Si Yo Fuera」は今作の中でも趣を異にする楽曲だ。コロンビア太平洋岸で葬送や通夜の場に歌われてきたアラバオ(alabao)の伝統を背景に持つ曲で、ニディア・ゴンゴラの歌詞にバスティアン・アンドリューが音楽を付けた。ニディアのリード・ヴォーカルと女性たちのコーラスに、ドローン音や深い残響を施したパーカッションが重層的に重なり、この地域に受け継がれてきた儀礼的な音楽を現代的な音響の中へ置いている。
このアルバムでは、コロンビア側とフランス側を単純に「伝統」と「現代」に振り分けることは難しい。Canalón de Timbiquíの音楽そのものが強い反復と身体性を持ち、Reco Recoも以前からラテンアメリカやアフリカに連なるリズムを扱ってきた。両者がティンビキで一緒に暮らし、演奏し、互いのレパートリーを持ち寄ったことで、その境界がさらに曖昧になっている。
そして、その中心を流れているのはやはりティンビキの音楽だ。マリンバと太鼓、複数の声が作るポリリズムは最後まで失われず、そこからギターやシンセサイザー、ドラムスが枝分かれしていく。
異なる場所を流れてきた音楽が合流し、そこからまた別の方向へ流れ始める。「Nuevos Ríos = 新しい川々」という名前は、その過程そのものを的確に表している。
Nidia Góngora – vocals
María Celia Zúñiga – backing vocals, guasá
Yuli Magalí Castro – backing vocals, guasá
Andrés Felipe Lucumí – congas, cununo, percussion
Duvan Alirio Díaz del Castillo – bombo, cununo, percussion
Cristian Bonilla – marimba de chonta
Juan Kowalczewski – guitar, electronics/machines, percussion
Bastien Andrieu – keyboards, electronics/machines
Tim Alcorn – drums